「投資信託を始めたいけど、種類が多すぎてどれを選べばいいかわからない」——これは投資初心者が最初にぶつかる壁です。
2025年4月時点で、公募投資信託の銘柄数は5,829本。この中から自分に合った1本を見つけるのは、確かに簡単ではありません。しかし、チェックすべきポイントは5つだけ。この記事で、失敗しない投資信託の選び方を解説します。
投資信託選びの5つのポイント
結論から言うと、以下の5つをチェックすれば、地雷を踏む可能性は大幅に下がります。
| チェックポイント | 目安 |
|---|---|
| 1. 信託報酬 | 年0.2%以下(インデックス型) |
| 2. 純資産総額 | 100億円以上 |
| 3. 運用期間 | 3年以上 |
| 4. ファンドの種類 | インデックス or アクティブを理解 |
| 5. NISA対応 | つみたて投資枠対象かどうか |
それぞれ詳しく解説します。
ポイント1:信託報酬(運用管理費用)
信託報酬とは、投資信託を保有している間、毎日差し引かれる手数料です。年率で表示され、0.1%〜2%程度まで幅があります。
なぜ信託報酬が重要なのか
信託報酬は「保有している限りずっとかかる」費用です。たとえ0.5%の差でも、20年、30年と積み重なると大きな差になります。
0.1%と0.5%の差って、そんなに大きいですか?
100万円を20年運用した場合、信託報酬0.1%なら約2万円、0.5%なら約10万円のコストがかかります。同じ運用成績でも、手取りに8万円の差が出るんです。
信託報酬の目安
| ファンドの種類 | 信託報酬の目安 |
|---|---|
| インデックスファンド(国内株式) | 0.1%以下 |
| インデックスファンド(全世界株式) | 0.1〜0.2% |
| インデックスファンド(米国株式) | 0.1%以下 |
| アクティブファンド | 0.5〜1.5% |
インデックス投資なら、信託報酬0.2%以下を目安にしましょう。eMAXIS Slimシリーズや楽天・オールカントリーなどが代表的です。
ポイント2:純資産総額
純資産総額とは、その投資信託に集まっている資金の合計額です。「ファンドの規模」を表す指標で、大きいほど安定した運用が期待できます。
なぜ純資産総額が重要なのか
純資産総額が小さいと何が問題なんですか?
純資産総額が小さいと、繰上償還(強制的に運用終了)のリスクがあります。2024年には、PayPayアセットマネジメントが5期連続赤字で2025年9月に事業終了を発表しました。運用会社の体力も重要です。
純資産総額の目安
| 純資産総額 | 評価 |
|---|---|
| 100億円以上 | 安心して選べる |
| 50〜100億円 | 許容範囲 |
| 30億円以下 | 繰上償還リスクあり、避けた方が無難 |
人気のeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)は純資産総額5兆円超。これほど大きければ繰上償還の心配はまずありません。
ポイント3:運用期間と実績
設定されてから日が浅いファンドは、実績データが少なく評価しにくいため、最低3年以上の運用実績があるファンドを選ぶのが安全です。
運用実績の見方
運用報告書や目論見書で以下をチェックしましょう。
- ベンチマークとの乖離:インデックスファンドなら、指数との乖離が小さいほど良い
- トータルリターン:1年、3年、5年の年率リターン
- シャープレシオ:リスクあたりのリターン効率(高いほど良い)
新しいファンドが悪いわけではありませんが、「お試し」で買うには向きません。実績のあるファンドで土台を作ってから、余裕があれば新しいファンドを検討しましょう。
ポイント4:インデックス型 vs アクティブ型
投資信託は大きく「インデックス型」と「アクティブ型」に分かれます。この違いを理解することが、選び方の第一歩です。
インデックスファンド
日経平均やS&P500などの指数(インデックス)に連動する運用を目指すファンドです。
- 信託報酬が低い(0.1〜0.2%程度)
- 運用方針が明確で分かりやすい
- 長期投資に向いている
- 市場平均のリターンを得られる
- 市場平均を超えるリターンは期待しにくい
- 相場全体が下がれば一緒に下がる
アクティブファンド
ファンドマネージャーが銘柄を選んで、指数を上回るリターンを目指すファンドです。
- 市場平均を超えるリターンの可能性
- 下落相場で損失を抑えられる可能性
- プロの運用に任せられる
- 信託報酬が高い(0.5〜1.5%程度)
- 長期的にはインデックスに負けるファンドが多い
- ファンド選びが難しい
結局、どっちがいいんですか?
