「米国ETFと投資信託、どっちに投資すればいいの?」「VOOやVTIを買うべき?それとも投資信託?」——そんな疑問を持っている方は多いのではないでしょうか。
結論から言うと、初心者には投資信託がおすすめです。
ただし、ETFにはETFのメリットがあり、人によってはETFの方が適しているケースもあります。
この記事では、米国ETF(VOO・VTI)と投資信託(eMAXIS Slimなど)の違いを、信託報酬、分配金再投資、為替、税金の観点から徹底比較します。
米国ETFと投資信託の基本的な違い
ETFとは?
ETF(Exchange Traded Fund:上場投資信託)は、証券取引所に上場している投資信託です。株式と同じようにリアルタイムで売買できます。
代表的な米国ETFには以下があります。
| ETF | 投資対象 | 経費率 |
|---|---|---|
| VOO | S&P500(米国大型株500社) | 0.03% |
| VTI | 全米株式(約4,000銘柄) | 0.03% |
| VT | 全世界株式(約9,000銘柄) | 0.07% |
投資信託とは?
投資信託は、証券会社を通じて購入する金融商品で、1日1回算出される基準価額で取引されます。
代表的な投資信託には以下があります。
| 投資信託 | 投資対象 | 信託報酬 |
|---|---|---|
| eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) | S&P500 | 0.0814% |
| eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) | 全世界株式 | 0.05775% |
| 楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天VTI) | VTIに投資 | 0.162% |
比較①:信託報酬(コスト)
ETFの方が信託報酬は低い
| 商品タイプ | 商品名 | 信託報酬/経費率 |
|---|---|---|
| 米国ETF | VOO | 0.03% |
| 米国ETF | VTI | 0.03% |
| 投資信託 | eMAXIS Slim 米国株式 | 0.0814% |
| 投資信託 | 楽天VTI | 0.162% |
ETFの方がコストが安いなら、ETFを買った方がいいんですか?
コストだけ見ればそうですね。ただ、ETFには「売買手数料」「為替手数料」などの別コストがかかります。トータルで考える必要があります。
ETFにかかるその他のコスト
- 売買手数料:売買時にかかる(証券会社によっては無料)
- 為替手数料:円→ドル、ドル→円の両替時にかかる
- スプレッド:市場価格と基準価額の乖離
投資信託の場合、これらは「信託報酬」に含まれているか、または発生しません。
長期保有での差
100万円を20年間保有した場合のコスト差を計算してみましょう。
| 商品 | 信託報酬/経費率 | 20年間のコスト概算 |
|---|---|---|
| VOO | 0.03% | 約6,000円 |
| eMAXIS Slim S&P500 | 0.0814% | 約16,280円 |
※単純計算(運用益を考慮せず)
20年で約1万円の差です。この差をどう見るかは人によりますが、後述する「分配金再投資」の効率を考えると、投資信託の方がトータルで有利になるケースも多いです。
比較②:分配金の扱い
ETFは分配金が出る
VOOやVTIは、四半期ごとに分配金が支払われます。2025年時点の配当利回りは約1.1%程度です。
分配金がもらえるなら嬉しいですよね?
一見嬉しいですが、長期投資では分配金を受け取ると複利効果が弱まってしまいます。再投資するなら手間もかかります。
投資信託は「再投資型」が選べる
投資信託では、分配金を自動で再投資する設定が可能です。
- 分配金が自動で再投資され、複利効果を最大化
- 手間がかからない
- 分配金への課税を繰り延べできる
- 配当金を受け取って生活費に使いたい人には不向き
長期の資産形成が目的なら、分配金再投資型の投資信託が有利です。
分配金に対する税金
ETFの分配金には、以下の税金がかかります。
- 米国での源泉徴収:10%
- 日本での源泉徴収:20.315%
投資信託(国内籍)の場合、「二重課税調整」が自動で行われ、日本の所得税から外国税額が控除されます。
NISA口座では二重課税調整の対象外となります。そのため、NISA口座で米国ETFを保有すると、米国での10%課税は取り戻せません。
比較③:為替の取り扱い
ETFはドル建て
米国ETFを購入するには、円をドルに両替する必要があります。
- 購入時:円 → ドル
- 売却時:ドル → 円(必要に応じて)
- 分配金:ドルで受け取り
ドルを持っておくのって面倒じゃないですか?
