「暴落したらどうしよう」「含み損を見ると不安で眠れない」——投資を始めると、いつか必ず訪れる「暴落」への恐怖を感じる方は多いでしょう。
2024年8月の「令和のブラックマンデー」では、日経平均株価が1日で4,451円(12.4%)下落しました。このとき、パニック売りをしてしまった投資家も少なくありません。
この記事では、暴落時にパニック売りを防ぎ、冷静さを保つためのメンタル管理術を解説します。
なぜ暴落でパニック売りしてしまうのか
人間の脳は「損失」に敏感
投資心理学には「プロスペクト理論」という概念があります。これは、人間は利益を得る喜びよりも、損失を被る苦痛の方が大きく感じるという理論です。
確かに、利益が出ても「もっと上がるかも」と思うのに、損失が出ると「もっと下がるかも」と不安になります。
それがまさにプロスペクト理論です。同じ金額でも、損失の方が約2倍のインパクトを感じると言われています。だから暴落時に冷静でいるのは難しいんです。
パニック売りの3大原因
| 原因 | 詳細 |
|---|---|
| 投資しすぎ | 生活防衛資金を確保せず、余剰資金以上を投資している |
| 売却ルールがない | 何を基準に売るか事前に決めていない |
| 値動きを見すぎ | 毎日・毎時間チェックして一喜一憂する |
暴落時に「やってはいけない」5つのこと
1. パニック売り
最も避けるべきは「暴落中に売る」ことです。
暴落時に売るということは、「安値で売る」ということ。これは投資で損をする最も確実な方法です。
| 行動 | 結果 |
|---|---|
| 暴落時に売る | 安値で売却 → 損失確定 |
| 暴落時に買い増し | 安値で購入 → 平均取得単価が下がる |
| 何もしない | 回復を待つ → 多くの場合プラスに戻る |
2. 毎日の値動きチェック
億万投資家の多くは、暴落時に「持ち株の値動きをなるべく見ない」ことを実践しています。
頻繁にチェックすると、下落のたびに不安が増幅され、パニック売りの原因になります。
暴落時は証券会社のアプリを開かない。通知をオフにする。「見ない」ことも立派な投資戦略です。
3. SNSで他人と比較する
暴落時のSNSには、「〇〇万円損した」「もう終わりだ」というネガティブな投稿が溢れます。
これを見ると不安が増幅され、冷静な判断ができなくなります。
でも、情報収集は大事じゃないですか?
暴落時のSNSは「情報」ではなく「ノイズ」です。感情的な投稿に影響されるだけで、判断の役には立ちません。
4. ナンピン買いの連発
「安くなったから買い増し」は一見良い戦略に見えますが、計画性のないナンピン買いは危険です。
- 下落がどこまで続くか分からない
- 資金が尽きると何もできなくなる
- 精神的に追い詰められる
ナンピン買いをするなら、事前にルールを決めておきましょう(例:10%下落ごとに一定額を買い増し)。
5. 積立投資をやめる
暴落時に積立投資を停止するのは、最悪のタイミングで買うのをやめるということです。
ドルコスト平均法では、価格が下がったときは「安く買えるチャンス」。暴落時こそ積立を続けることで、平均取得単価を下げられます。
暴落時に「やるべき」5つのこと
1. 何もしない
暴落時の最善の行動は「何もしない」ことです。
積立設定をそのままにして、相場を見ず、淡々と過ごす。これが長期投資家の正しい姿勢です。
2. 投資の目的を思い出す
「なぜ投資を始めたのか」を思い出しましょう。
- 老後資金のため?
- 子どもの教育費のため?
- 10年後、20年後の資産形成のため?