初心者には断然インデックスファンドがおすすめです。アクティブファンドの約8割は、長期的にインデックスに負けるというデータがあります。低コストで市場平均を取れるインデックスで十分です。
ポイント5:NISAのつみたて投資枠対象か
新NISAで投資するなら、つみたて投資枠の対象商品かどうかをチェックしましょう。
つみたて投資枠の対象商品は、金融庁が「長期・積立・分散投資に適している」と認めた約280本(2025年現在)に限られています。つまり、すでに金融庁がふるいにかけてくれているのです。
- 信託報酬が一定水準以下
- 販売手数料が無料(ノーロード)
- 毎月分配型でない
- デリバティブ取引を使っていない
迷ったらつみたて投資枠対象の商品から選ぶのが簡単です。変なファンドを掴むリスクが大幅に減ります。
具体的な選び方の流れ
老後資金なのか、教育費なのか、目的によって選ぶファンドが変わります。10年以上の長期投資なら株式中心、5年以内に使う予定ならバランス型や債券を検討。
初心者は迷わずインデックスファンドを選びましょう。低コストで市場平均のリターンを得られます。
全世界株式、米国株式、日本株式など。迷ったら全世界株式(オルカン)が分散されていて安心です。
信託報酬0.2%以下、純資産総額100億円以上を目安に。つみたて投資枠対象なら、さらに安心です。
SBI証券、楽天証券などのネット証券なら、購入手数料無料で買えます。NISA口座を開設して積立設定を行いましょう。
初心者におすすめの投資信託3選
具体的な銘柄を挙げるなら、以下の3つは多くの投資家に支持されています。
| ファンド名 | 投資対象 | 信託報酬 | 純資産総額 |
|---|---|---|---|
| eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) | 全世界株式 | 0.05775% | 5兆円超 |
| eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) | 米国株式 | 0.09372% | 6兆円超 |
| 楽天・オールカントリー株式インデックス・ファンド | 全世界株式 | 0.0561% | 3,000億円超 |
どれを選んでも大きな失敗はありません。迷ったらオルカン(全世界株式)が王道です。これ1本で世界中に分散投資できます。
避けるべき投資信託の特徴
逆に、以下のような特徴があるファンドは避けた方が無難です。
- 信託報酬が1%を超えるインデックスファンド
- 純資産総額が30億円以下
- 毎月分配型(複利効果が得られない)
- テーマ型ファンド(AI、ESGなど)で信託報酬が高いもの
- 銀行や対面証券で強く勧められたファンド
銀行で勧められたファンドはダメなんですか?
必ずしもダメではありませんが、販売側の手数料収入が高いファンドを勧められがちです。自分で調べてネット証券で買う方が、低コストで良いファンドに出会えます。
まとめ
投資信託の選び方のポイントを整理します。
- 投資信託は5,800本以上あるが、チェックポイントは5つだけ
- 信託報酬0.2%以下、純資産総額100億円以上が目安
- 初心者はインデックスファンドを選ぶ
- つみたて投資枠対象なら金融庁のお墨付き
- 迷ったら全世界株式(オルカン)が王道
難しく考えず、まずは1本選んで始めてみましょう。
よくある質問
全世界株式のインデックスファンド1本でも十分です。これだけで約3,000銘柄に分散投資できます。複数持つ場合も、3〜5本程度に絞った方が管理しやすいでしょう。
購入時手数料(ノーロードなら無料)、信託財産留保額(売却時にかかる場合あり)、隠れコスト(売買委託手数料など)があります。トータルコストは「総経費率」で確認できます。
過去の成績が良くても、将来も良いとは限りません。研究によると、長期的にはアクティブファンドの約8割がインデックスに負けています。初心者は低コストのインデックスファンドから始めるのが無難です。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。