「防衛関連株って最近よく聞くけど、今から買っても遅くない?」「どの銘柄を選べばいい?」──そんな疑問を持つ投資家が増えています。
結論から言えば、防衛関連株は2026年以降も「国策銘柄」として中長期的な成長が見込まれるセクターです。防衛予算は5年間で43兆円規模に拡大し、高市政権の下でさらに前倒しの動きが出ています。
この記事では、防衛予算倍増の背景から、注目の主要7銘柄、そして具体的な投資戦略までを解説します。
防衛予算「5年で倍増」──何が起きているのか
防衛費が倍増って、具体的にどのくらい増えるんですか?
数字で見ると非常にインパクトがあります。2022年度の防衛予算は約5.4兆円でしたが、2027年度には約11兆円に達する計画です。
防衛予算の推移
| 年度 | 防衛予算(概算) | GDP比(目安) |
|---|---|---|
| 2022年度 | 約5.4兆円 | 約1.0% |
| 2023年度 | 約6.8兆円 | 約1.2% |
| 2024年度 | 約7.9兆円 | 約1.4% |
| 2025年度 | 約8.7兆円 | 約1.6% |
| 2026年度(見込み) | 約9.8兆円 | 約1.8% |
| 2027年度(目標) | 約11兆円 | 約2.0% |
2022年12月に閣議決定された「防衛力整備計画」では、2023年度から2027年度の5年間で合計約43兆円を投じる方針が示されました。これは前の5年間(約27兆円)と比較して、約1.6倍の大幅増額です。
高市政権による「前倒し」の動き
さらに注目すべきは、高市早苗首相が当初計画を2年前倒しし、2026年3月期(2025年度)にGDP比2%水準への到達を目指している点です。
この前倒しにより、防衛装備品メーカーへの発注が当初の計画以上に加速する可能性があります。
NATO(北大西洋条約機構)加盟国は、国防費をGDP比2%以上にすることを目標としています。日本はNATO加盟国ではありませんが、安全保障環境の変化を受けて同水準を目指す方針に転換しました。
「防災庁」設置──もうひとつの追い風
2026年11月1日には「防災庁」の設置が予定されています。これにより、防災・減災関連の予算も拡大が見込まれ、防衛・防災の両面から関連企業への恩恵が期待されます。
「国策に売りなし」──防衛株が注目される3つの理由
株式市場には「国策に売りなし」という格言があります。政府が重点的に予算を投じる分野の関連企業は、業績が安定的に成長しやすいという経験則です。
防衛関連株が「国策銘柄」として注目される理由は、大きく3つあります。
理由1:予算の「確実性」が高い
一般的な民間ビジネスと異なり、防衛装備品は国が唯一の顧客です。防衛力整備計画で43兆円の枠組みが決まっている以上、関連企業の受注は高い確度で見込めます。
理由2:参入障壁が極めて高い
防衛産業は技術的にも法的にも参入障壁が高く、既存の主要プレイヤーが恩恵を受けやすい構造です。新規参入が難しいため、受注が特定企業に集中します。
理由3:中長期の構造的テーマ
地政学リスクの高まりは一時的なものではなく、構造的な変化です。ダイヤモンド・ザイの調査でも、防衛・建設セクターが2026年の有望セクターとして挙げられています。
なるほど。でも防衛株って、すでにかなり上がっていませんか?
