「株式投資はリスクが気になる」「元本保証で安全に運用したい」という方に注目されているのが債券投資です。特に2025年は、個人向け国債の金利が17年ぶりの高水準に達し、関心が高まっています。
この記事では、債券投資の基本と、個人向け国債の選び方を解説します。
債券とは
債券とは、国や企業がお金を借りるために発行する「借用証書」のようなものです。投資家は債券を購入することで、発行体にお金を貸し、その見返りとして利息(クーポン)を受け取ります。
株式と何が違うんですか?
株式は会社の「所有者」になる投資ですが、債券は会社や国の「債権者」になる投資です。株式は値上がり益を狙えますが、債券はあらかじめ決まった利息を受け取るのが基本です。
株式と債券の違い
| 項目 | 株式 | 債券 |
|---|---|---|
| 性質 | 出資(所有者になる) | 貸付(債権者になる) |
| 収益 | 配当金+値上がり益 | 利息(クーポン) |
| 元本 | 保証なし | 満期時に返還(国債は国が保証) |
| リスク | 高い | 低い(発行体による) |
| 値動き | 大きい | 小さい |
個人向け国債とは
個人向け国債は、日本政府が個人投資家向けに発行する債券です。国が元本と利子の支払いを保証しているため、最も安全性が高い債券といえます。
個人向け国債の3種類
| 種類 | 金利タイプ | 満期 | 2025年8月発行分の利率 |
|---|---|---|---|
| 変動10年 | 変動金利 | 10年 | 年0.96% |
| 固定5年 | 固定金利 | 5年 | 年0.96% |
| 固定3年 | 固定金利 | 3年 | 年0.76% |
2025年6月募集分では、変動10年と固定5年の利率がともに年1.0%に到達しました。これは過去と比較しても魅力的な水準です。
具体的な利息額の例
利率1%(年率)の5年物を100万円で購入した場合:
- 半年後の利息:約3,985円(税引き後)
- 5年間の利息合計:約39,850円(税引き後)
銀行の普通預金金利(0.1%程度)と比べると、個人向け国債の利回りは約10倍。安全性を重視しつつリターンも欲しい方には魅力的な選択肢です。
金利上昇局面での選び方
2025年現在、日本銀行は金融政策を正常化する方向で動いており、金利は上昇傾向にあります。このような局面では、どの種類を選ぶかが重要です。
3種類あると、どれを選べばいいか迷います。
金利上昇局面では変動10年がおすすめです。半年ごとに利率が見直されるため、金利が上がればより高い利息を受け取れます。
選び方の目安
| こんな人に | おすすめ種類 | 理由 |
|---|---|---|
| 金利上昇を期待 | 変動10年 | 半年ごとに利率が上がる可能性 |
| 今の金利を確定したい | 固定5年 | 5年間、現在の高金利を固定 |
| 短期で様子見したい | 固定3年 | 3年後に金利を見て判断 |
「金利上昇局面は約2年続くことが多い。今は変動金利商品を選ぶか、満期が短い商品を『つなぎ』として持つのが賢明」という意見もあります。
個人向け国債のメリット・デメリット
- 元本保証(国が保証)
- 1万円から購入可能
- 発行後1年経過すれば中途解約可能
- 中途解約しても元本割れしない
- 毎月発行されるので購入しやすい
- 発行後1年間は解約不可
- 中途解約時は直近2回分の利子相当額が差し引かれる
- インフレ率を下回ると実質的な価値が目減り
- 株式のような大きなリターンは期待できない
インフレに注意
利率1%なら十分高いように感じますが…
インフレ率が2%であれば、利率1%の国債では実質的にお金の価値が目減りします。「安全だから」と全資産を国債にするのではなく、株式との組み合わせでバランスを取ることが大切です。
社債という選択肢
個人向け国債よりも高い利回りを求めるなら、社債(企業が発行する債券)も選択肢になります。
2025年4月時点で、年利3%を超える社債も発行されています。ただし、社債は発行企業が破綻した場合に元本割れするリスクがあります。
| 項目 | 個人向け国債 | 社債 |
|---|---|---|
| 発行体 | 日本政府 | 企業 |
| 利回り | 約1% | 1〜4%程度 |
| 元本保証 | あり | なし(発行企業のリスク) |
| 最低購入額 | 1万円 | 10万円〜100万円程度 |
ポートフォリオにおける債券の役割
債券は、株式と組み合わせることでポートフォリオ全体のリスクを下げる効果があります。
年代別の債券比率の目安
| 年代 | 株式 | 債券 | 考え方 |
|---|---|---|---|
| 20〜30代 | 80〜100% | 0〜20% | 長期投資できるので株式中心 |
| 40代 | 60〜80% | 20〜40% | バランスを意識し始める |
| 50代 | 40〜60% | 40〜60% | リスクを抑える方向へ |
| 60代以降 | 20〜40% | 60〜80% | 元本保全を重視 |
年齢が上がるにつれて、株式から債券にシフトしていくのが一般的です。「100−年齢」を株式比率の目安にする考え方もあります。
個人向け国債の購入方法
購入窓口の比較
| 窓口 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| ネット証券(SBI、楽天など) | 手続き簡単、24時間申込可能 | 対面相談はできない |
| 銀行・ゆうちょ銀行 | 窓口で相談可能、安心感 | 営業時間に限られる |
| 大手証券会社 | 担当者がつく | 他の商品を勧められることも |
手数料はどこで買っても無料です。操作に慣れているなら、ネット証券が最も手軽でおすすめです。
募集スケジュールの確認方法
財務省のウェブサイトで、最新の募集条件(利率、募集期間など)を確認できます。
「財務省 個人向け国債」で検索すると、公式の商品説明ページにアクセスできます。利率は毎月変わるため、購入前に必ず確認しましょう。
SBI証券、楽天証券などで口座開設します(本人確認書類・マイナンバーが必要)。すでに口座があれば次へ。
毎月10日前後〜月末頃が募集期間です。証券会社のサイトで「個人向け国債」を検索すると、現在の募集情報が表示されます。
変動10年、固定5年、固定3年から選択し、購入金額(1万円以上1万円単位)を入力します。
発行日(翌月15日頃)までに、証券口座に購入代金を入金します。
発行日に保有欄に反映され、半年後から利息が受け取れます。
購入のベストタイミング
いつ買うのがいいんですか?
変動10年の場合、金利が上がりそうな時期に買うと、半年後に利率が上がる可能性があります。ただし、金利予測は難しいので、「買いたい時が買い時」と考えて大丈夫です。毎月募集されているので、焦る必要はありません。
まとめ
債券投資のポイントを整理します。
- 債券は「貸付」による投資で、株式よりリスクが低い
- 個人向け国債は国が元本保証する安全な債券
- 2025年は金利が上昇し、変動10年で年1%の水準に
- 金利上昇局面では変動金利型が有利
- 株式と組み合わせて分散投資に活用しよう
安全資産として、生活防衛資金の一部を個人向け国債で運用するのもよいでしょう。
よくある質問
2025年6月募集分で変動10年・固定5年ともに年1.0%、固定3年は年0.76%です。17年ぶりの高水準となっています。
発行後1年経過すれば、いつでも解約できます。ただし、直近2回分の利子相当額が差し引かれます。元本割れはしません。
変動10年がおすすめです。半年ごとに利率が見直されるため、金利が上がればより高い利息を受け取れます。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。