「働かなくても配当金だけで生活したい」——そんな夢を持っている方も多いのではないでしょうか。
配当金生活を実現するには、想像以上の資産が必要です。この記事では、配当金生活に必要な金額をシミュレーションし、現実的な達成プランと注意点を解説します。
配当金生活とは
配当金生活とは、株式や投資信託から得られる配当金・分配金だけで生活費をまかなう生活スタイルです。「FIRE(経済的自立・早期退職)」の一形態とも言えます。
配当金で生活できたら、もう働かなくていいんですよね?
理論上はそうですが、減配リスクやインフレを考えると、完全に仕事を辞めるのはハードルが高いです。まずは「配当金で生活費の一部をカバーする」ところから始めるのが現実的です。
配当金生活に必要な資金シミュレーション
配当金生活に必要な資金は、希望する月額収入と配当利回りで決まります。
計算式
必要資金 = 年間希望配当額 ÷ 配当利回り(税引前)
ただし、配当金には約20%の税金がかかるため、税引後で計算する必要があります。
配当利回り別シミュレーション(税引後)
| 月額配当(税引後) | 年間配当 | 利回り3%の場合 | 利回り4%の場合 | 利回り5%の場合 |
|---|---|---|---|---|
| 5万円 | 60万円 | 約2,500万円 | 約1,900万円 | 約1,500万円 |
| 10万円 | 120万円 | 約5,000万円 | 約3,800万円 | 約3,000万円 |
| 15万円 | 180万円 | 約7,500万円 | 約5,600万円 | 約4,500万円 |
| 20万円 | 240万円 | 約1億円 | 約7,500万円 | 約6,000万円 |
| 30万円 | 360万円 | 約1.5億円 | 約1.1億円 | 約9,000万円 |
税引後の配当金を得るために必要な税引前配当 = 税引後配当 ÷ 0.79685(税率20.315%)
必要資金 = 税引前配当 ÷ 配当利回り
月20万円の配当金を得るには
月20万円(税引後)の配当金を得るには、配当利回り4%の場合で約7,500万円が必要です。
7,500万円…。普通のサラリーマンには無理じゃないですか?
正直、若いうちから完全な配当金生活を目指すのは現実的ではありません。ただし、「配当金で月5万円の副収入」なら約1,900万円で達成できます。まずはここを目指しましょう。
配当金生活のメリット
1. 不労所得が得られる
株を保有しているだけで、定期的に配当金が振り込まれます。働かなくてもお金が入ってくる仕組みを作れます。
2. 心の安定につながる
「配当金があるから、最悪仕事を辞めても大丈夫」という精神的な余裕が生まれます。仕事のストレスが軽減される効果もあります。
3. インフレに対応しやすい
企業の利益が増えれば配当も増える(増配)可能性があり、預金よりもインフレに強いと言われています。
配当金生活のデメリット・リスク
1. 減配・無配リスク
企業の業績が悪化すると、配当が減る(減配)または配当がなくなる(無配)ことがあります。
2020年のコロナショックでは、多くの企業が減配・無配に転じました。例えば、ANAホールディングスは2020年度の配当を無配としました。
2. 株価下落リスク
配当利回りが高くても、株価が大きく下落すると資産全体では損失になります。高配当銘柄は成熟企業が多く、成長性に乏しい場合もあります。
3. 税金がかかる
配当金には約20%(20.315%)の税金がかかります。新NISAを使えば非課税にできますが、年間投資枠には上限があります。
4. インフレで実質価値が目減り
配当金額が同じでも、物価が上がれば実質的な購買力は下がります。増配がなければ、時間とともに生活は苦しくなります。
配当金生活を目指す現実的なステップ
完全な配当金生活は難しくても、段階的に配当収入を増やすことは可能です。
ステップ1:月1万円の配当金(必要資金:約380万円)
まずは「配当金で外食代をカバーする」レベルを目指しましょう。高配当株投資を始めて、配当金の入金を実感することが大切です。
ステップ2:月5万円の配当金(必要資金:約1,900万円)
「配当金で通信費・光熱費をカバーする」レベルです。これだけでも家計はかなり楽になります。
