2024年3月、日銀は17年ぶりにマイナス金利を解除しました。その後も追加利上げを実施し、日本の金利環境は大きく変わりつつあります。
この記事では、日銀の利上げが投資に与える影響と、個人投資家がとるべき対策を解説します。
日銀の金融政策の変化
マイナス金利解除の経緯
| 時期 | 政策金利 | 出来事 |
|---|---|---|
| 2016年1月〜 | -0.1% | マイナス金利導入 |
| 2024年3月 | 0〜0.1% | マイナス金利解除 |
| 2024年7月 | 0.25% | 追加利上げ |
| 2025年1月 | 0.5% | さらに利上げ |
なぜ利上げしたのか
- インフレ率が2%目標に近づいた
- 賃金上昇の兆し
- 円安是正の必要性
- 金融正常化への道筋
長らく「金利のない世界」だった日本が、ようやく正常な金利のある世界に戻りつつあります。これは投資環境に大きな影響を与えます。
株式への影響
一般的な理論
一般的に、金利上昇は株価にマイナスと言われます。理由は以下の通り:
- 企業の借入コストが増加
- 将来利益の割引率が上昇
- 債券の魅力が相対的に上昇
セクター別の影響
| セクター | 影響 | 理由 |
|---|---|---|
| 銀行 | プラス | 貸出金利と預金金利の差(利ザヤ)拡大 |
| 保険 | プラス | 運用利回り改善 |
| 不動産 | マイナス | 借入コスト増、利回り競争力低下 |
| グロース株 | マイナス | 将来利益の現在価値が低下 |
| 公益 | マイナス | 高配当の魅力が相対的に低下 |
銀行株は買いということですか?
銀行株は金利上昇の恩恵を受けやすいですが、すでに株価に織り込まれている可能性もあります。「金利が上がったから銀行株を買う」という単純な戦略は危険です。
為替への影響
円高方向への圧力
| 要因 | 円への影響 |
|---|---|
| 日本の利上げ | 円高要因 |
| 日米金利差の縮小 | 円高要因 |
| 米国の利下げ | 円高要因 |
為替と投資の関係
| 為替の動き | 米国株投資への影響 |
|---|---|
| 円安 | 円換算でプラス |
| 円高 | 円換算でマイナス |
円高が進むと、外貨建て資産の円換算価値が下がります。米国株が上昇しても、円高で相殺されることがあります。
債券への影響
金利と債券価格の関係
| 金利の動き | 既存債券の価格 |
|---|---|
| 金利上昇 | 下落 |
| 金利低下 | 上昇 |
すでに持っている債券は、金利が上がると価格が下がります。ただし、満期まで持てば額面で償還されるので、途中の価格変動は気にしなくて良い場合もあります。
債券投資の選択肢
| 商品 | 特徴 |
|---|---|
| 個人向け国債(変動10年) | 金利上昇に連動、元本保証 |
| 社債 | 利回り高め、信用リスクあり |
| 債券ETF | 分散投資可能、価格変動あり |
住宅ローンへの影響
変動金利 vs 固定金利
| 金利タイプ | 金利上昇時の影響 |
|---|---|
| 変動金利 | 返済額が増加 |
| 固定金利 | 影響なし |
変動金利で住宅ローンを借りている人は、金利上昇で毎月の返済額が増加する可能性があります。返済計画に余裕を持っておくことが大切です。
個人投資家がとるべき対策
対策1:長期投資のスタンスを維持
金利変動で一喜一憂せず、長期投資のスタンスを維持することが大切です。短期的には株価が下がっても、長期では経済成長に沿って回復する傾向があります。
対策2:過度な為替リスクを避ける
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| 円資産も保有 | オルカンだけでなく、日本株や円建て資産も |
| 為替ヘッジ商品 | 為替リスクを抑えた投資信託 |
| ドルコスト平均法 | 為替変動を平均化 |
対策3:ポートフォリオの見直し
| 見直し項目 | 内容 |
|---|---|
| 債券比率 | 金利上昇局面では短期債が有利 |
| セクター配分 | 金融セクターの比率を確認 |
| 円資産比率 | 為替リスクの許容度を確認 |
対策4:変動金利ローンの見直し
住宅ローンが変動金利の場合、今後の返済計画を見直しましょう。余裕資金があれば繰り上げ返済も選択肢です。
2025年の見通し
日銀の今後
| シナリオ | 内容 |
|---|---|
| メインシナリオ | 緩やかな利上げ継続(年1〜2回) |
| リスクシナリオ | 景気後退で利上げ停止・利下げ |
市場の織り込み
市場はある程度の利上げを織り込み済みです。「利上げがあるから株が下がる」とは限らず、予想通りの利上げなら株価への影響は限定的なこともあります。
よくある質問
必ずしも下がりません。利上げの背景が「景気が良いから」であれば、企業業績の改善で株価が上がることもあります。重要なのは利上げのペースと、市場の予想との乖離です。
すでに一部の銀行で預金金利が上昇しています。ただし、政策金利の上昇幅ほどは上がらない傾向があります。ネット銀行の方が金利上昇への反応が早い傾向があります。
はい、長期投資なら続けて問題ありません。短期的な金利変動や為替変動に惑わされず、積立投資を継続することが大切です。ただし、円高が進むと円換算のリターンは下がる可能性があることは理解しておきましょう。
まとめ
日銀の利上げと投資への影響をまとめます。
- 日銀は2024年にマイナス金利を解除、利上げ継続中
- 銀行・保険はプラス、不動産・グロース株はマイナスの傾向
- 円高方向への圧力で外貨建て資産に注意
- 債券は金利上昇で既存保有分の価格下落
- 長期投資のスタンスを維持することが大切
- 変動金利ローンは返済計画を見直し
金利のある世界への移行は、投資環境の大きな変化です。冷静に対応しましょう。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。