「買った時の価格が忘れられない」「以前の高値を基準に考えてしまう」
これはアンカリング効果という心理バイアスの影響です。投資判断を大きく狂わせる原因になります。
この記事では、アンカリング効果の仕組みと投資での対策を解説します。
アンカリング効果とは
アンカリング効果とは、最初に見た数字や情報に引きずられて判断が歪む心理現象です。
日常生活での例
- 「定価10,000円が今だけ5,000円」→ お得に感じる
- 「年収1,000万円」と聞くと、それを基準に考える
- 最初に提示された価格が「相場」に感じる
最初の情報が「錨(アンカー)」となり、その後の判断に影響を与えます。
投資にどう関係するんですか?
投資では「買値」や「過去の株価」がアンカーになりやすいです。これが原因で、合理的な判断ができなくなることがあります。
投資におけるアンカリング効果
パターン1:買値に囚われる
最も多いのが、自分の買値を基準にしてしまうパターンです。
例:
- 1,000円で買った株が800円に下落
- 「1,000円に戻るまで売らない」と決める
- しかし、株価は500円まで下落…
本来は「今後上がるか下がるか」で判断すべきですが、買値という「アンカー」に囚われて損切りできません。
パターン2:高値覚え
過去の高値を覚えていて、「あの時より安いから買いだ」と判断してしまうパターンです。
例:
- ある株が最高値3,000円をつけた
- 現在2,000円に下落
- 「3,000円から33%も安い、お買い得だ」と購入
- しかし、業績悪化で1,000円まで下落…
過去の高値は現在の適正価格と無関係です。
パターン3:安値覚え
逆に、過去の安値を覚えていて「あの時より高いから買えない」と判断するパターンです。
例:
- コロナショックで株価が大暴落した時に買えなかった
- 「あの時買っていれば…」という後悔
- 現在の価格が「高く」感じて買えない
- 結果、さらに上昇して機会損失
過去の価格は、将来の価格を予測する材料にはなりません。今の株価が「高い」か「安い」かは、過去ではなく将来の業績で決まります。
なぜアンカリングが起きるのか
認知的な省エネ
人間の脳は、複雑な判断を避けて「分かりやすい基準」を使いたがります。
買値や過去の株価は、明確な数字として記憶に残りやすく、判断の基準にしやすいのです。
損失回避バイアスとの組み合わせ
アンカリング効果は、損失回避バイアス(損失を過大に嫌う傾向)と組み合わさると、さらに強力になります。
- 買値より下がっている → 「損」と感じる
- 買値に戻るまで売れない → 損失が拡大
アンカリング効果への対策
対策1:買値を忘れる
極端ですが、買値を意識しないことが最も効果的です。
実践方法:
- 買値を記録しない
- 「今買うとしたら買うか?」で判断する
- 損益ではなく、将来性で評価する
でも、損益は気になります…
気持ちは分かります。ただ、買値は「埋没費用」です。今後の判断には関係ありません。「この株を今持っているとして、さらに買い増すか?売るか?」で考えましょう。
対策2:ルールを事前に決める
感情に左右されないよう、売買ルールを事前に決めておく方法です。
例:
- 「-20%で損切り」と決めておく
- 「目標達成したら売却」と決めておく
- リバランスのルールを決めておく
ルールがあれば、アンカリングに引きずられにくくなります。
対策3:インデックス投資に徹する
個別株ではなく、インデックス投資に徹することで、アンカリングの影響を減らせます。
- 個別銘柄の株価を気にしなくていい
- 長期で右肩上がりを信じて保有
- 積立投資なら買値が平均化される
対策4:複数の視点で評価する
1つの数字に囚われないよう、複数の指標で評価しましょう。
評価の視点:
- PER、PBRなどのバリュエーション
- 業績の成長率
- 同業他社との比較
- アナリストの目標株価
対策5:時間を置く
判断を急がず、一晩寝かせることで冷静になれます。
「今すぐ売らなきゃ」「今すぐ買わなきゃ」という焦りは、バイアスの影響を強めます。
具体的なシナリオ
シナリオ1:損切りできない
状況:
- 1,000円で買った株が700円に下落
- 「1,000円に戻るまで売らない」と決意
アンカリングの影響:
- 買値1,000円に囚われている
- 客観的に見ると、業績悪化で500円が適正かもしれない
正しい考え方:
- 「今700円で買うか?」と自問する
- 買わないなら、売却を検討すべき
- 買値は判断材料にならない
シナリオ2:利確できない
状況:
- 1,000円で買った株が1,500円に上昇
- 「もっと上がるかも」と売れない
アンカリングの影響:
- 買値からの上昇率に注目している
- 1,500円から見た将来性を評価できていない
正しい考え方:
- 「今1,500円で買うか?」と自問する
- 買わないなら、一部利確も選択肢
- 目標を事前に決めておく
まとめ
アンカリング効果について解説しました。
ポイント:
- 最初の数字に判断が引きずられる心理現象
- 投資では「買値」「過去の株価」がアンカーになりやすい
- 損切りできない、買えない原因になる
- 対策は「買値を忘れる」「ルールを決める」
- 「今買うか?」で判断する習慣をつける
投資で成功するには、心理バイアスを理解し、コントロールすることが大切です。
よくある質問
完全に避けるのは難しいですが、「自分はバイアスの影響を受けている」と認識するだけでも効果があります。意識することで、より客観的な判断ができるようになります。
一般的には「-10%〜-20%で損切り」などのルールを設定します。重要なのは、ルールを事前に決めて機械的に実行することです。
起きますが、影響は小さくなります。長期で右肩上がりを信じる投資なら、短期の価格変動は気にしなくて済みます。積立投資なら買値も平均化されます。
税金計算のために記録は必要ですが、投資判断の際には意識しない方が良いです。「今この価格で買うか?」という視点で判断しましょう。