「会社員より税金が高い気がする…」
——経営者や個人事業主の方からよく聞く声です。確かに、会社員のように年末調整で完結せず、自分で確定申告をすると税金の重さを実感します。
しかし、事業者だからこそ使える節税制度があります。この記事では、経営者・個人事業主向けの節税投資戦略を解説します。
小規模企業共済
事業者の退職金制度
小規模企業共済は、中小企業の経営者や個人事業主のための退職金制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 掛金 | 月1,000円〜70,000円 |
| 年間上限 | 84万円 |
| 所得控除 | 全額 |
| 受取時期 | 廃業・退職・65歳以上 |
| 予定利率 | 1.0% |
iDeCoとどう違うんですか?
小規模企業共済は事業者専用の制度で、廃業時に退職金として受け取れます。iDeCoは60歳まで引き出せませんが、小規模企業共済は廃業すれば年齢に関係なく受け取れるのが特徴です。
節税効果のシミュレーション
年間84万円(月7万円)を掛けた場合の節税効果:
| 所得 | 税率 | 年間節税額 |
|---|---|---|
| 500万円 | 20% | 約17万円 |
| 700万円 | 23% | 約19万円 |
| 1,000万円 | 33% | 約28万円 |
所得税と住民税を合わせた概算です。所得が高いほど節税効果が大きくなります。
受取時の税金
受取方法によって税金の扱いが変わります。
一括受取:退職所得として有利な課税
分割受取:雑所得(公的年金等控除あり)
一括で受け取る場合、退職所得控除が適用されます。20年加入なら800万円、30年加入なら1,500万円まで非課税になります。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
個人事業主は掛金上限が大きい
iDeCoは会社員も使えますが、個人事業主は掛金上限が大きいのが特徴です。
| 加入者区分 | 現行 | 2027年1月〜 |
|---|---|---|
| 個人事業主 | 月68,000円 | 月75,000円 |
| 会社員(企業年金なし) | 月23,000円 | 月62,000円 |
年間90万円も控除できるんですね!
2027年からは月75,000円、年間90万円まで拠出できます。全額所得控除なので、所得税率20%なら年間約18万円の節税になります。
小規模企業共済との併用
小規模企業共済とiDeCoは併用可能です。
- 小規模企業共済:年84万円
- iDeCo:年90万円(2027年〜)
- 合計:年174万円の所得控除
両方を最大限活用すれば、大きな節税効果が得られます。
iDeCoの注意点
60歳まで引き出せない
iDeCoは原則60歳まで引き出せません。事業の運転資金が必要になっても使えないため、余裕資金で拠出することが大切です。
節税効果は魅力的ですが、事業の資金繰りを圧迫しては本末転倒です。まずは小規模企業共済を優先し、余裕があればiDeCoを追加するのがおすすめです。
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)
全額損金になる積立制度
経営セーフティ共済は、取引先の倒産に備える共済制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 掛金 | 月5,000円〜200,000円 |
| 年間上限 | 240万円 |
| 損金算入 | 全額 |
| 積立上限 | 800万円 |
| 解約返戻率 | 40ヶ月以上で100% |
倒産防止が目的なんですか?
本来の目的は取引先が倒産した時の借入制度ですが、節税目的で活用されることも多いです。40ヶ月以上加入すれば、解約時に掛金の100%が戻ってきます。
節税のタイミング調整
経営セーフティ共済は、前納(1年分まとめて支払い)ができます。
活用例:
- 利益が出た年度に前納で240万円を損金算入
- 利益が少ない年度に解約して収入計上
- 法人成りのタイミングで活用
法人での投資
法人口座で投資する
法人を設立している場合、法人口座で投資する選択肢もあります。
- 損益通算の幅が広い
- 経費を柔軟に計上できる
- 事業所得と通算可能
- NISAは使えない(個人のみ)
- 売却益に法人税がかかる
- 含み益にも税金がかかる場合あり
法人での投資が向いているケース
- 個人でNISAを使い切っている
- 事業で大きな損失が出た年度
- 法人に余剰資金がある
一般的には、まず個人でNISA・iDeCoを優先し、それでも余裕があれば法人口座での投資を検討するのがおすすめです。
節税投資の優先順位
おすすめの順番
経営者・個人事業主の節税投資は、以下の順番がおすすめです。
小規模企業共済(年84万円)
- 事業者専用の退職金制度
- 廃業時に受け取れる柔軟性
経営セーフティ共済(年240万円)
- 全額損金で節税効果大
- 40ヶ月以上で100%戻る
iDeCo(年90万円、2027年〜)
- 全額所得控除
- 60歳まで引き出せない点に注意
NISA(年360万円)
- 個人の非課税投資枠
- 節税効果はないが運用益非課税
法人口座での投資
- 余剰資金がある場合
全部やると大変そうですね。
無理に全部やる必要はありません。事業の資金繰りを優先しつつ、余裕がある範囲で活用しましょう。まずは小規模企業共済から始めるのがおすすめです。
まとめ
経営者・個人事業主の節税投資についてまとめます。
主な節税制度:
- 小規模企業共済:年84万円まで全額控除
- 経営セーフティ共済:年240万円まで全額損金
- iDeCo:年90万円まで全額控除(2027年〜)
優先順位:
- 小規模企業共済
- 経営セーフティ共済
- iDeCo
- NISA
- 法人口座での投資
事業の資金繰りとのバランスを取りながら、計画的に活用しましょう。
※本記事は情報提供を目的としており、税務アドバイスではありません。
個別の節税対策は税理士等の専門家にご相談ください。
よくある質問
まずは小規模企業共済がおすすめです。廃業時に受け取れる柔軟性があり、iDeCoの60歳縛りがありません。両方併用も可能です。
40ヶ月以上加入で解約返戻率100%になります。それ以前に解約すると元本割れするので注意してください。
損益通算の幅が広いことです。事業の損失と投資の利益を通算できます。ただし、NISAは使えず、売却益には法人税がかかります。
現行は月68,000円(年81.6万円)、2027年1月からは月75,000円(年90万円)に引き上げられます。