FIREを目指す人の間で有名な「4%ルール」。
年間支出の25倍の資産を築き、毎年4%ずつ取り崩せば、資産が枯渇しないという理論だ。その根拠と日本での注意点を解説する。
4%ルールとは
4%ルールは、1998年にトリニティ大学の研究チームが発表した資産取り崩しの理論だ。
「年間支出の25倍の資産を築けば、毎年4%ずつ取り崩しても、30年以上は資産が枯渇しない」
- 必要資産 = 年間支出 × 25
- 毎年の取り崩し額 = 資産 × 4%
計算例
| 年間支出 | 必要資産(25倍) | 毎年の取り崩し |
|---|---|---|
| 300万円 | 7,500万円 | 300万円 |
| 400万円 | 1億円 | 400万円 |
| 500万円 | 1億2,500万円 | 500万円 |
トリニティ・スタディの根拠
研究の内容
トリニティ・スタディでは、株式と債券を組み合わせたポートフォリオで、様々な取り崩し率をシミュレーションした。
- 株式50%+債券50%のポートフォリオ
- 毎年4%取り崩し
- 30年間で資産が枯渇しない確率:約95%
なぜ4%なのか
4%という数字は、米国株式の長期リターン(約7%)からインフレ率(約3%)を引いた「実質リターン」に基づいている。
2つの取り崩し方法
定額取り崩し
毎年一定の「金額」を取り崩す方法。
| 年 | 資産 | 取り崩し額 |
|---|---|---|
| 1年目 | 1億円 | 400万円 |
| 2年目 | 9,600万円+運用益 | 400万円 |
| 3年目 | ... | 400万円 |
メリット:収入が安定
デメリット:暴落時に資産が大きく減る
定率取り崩し
毎年一定の「率」で取り崩す方法。
| 年 | 資産 | 取り崩し額(4%) |
|---|---|---|
| 1年目 | 1億円 | 400万円 |
| 2年目 | 9,000万円 | 360万円 |
| 3年目 | 1億2,000万円 | 480万円 |
メリット:資産が枯渇しにくい
デメリット:収入が変動する
どちらがおすすめですか?
一般的には「定額取り崩し」の方が生活設計しやすいです。ただし、暴落時に無理に取り崩さない柔軟性も必要です。「基本は定額、暴落時は支出を抑える」という方法も有効です。
日本での注意点
税金
投資信託や株式の売却益には20.315%の税金がかかる(2024年現在)。
4%ぴったりで取り崩すと、税引き後は約3.2%になる。
例:400万円取り崩し → 税引き後約320万円
税金を考慮して、やや多めに取り崩す必要がある。
インフレ
4%ルールの「4%」は、リターンからインフレ率を引いた数字。
日本のインフレ率が上昇すれば、取り崩し率を下げる必要が出てくる可能性がある。
全世界株での4%ルール
米国株と全世界株の違い
トリニティ・スタディは「米国株」を前提としている。
全世界株(VT等)でも4%ルールは使えますか?
全世界株は米国株より低リターンの傾向があるため、4%ではなく3%が安全とされています。具体的には、株式50%+債券50%で3%取り崩しなら、失敗確率が5%程度に抑えられます。
より保守的な「42の法則」
年間支出の約33倍(100÷3)の資産を築き、3%で取り崩す。
10年に一度の大きな下落があっても、利回り7%を目指せば資産を維持できる。
現金クッションの重要性
暴落時に資産を取り崩さないために、「現金クッション」を確保する戦略が有効。
- 生活費2〜3年分を現金で保有
- 暴落時は現金から生活費を捻出
- 資産が回復したら現金を補充
まとめ
4%ルールは、資産取り崩しの有力な考え方だ。
- 年間支出の25倍の資産で、毎年4%取り崩し
- トリニティ大学の研究に基づく
- 30年間で資産が枯渇しない確率は約95%
- 日本では税金20.315%を考慮が必要
- 全世界株なら3%取り崩しが安全
- 現金クッションで暴落に備える
4%ルールは「目安」であり、柔軟に対応することが大切だ。
よくある質問(記事のおさらい)
30年間で資産が枯渇しない確率は約95%とされますが、5%の確率で失敗する可能性はあります。暴落が続いた場合や、運用リターンが低い時期に当たると資産が減少します。
新NISAの非課税枠(1,800万円)の範囲内なら、売却益に税金がかからないため、4%ルールが有効に機能します。ただし、1,800万円を超える部分は課税口座となるため、税金の考慮が必要です。
まずは「最低限必要な生活費」と「ゆとりある生活費」の2パターンで計算しておくと良いでしょう。暴落時は最低限の生活費で過ごし、好調時はゆとりある支出をする柔軟性が大切です。
※本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断は自己責任でお願いいたします。