確かに2023年以降、三菱重工などは大きく上昇しました。ただ、予算の拡大ペースを考えると、業績の伸びが株価上昇に追いついていない銘柄もあります。特に中小型株には、まだ割安な銘柄が残っているといえるでしょう。
防衛関連の主要3銘柄──「重工御三家」を押さえる
防衛関連株の中核を担うのが、通称「重工御三家」と呼ばれる3社です。
三菱重工業(7011)──防衛産業の最大手
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 証券コード | 7011 |
| 主な防衛製品 | 戦闘機(F-35ライセンス生産)、護衛艦、ミサイル、戦車 |
| 防衛事業の位置づけ | 日本最大の防衛コントラクター |
| 注目ポイント | 次期戦闘機(GCAP)の日本側主契約者 |
三菱重工は日本の防衛産業において最大のシェアを持つ企業です。戦闘機から艦艇、ミサイルまで幅広い装備品を手がけ、次期戦闘機(GCAP:日英伊共同開発)の日本側主契約者にも選定されています。
防衛事業以外にも、エネルギー(ガスタービン)や宇宙(H3ロケット)など成長分野を抱えている点も魅力です。
川崎重工業(7012)──潜水艦と航空機のスペシャリスト
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 証券コード | 7012 |
| 主な防衛製品 | 潜水艦、輸送機(C-2)、哨戒ヘリ |
| 2024年度防衛装備品契約 | 6,383億円 |
| 注目ポイント | 潜水艦建造で国内2社のうちの1社 |
川崎重工は潜水艦の建造において、三菱重工と並ぶ国内唯一の2社体制を構成しています。2024年度の防衛装備品契約額は6,383億円に達し、防衛事業の存在感が急速に高まっています。
IHI(7013)──ジェットエンジンの要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 証券コード | 7013 |
| 主な防衛製品 | 航空エンジン、艦艇用ガスタービン |
| 注目ポイント | 次期戦闘機エンジンの開発に参画 |
IHIは航空エンジンの分野で日本を代表する企業です。自衛隊の戦闘機や哨戒機のエンジン整備を担うほか、次期戦闘機(GCAP)のエンジン開発にも参画しています。民間航空エンジン事業との相乗効果も期待されます。
中小型の注目4銘柄──まだ「出遅れ」の可能性あり
大手3社は有名ですが、もう少しニッチな銘柄はありますか?
防衛産業はすそ野が広く、専門技術を持つ中小型株にも注目です。大手ほど株価が上がりきっておらず、出遅れ銘柄として狙い目のものがあります。
東京計器(7721)──慣性航法装置のトップメーカー
慣性航法装置(INS)やジャイロコンパスなど、艦艇・航空機に搭載される精密機器を製造しています。GPS妨害に強い慣性航法技術は、現代の防衛において重要性が増しており、需要拡大が見込まれます。
新明和工業(7224)──世界唯一の救難飛行艇メーカー
海上自衛隊が運用する救難飛行艇「US-2」を製造する、世界でも唯一の水陸両用飛行艇メーカーです。US-2は離島防衛や海難救助に不可欠な装備であり、後継機の開発も議論されています。防災庁設置に伴う救難体制の強化も追い風です。
日本アビオニクス(6946)──赤外線技術のスペシャリスト
赤外線カメラや暗視装置など、防衛用のセンサー技術に強みを持っています。現代戦においてISR(情報・監視・偵察)能力の強化は最重要課題のひとつであり、同社の技術への需要が高まっています。
沖電気工業(6703)──防衛通信の要
防衛省向けの通信機器や暗号化装置を手がけています。サイバーセキュリティや電子戦能力の強化が防衛力整備計画の重点分野に掲げられており、同社の通信・暗号技術への期待が高まっています。
| 銘柄 | コード | 主な防衛分野 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 東京計器 | 7721 | 慣性航法装置 | GPS代替技術 |
| 新明和工業 | 7224 | 救難飛行艇 | 世界唯一の技術 |
| 日本アビオニクス | 6946 | 赤外線センサー | ISR能力向上 |
| 沖電気工業 | 6703 | 通信・暗号 | サイバー防衛 |
高市政権の「戦略17分野」と設備投資減税
防衛関連株を後押しするもうひとつの要因が、高市首相が掲げる「戦略17分野」です。
半導体、AI、宇宙、防衛など17の重点分野に対して、年間5,000億円規模の設備投資減税が実施される見通しです。防衛産業の設備投資にも税制優遇が適用されれば、各社の生産能力拡大が加速する可能性があります。
設備投資減税は、企業が新たな生産設備を導入する際の税負担を軽減する制度です。防衛産業では老朽化した生産ラインの更新が課題となっており、この減税が設備刷新の呼び水になると期待されています。
防衛関連株の投資戦略──リスクと向き合い方
防衛関連株って、テーマ株としてリスクも高いんじゃないですか?