長期投資が目的なら、1日や1週間の値動きは誤差です。10年後の自分に聞いてみてください。「今日売るべきか?」と。
3. 過去の暴落と回復を確認する
歴史を振り返ると、株式市場は暴落しても必ず回復してきました。
| 暴落 | 下落率 | 回復までの期間 |
|---|---|---|
| ブラックマンデー(1987年) | -22%(1日) | 約2年 |
| ITバブル崩壊(2000年) | -49% | 約7年 |
| リーマンショック(2008年) | -56% | 約4年 |
| コロナショック(2020年) | -34% | 約5ヶ月 |
| 令和のブラックマンデー(2024年) | -12% | 約2ヶ月 |
どんな暴落も、いつかは回復しています。「売らなければ負けない」というのは、長期投資の鉄則です。
4. 生活防衛資金を確認する
暴落時に冷静でいられるかどうかは、生活防衛資金が確保できているかにかかっています。
- 生活費の3〜6ヶ月分が普通預金にある → 安心して待てる
- 生活費ギリギリで投資している → 不安でパニックになりやすい
5. 投資仲間と話す(ただしネガティブな人は避ける)
冷静な投資仲間と話すことで、「自分だけじゃない」「長期で見れば大丈夫」という安心感を得られます。
ただし、ネガティブな人や煽るような投稿には近づかないこと。
暴落に備える「事前準備」
1. リスク許容度に合った投資額にする
「〇〇%下落しても平常心でいられる」金額だけを投資しましょう。
| 投資額 | 30%下落時の含み損 |
|---|---|
| 100万円 | -30万円 |
| 500万円 | -150万円 |
| 1,000万円 | -300万円 |
自分のリスク許容度って、どうやって分かるんですか?
「この含み損を見ても売らずにいられるか」をシミュレーションしてみてください。300万円の含み損に耐えられないなら、投資額は1,000万円以下に抑えるべきです。
2. 売却ルールを事前に決める
「暴落したら売らない」というルールを事前に決めておくことが重要です。
- インデックスファンドは市場全体の暴落では売らない
- 個別株は「成長ストーリーが崩れたとき」だけ売る
- 生活に支障が出る場合を除き、含み損で売らない
3. 自動積立を設定する
自動積立なら、暴落時も感情に左右されず、淡々と買い続けられます。
「売るか売らないか」を毎回判断しなくて済むのが、積立投資の大きなメリットです。
4. 投資の勉強を続ける
インデックス投資や複利の仕組みを理解していれば、暴落時も「長期で見れば大丈夫」と思えます。
知識は最大のメンタル対策です。
「損切り」と「パニック売り」は違う
損切りは合理的な判断
すべての売却が悪いわけではありません。損切りは、冷静な判断に基づく合理的な行動です。
| 行動 | 特徴 |
|---|---|
| パニック売り | 恐怖・不安で感情的に売却 |
| 損切り | 事前のルールに基づき冷静に売却 |
損切りすべきケース
- 個別株:業績悪化、不祥事、成長ストーリーの崩壊
- 投資信託:運用方針の変更、信託報酬の大幅引き上げ
損切りすべきでないケース
- 市場全体の暴落:インデックスファンドは市場回復を待てばよい
- 一時的なニュース:長期的な価値に影響しない下落
まとめ
暴落時のメンタル管理術をまとめます。
やってはいけないこと
- パニック売り(安値で売却)
- 毎日の値動きチェック
- SNSで他人と比較
- 計画性のないナンピン買い
- 積立投資をやめる
やるべきこと
- 何もしない(淡々と積立を続ける)
- 投資の目的を思い出す
- 過去の暴落と回復を確認する
- 生活防衛資金を確認する
暴落時の最善の行動は「何もしない」こと。積立設定をそのままに、相場を見ず、淡々と過ごす。これが長期投資家の正しい姿勢です。
「暴落は安く買えるチャンス」——この言葉を心に刻んでおきましょう。
よくある質問
余裕資金があり、精神的に耐えられるなら買い増しは有効です。ただし、計画性のないナンピン買いは危険。「10%下落ごとに〇万円買う」など、事前にルールを決めておきましょう。
10%以上の調整は年に1〜2回、20%以上の暴落は数年に1回程度起きています。長期投資を続ける以上、暴落は「いつか必ず来るもの」として心構えをしておくことが大切です。
長期投資家にとっては「見ない」のが正解です。毎日チェックすると不安が増幅され、パニック売りの原因になります。証券会社のアプリ通知をオフにするのもおすすめです。
まずは冷静になりましょう。売却で得た資金を使って、再度積立投資を始めることができます。「失敗した」と落ち込むより、「次からは売らない」という教訓にすることが大切です。
株式100%よりも、債券や現金を含めたポートフォリオの方が暴落時の下落幅を抑えられます。50代以上は株式比率を下げ、リスクを抑えたポートフォリオを検討しましょう。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。