投資信託を購入するとき、「分配金コース」の選択を求められることがあります。「再投資型」と「受取型」、どちらを選べばいいの?と迷う方も多いのではないでしょうか。
結論から言えば、長期で資産を増やしたいなら再投資型がおすすめです。この記事では、両者の違いと選び方を解説します。
再投資型と受取型の違い
再投資型とは
分配金が出たとき、その分配金で同じ投資信託を自動的に追加購入する方式です。
分配金がもらえないってことですか?
もらえないのではなく、もらった分配金で自動的に買い増しているイメージです。現金として手元には入りませんが、保有口数が増えていきます。
受取型とは
分配金が出たとき、その分配金を現金として証券口座に入金する方式です。
| 項目 | 再投資型 | 受取型 |
|---|---|---|
| 分配金の行き先 | 自動で追加購入 | 現金として証券口座へ |
| 保有口数 | 増える | 変わらない |
| 手元の現金 | 増えない | 分配金分増える |
| 手続き | 自動(手間なし) | 自動(手間なし) |
複利効果の差
再投資型の最大のメリットは複利効果です。分配金を再投資することで「利益が利益を生む」状態になり、長期的に資産が大きく増える可能性があります。
シミュレーション比較
新NISAで元本100万円を年5%で20年間運用した場合:
| 年数 | 再投資型 | 受取型 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 5年後 | 約128万円 | 約125万円 | +3万円 |
| 10年後 | 約163万円 | 約150万円 | +13万円 |
| 15年後 | 約208万円 | 約175万円 | +33万円 |
| 20年後 | 約265万円 | 約200万円 | +65万円 |
20年間で65万円もの差がつきます。これが複利の効果です。運用期間が長いほど、再投資型の優位性は大きくなります。
再投資型のメリット・デメリット
- 複利効果で資産が増えやすい
- 再購入の手間がかからない
- 購入手数料がかからない(多くの場合)
- 長期の資産形成に最適
- 分配金を生活費に使えない
- 運用成果を実感しにくい
- 現金が必要な時は売却が必要
再投資型が向いている人
- 20〜40代で長期の資産形成を目指す人
- 配当より値上がり益を重視する人
- 分配金を使う予定がない人
- 投資の成果を最大化したい人
受取型のメリット・デメリット
- 定期的に現金収入を得られる
- 投資の成果を実感しやすい
- 生活費や趣味の費用に充てられる
- 年金の補填になる
- 複利効果が得られにくい
- 長期では資産の増え方が劣る
- 分配金の使い道を考える必要がある
受取型が向いている人
- 退職後・シニア世代で定期収入が欲しい人
- 分配金を生活費に充てたい人
- 投資の成果を実感したい人
- 資産を取り崩しフェーズの人
年齢やライフステージで最適な選択は変わります。資産形成期は再投資型、取り崩し期は受取型というのが基本的な考え方です。
どちらを選ぶべき?判断のポイント
迷ったら再投資型
どちらか決められない場合は、再投資型をおすすめします。理由は以下の通りです。
- 後から受取型に変更可能(多くの証券会社)
- 複利効果の恩恵を最大限受けられる
- 分配金が必要になったら売却すればよい
判断フローチャート
Q1: 分配金を生活費に使いたいか?
- Yes → 受取型
- No → Q2へ
Q2: 10年以上の長期投資を予定しているか?
- Yes → 再投資型
- No → Q3へ
Q3: 投資の成果を定期的に実感したいか?
- Yes → 受取型
- No → 再投資型
2025年の注目ポイント:分配金コースの変更
最初に選んだ後、変更はできるんですか?
多くの証券会社で変更可能です。2025年6月からは楽天証券のNISA口座でも分配金コースの切り替えができるようになりました。
これにより、以下のような戦略が取りやすくなりました。
- 現役時代:再投資型で複利効果を最大化
- 退職後:受取型に変更して年金の補填に
分配金コースは途中で変更できるので、ライフステージに合わせて柔軟に対応しましょう。
「分配金なし」という選択肢
実は、長期投資で人気のeMAXIS Slimシリーズなどは、そもそも分配金をほとんど出さない設計になっています。
分配金を出さないファンドのメリット
- 税金の繰り延べ効果(分配時に課税されない)
- 複利効果を最大化
- 分配金コースを考える必要がない
つみたてNISAや新NISAで人気のインデックスファンドの多くは、分配金をほとんど出しません。これは長期投資に最適な設計だからです。
NISAでの分配金の扱い
新NISAで分配金を受け取る場合、以下の点に注意が必要です。
再投資型でも非課税枠を消費
新NISAで再投資型を選んだ場合、分配金の再投資分も非課税投資枠を消費します。
例:1万円の分配金が再投資されると、非課税枠を1万円分使用
受取型は非課税枠に影響なし
受取型で分配金を現金で受け取る場合、非課税枠は消費されません(ただし、別途その資金で投資すれば当然枠を使います)。
新NISAの非課税枠は年間360万円、生涯1,800万円まで。分配金をあまり出さないファンドを選べば、非課税枠を効率的に使えます。
まとめ
投資信託の分配金「再投資型」と「受取型」について、ポイントを整理します。
- 再投資型:複利効果で資産が増えやすい、長期投資向け
- 受取型:定期的な現金収入、退職後・シニア向け
- 20年間で65万円もの差がつくことも
- 迷ったら再投資型を選び、後から変更も可能
- 人気のインデックスファンドは分配金をほとんど出さない設計
ライフステージに合わせて、最適な選択をしましょう。
よくある質問
100万円を年5%で運用した場合、20年後に約65万円の差がつきます(再投資型:約265万円、受取型:約200万円)。期間が長いほど複利効果で差は広がります。
多くの証券会社で変更可能です。2025年6月からは楽天証券のNISA口座でも切り替えができるようになりました。ライフステージに合わせて変更しましょう。
長期の資産形成なら再投資型がおすすめです。ただし、分配金をほとんど出さないインデックスファンド(eMAXIS Slimなど)を選べば、そもそも分配金コースを気にする必要はありません。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。