為替の管理は確かに手間です。また、為替手数料も発生します。SBI証券では住信SBIネット銀行を使えば手数料を抑えられますが、それでも手間はかかります。
投資信託は円建て
投資信託は円建てで購入・売却できます。為替の変動は基準価額に反映されるため、投資家が為替取引をする必要はありません。
| 項目 | 米国ETF | 投資信託 |
|---|---|---|
| 購入時の通貨 | ドル | 円 |
| 為替取引 | 必要 | 不要 |
| 為替手数料 | かかる | 信託報酬に含まれる |
| 管理の手間 | あり | ほぼなし |
「手間をかけたくない」という方には、投資信託が圧倒的に楽です。
比較④:最低投資額
ETFは数万円〜
ETFは1口単位での購入となるため、最低投資額が高くなります。
| ETF | 1口あたり価格(2025年12月目安) |
|---|---|
| VOO | 約550ドル(約8万円) |
| VTI | 約290ドル(約4.3万円) |
※為替レート1ドル=150円で計算
投資信託は100円から
投資信託は100円から購入可能です。少額から始めたい人や、毎月の積立額を細かく設定したい人には投資信託が向いています。
| 項目 | 米国ETF | 投資信託 |
|---|---|---|
| 最低投資額 | 数万円〜 | 100円〜 |
| 積立設定 | 可能(金額は柔軟性に欠ける) | 自由に設定可能 |
比較⑤:リアルタイム取引
ETFは株式と同じように取引可能
ETFは証券取引所に上場しているため、市場が開いている時間帯はリアルタイムで売買できます。指値注文や成行注文も可能です。
投資信託は1日1回の基準価額で取引
投資信託の取引価格は、1日1回算出される「基準価額」で決まります。注文を出しても、約定価格は翌営業日以降に確定します。
リアルタイムで売買できた方が有利じゃないですか?
短期売買をするならリアルタイム取引は便利です。ただ、インデックス投資で長期保有するなら、リアルタイム取引は不要ですし、むしろ「頻繁に売買してしまう」リスクにもなります。
VOOとVTI、どっちがいい?
米国ETFを選ぶなら、VOOとVTIのどちらを選ぶべきでしょうか。
VOOとVTIの違い
| 項目 | VOO | VTI |
|---|---|---|
| 投資対象 | S&P500(大型株500社) | 全米株式(約4,000銘柄) |
| 経費率 | 0.03% | 0.03% |
| 配当利回り | 約1.13% | 約1.10% |
| 時価総額カバー率 | 約80% | 約100% |
選び方の目安
- VOO:米国の大型優良株に集中投資したい人
- VTI:中小型株も含めた米国市場全体に投資したい人
過去10年のパフォーマンスはほぼ互角です。どちらを選んでも大きな差はありません。「S&P500」という指数に馴染みがあるならVOO、「米国市場全体」に投資したいならVTI、という選び方で問題ありません。
結論:初心者には投資信託がおすすめ
ここまでの比較をまとめます。
| 項目 | 米国ETF | 投資信託 | 勝者 |
|---|---|---|---|
| 信託報酬 | ◎ 0.03% | ○ 0.05〜0.16% | ETF |
| 分配金再投資 | △ 手動 | ◎ 自動 | 投資信託 |
| 為替の手間 | △ 必要 | ◎ 不要 | 投資信託 |
| 最低投資額 | △ 数万円〜 | ◎ 100円〜 | 投資信託 |
| リアルタイム取引 | ◎ 可能 | △ 不可 | ETF |
| 二重課税調整 | △ 手動(確定申告) | ◎ 自動 | 投資信託 |
投資信託がおすすめな人
- 投資初心者
- 少額から始めたい人
- 手間をかけたくない人
- 新NISAのつみたて投資枠を使いたい人
- 分配金を自動で再投資したい人
米国ETFがおすすめな人
- コストを極限まで抑えたい人
- 為替管理や確定申告が苦にならない人
- まとまった資金で一括投資したい人
- 分配金を受け取りたい人
- リアルタイムで取引したい人
まとめ
米国ETFと投資信託の違いをまとめました。
- 信託報酬:ETFの方が低い(VOO 0.03%)
- 分配金再投資:投資信託は自動で再投資可能
- 為替:投資信託は円建てで手間なし
- 最低投資額:投資信託は100円から
初心者には、手間がかからない投資信託がおすすめです。
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)やeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)なら、低コストで米国株式や全世界株式に投資できます。
「とにかくコストを抑えたい」「為替管理も苦にならない」という方は、VOOやVTIなどの米国ETFも選択肢になります。
大切なのは、自分に合った方法で長く続けることです。どちらを選んでも、長期・積立・分散投資を続ければ、資産形成は進みます。
よくある質問
手間をかけたくないならeMAXIS Slim S&P500、コストを極限まで抑えたいならVOOがおすすめです。初心者にはeMAXIS Slimの方が扱いやすいでしょう。
長期投資なら再投資がおすすめです。ただし、米国ETFの分配金は自動再投資ができないため、手動で買い増しする必要があります。
つみたて投資枠を使うなら投資信託一択です。成長投資枠では米国ETFも購入可能ですが、NISA口座では二重課税調整の対象外となるため、投資信託の方が有利になるケースが多いです。
信託報酬はeMAXIS Slim S&P500(0.0814%)の方が低いです。VTI(全米株式)に投資したいなら楽天VTI、S&P500に投資したいならeMAXIS Slimを選びましょう。
米国ETFも投資信託も、どちらも為替リスクは同じです。円高になれば評価額は下がり、円安になれば上がります。長期投資では為替変動は平準化される傾向があります。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。