おっしゃる通りで、防衛関連株には特有のリスクもあります。メリットとデメリットを整理しておきましょう。
- 国の予算に裏付けられた確実な需要
- 参入障壁が高く、競争が限定的
- 5年間の中期計画で見通しが立てやすい
- 防災庁設置や設備投資減税など追加の追い風
- 民間事業との複合経営でリスク分散
- 政策変更リスク(政権交代・予算見直し)
- 大型株はすでに株価が大きく上昇済み
- 防衛専業比率が低い企業も多く、業績への寄与が限定的な場合がある
- ESG投資の観点から機関投資家が敬遠する可能性
- 地政学リスクの緩和で逆風になることも
投資アプローチ:3つの戦略
戦略1:大型株でコア投資
三菱重工・川崎重工・IHIの「重工御三家」は、防衛事業以外にも複数の事業を持っています。防衛テーマが一時的に後退しても、他事業がクッションになるため、中長期のコア銘柄として保有しやすいといえます。
戦略2:中小型株でアルファを狙う
東京計器や新明和工業などの中小型株は、大型株に比べて株価の上昇余地が大きい可能性があります。ただし流動性が低い銘柄もあるため、一度に大きなポジションを取らず、少額から分散投資するのが賢明です。
戦略3:分割買いでリスクを抑える
防衛関連株は地政学イベントや政策ニュースで大きく動くことがあります。一括購入ではなく、3〜4回に分けて買い付けることで、高値掴みのリスクを軽減できます。
防衛関連株はニュースやイベントで短期的に急騰・急落することがあります。テーマに飛びついて高値で買い、下落に耐えられなくなるパターンは避けたいところです。あくまで中長期の視点で、予算の執行状況や企業の受注動向を見ながら判断しましょう。
まとめ
2026年の防衛関連株について、重要なポイントを整理します。
- 防衛予算は2022年度の5.4兆円から2027年度の11兆円へ倍増(5年間43兆円)
- 高市政権がGDP比2%を2年前倒し、予算執行が加速
- 2026年11月の「防災庁」設置で防災関連にも波及
- 重工御三家(三菱重工・川崎重工・IHI)が中核銘柄
- 中小型株(東京計器・新明和工業・日本アビオニクス・沖電気工業)に出遅れ妙味
- 「戦略17分野」の設備投資減税(年間5,000億円規模)が追い風
- テーマ株特有のリスクを理解し、分散・分割投資が基本
防衛関連株は「国策銘柄」としての位置づけが明確であり、中長期的な投資テーマとして注目に値するセクターです。ただし、個別銘柄の選定においては、防衛事業の比率や財務状況、バリュエーションを丁寧に確認したうえで判断することが重要です。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。
よくある質問
防衛予算の拡大は2027年度まで続く計画であり、高市政権の前倒し方針もあるため、中長期的にはまだ成長余地があるといえます。ただし、大型株はすでに大きく上昇しているため、中小型株や分割買いを検討するのがよいでしょう。
2022年度の約5.4兆円から、2027年度には約11兆円へと倍増する計画です。5年間の合計では約43兆円が投じられる見通しで、前の5年間(約27兆円)と比較して約1.6倍の規模になります。
三菱重工業(7011)は防衛最大手であり、エネルギーや宇宙事業も持つ複合企業のため、防衛テーマだけに依存しない安定感があります。流動性も高く、比較的投資しやすい銘柄といえるでしょう。
主なリスクは、政権交代による予算見直し、地政学リスクの緩和による株価下落、ESG投資の観点からの機関投資家の売り圧力などです。テーマ株としてニュースで大きく動くため、短期的な値動きに振り回されないことが重要です。
防災庁の設置により防災・減災関連の予算が拡大する見通しです。新明和工業の救難飛行艇など、防衛と防災の両面で活躍する企業にはプラスの影響が期待されます。