ステップ3:月10万円の配当金(必要資金:約3,800万円)
「配当金で家賃の一部をカバーする」レベルです。セミリタイアの現実味が出てきます。
ステップ4:月20万円の配当金(必要資金:約7,500万円)
単身者なら配当金だけで最低限の生活が可能なレベルです。ただし、減配リスクに備えて余裕を持った資産が必要です。
いきなり月20万円を目指すのではなく、まず月1万円、次に月5万円と段階的に目標を設定しましょう。達成感を味わいながら継続することが大切です。
配当金生活に向いている投資先
日本の高配当株
| 銘柄例 | 配当利回り(目安) | 特徴 |
|---|---|---|
| 三菱UFJフィナンシャル・グループ | 約3〜4% | メガバンク、安定配当 |
| 日本たばこ産業(JT) | 約4〜5% | 高配当の代表格 |
| 武田薬品工業 | 約4〜5% | グローバル製薬会社 |
| 三井住友フィナンシャルグループ | 約3〜4% | メガバンク |
| INPEX | 約3〜4% | 資源・エネルギー |
高配当ETF
個別株のリスクを避けたいなら、複数の高配当株に分散投資できるETFがおすすめです。
| ETF名 | 投資対象 | 分配利回り(目安) |
|---|---|---|
| 日経高配当株50ETF(1489) | 日本の高配当株50銘柄 | 約3〜4% |
| NEXT FUNDS 日経平均高配当株50(1494) | 日本の高配当株50銘柄 | 約3〜4% |
| VYM(米国ETF) | 米国の高配当株 | 約3% |
| HDV(米国ETF) | 米国の高配当株 | 約3〜4% |
| SPYD(米国ETF) | S&P500の高配当株80銘柄 | 約4〜5% |
J-REIT(不動産投資信託)
不動産からの賃料収入を分配するJ-REITも、配当金生活の選択肢になります。分配利回りは4〜6%程度と高めです。
配当金生活の注意点
1. 高利回りに飛びつかない
利回りが高すぎる銘柄は、株価下落や業績悪化のサインかもしれません。「利回り10%」などは特に注意が必要です。
2. 分散投資を心がける
1つの銘柄に集中すると、減配時のダメージが大きくなります。業種・地域を分散させましょう。
3. 配当だけでなくトータルリターンで考える
配当金が多くても、株価が下がればトータルではマイナスになります。配当利回りだけでなく、企業の成長性も見ましょう。
4. 新NISAを最大限活用する
配当金に約20%かかる税金は、新NISAを使えば非課税にできます。成長投資枠(年間240万円)を高配当株に使うのも有効です。
配当金生活を達成した人の例
ある投資家は、総資産1億円でFIREを達成。高配当株を中心に約250銘柄に分散投資し、2023年の配当金総額は531万円(税引前)でした。月換算で約44万円の不労所得です。
ただし、1億円の資産を築くまでに20年以上かかったケースがほとんど。一朝一夕には達成できないことを理解しておきましょう。
まとめ
配当金生活の現実についてまとめます。
- 月20万円の配当金には約7,500万円(利回り4%の場合)が必要
- 減配・無配リスクがあるため、完全な配当金生活はハードルが高い
- まずは月1万円→5万円→10万円と段階的に目指す
- 分散投資と新NISAの活用が重要
- 高配当ETFやJ-REITも選択肢に
- 「配当金で生活費の一部をカバー」が現実的な第一歩
夢の配当金生活に向けて、まずは小さな一歩から始めてみましょう。
よくある質問
月20万円(税引後)の配当金を得るには、配当利回り4%の場合で約7,500万円が必要です。月10万円なら約3,800万円、月5万円なら約1,900万円が目安です。
最大のリスクは「減配」です。企業の業績が悪化すると配当が減り、生活費が足りなくなる可能性があります。また、株価下落で資産が目減りするリスクもあります。分散投資と余裕資金の確保が重要です。
目的によります。定期的な現金収入が欲しいなら高配当株、長期的な資産最大化を目指すならインデックス投資が向いています。両方を組み合わせる「コア・サテライト戦略」もおすすめです。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。