「株式投資で配当金をもらっているけど、確定申告って必要?」という疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
実は、確定申告をすることで税金が戻ってくるケースがあります。この記事では、投資に関係する確定申告の制度「配当控除」と「外国税額控除」について解説します。
投資と確定申告の関係
まず、投資に関係する確定申告のポイントを整理しましょう。
確定申告が不要なケース
以下の場合、原則として確定申告は不要です。
- 特定口座(源泉徴収あり)で株式売買・配当を受け取っている
- 新NISA口座のみで投資している
証券会社が自動的に税金を計算・納付してくれるため、確定申告は義務ではありません。
確定申告で得するケース
しかし、以下の場合は確定申告することで税金が戻る可能性があります。
- 国内株式の配当金がある → 配当控除
- 米国株などの配当金がある → 外国税額控除
- 株式の売却損がある → 損益通算・繰越控除
面倒そうですが、やる価値はありますか?
配当金の額によります。年間数万円程度なら手間と還付額を比較して判断を。年間数十万円以上の配当があるなら、確定申告のメリットは大きいでしょう。
配当控除とは
配当控除とは、国内株式の配当金を総合課税で確定申告した場合に受けられる税額控除です。
配当控除の仕組み
配当金は、会社が法人税を支払った後の利益から支払われます。投資家が配当金を受け取る際にも所得税がかかるため、「二重課税」の状態になっています。配当控除は、この二重課税を調整するための制度です。
控除率
| 課税総所得金額 | 配当控除(所得税) | 配当控除(住民税) |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | 2.8% |
| 1,000万円超 | 5% | 1.4% |
総合課税と申告分離課税の比較
配当金の申告方法には「総合課税」と「申告分離課税」の2種類があります。
| 項目 | 総合課税 | 申告分離課税 |
|---|---|---|
| 税率 | 所得に応じて5〜45%(累進課税) | 一律20.315% |
| 配当控除 | 適用あり | 適用なし |
| 株式譲渡損との損益通算 | 不可 | 可能 |
どちらが有利?
課税所得によって有利・不利が変わります。
| 課税所得 | 所得税率 | 配当控除後の実質税率 | 有利な申告方法 |
|---|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | −5%(還付) | 総合課税 |
| 330万円以下 | 10% | 0% | 総合課税 |
| 695万円以下 | 20% | 10% | 総合課税 |
| 900万円以下 | 23% | 13% | 総合課税 |
| 900万円超 | 33%〜 | 23%〜 | 申告分離課税 |
課税所得が695万円以下なら、総合課税で配当控除を受けた方が有利になりやすいです。ただし、住民税や社会保険料への影響も考慮が必要です。
配当控除の還付シミュレーション
国内株の配当金を総合課税で申告した場合の還付額をシミュレーションしてみましょう。
前提条件:
- 課税所得400万円(配当以外)の会社員
- 国内株の配当金50万円(源泉徴収済み:約10万円)
| 項目 | 申告不要(源泉徴収のみ) | 総合課税で申告 |
|---|---|---|
| 配当にかかる税金 | 約10万円(20.315%) | 約7万円(所得税率20%−配当控除10%=10%) |
| 住民税 | 源泉徴収済み | 約2.2万円(10%−2.8%=7.2%) |
| 合計税額 | 約10万円 | 約9.2万円 |
| 還付額 | − | 約0.8万円 |
配当金50万円で約8,000円の還付。「少ない」と思うかもしれませんが、課税所得が330万円以下なら還付額はもっと大きくなります。逆に課税所得900万円超えると損するので注意。
課税所得別の有利・不利早見表
| 課税所得 | 配当控除適用後の実質税率 | 源泉徴収(20.315%)との比較 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 約2.2%(住民税のみ) | 18%お得 |
| 330万円以下 | 約7.2% | 13%お得 |
| 695万円以下 | 約17.2% | 3%お得 |
| 900万円以下 | 約20.2% | ほぼ同じ |
| 900万円超 | 約30%以上 | 損する |
外国税額控除とは
外国税額控除とは、海外の株式(米国株など)の配当金に課された外国の税金を、日本の税金から差し引ける制度です。
米国株の配当金には、米国で10%+日本で20.315%の二重課税がかかります。外国税額控除を使えば、米国で支払った税金の一部を取り戻せます。
外国税額控除の詳しい仕組み、ADRの税金、還付シミュレーションについては「米国株の配当金にかかる税金と二重課税を解消する方法」で詳しく解説しています。
確定申告の注意点
確定申告で節税できる一方、注意すべき点もあります。
1. 社会保険料への影響
総合課税で配当所得を申告すると、所得が増えるため社会保険料が上がる可能性があります。国民健康保険に加入している方は特に注意が必要です。
2. 扶養控除への影響
配偶者や親の扶養に入っている場合、配当所得を申告することで扶養から外れる可能性があります。
3. NISA口座は対象外
新NISA口座で受け取った配当金は、そもそも日本の税金が非課税のため、配当控除の対象外です。また、米国株の配当金については、外国税額控除も受けられません。
NISA口座の米国株配当は、米国での10%のみが課税されます。二重課税ではないため外国税額控除は使えませんが、手取りは90%なので課税口座より有利です。
4. 2024年からの税制改正
2024年から、所得税と住民税で異なる課税方式を選択できなくなりました。以前は「所得税は総合課税、住民税は申告不要」という選択ができましたが、現在は統一する必要があります。
確定申告すべきか判断するポイント
以下のチェックリストで判断しましょう。
- 国内株の配当金が年間10万円以上
- 米国株の配当金が年間10万円以上
- 株式の売却損がある(損益通算・繰越控除)
- 課税所得が695万円以下(配当控除が有利)
- 国民健康保険に加入していて、保険料への影響が大きい
- 配偶者控除・扶養控除を受けていて、外れる可能性がある
- 配当金が少額で、還付額が手間に見合わない
まとめ
投資と確定申告について、ポイントを整理します。
- 特定口座(源泉徴収あり)なら確定申告は不要だが、申告すると得するケースも
- 国内株の配当金 → 配当控除(総合課税で申告)
- 米国株の配当金 → 外国税額控除(確定申告必須)
- 課税所得695万円以下なら配当控除が有利になりやすい
- 社会保険料や扶養控除への影響も考慮して判断
- NISA口座は対象外
配当金がまとまった額になったら、確定申告を検討してみてください。
よくある質問
国内株の配当金には配当控除、米国株の配当金には外国税額控除と、それぞれ使い分けることができます。ただし、同じ配当金に両方を適用することはできません。
国民健康保険に加入している場合は上がる可能性があります。会社員で社会保険に加入している場合、保険料は給与で決まるため影響は限定的です。
NISA口座は日本の税金が非課税のため、配当控除も外国税額控除も対象外です。確定申告のメリットはありません。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。