「株だけでなく、金にも投資した方がいい」——そんな話を聞いたことはありませんか?
金(ゴールド)は、株式や債券とは異なる値動きをするため、ポートフォリオの分散投資に効果的です。2025年12月現在、金価格は1グラム約23,000円と過去最高水準で推移しています。
この記事では、金投資の4つの方法と、メリット・デメリットを解説します。
なぜ今、金投資が注目されているのか
金価格は2024年以降、過去最高値を更新し続けています。その背景には、以下の要因があります。
| 要因 | 影響 |
|---|---|
| 地政学リスク(ウクライナ情勢等) | 安全資産として金に資金が流入 |
| 各国中央銀行の金購入 | 2024年は3年連続で1,000トン超の純購入 |
| インフレ懸念 | 実物資産としての金に注目 |
| 円安の進行 | 円建て金価格の上昇 |
「有事の金」ってよく聞きますね。
その通りです。世界情勢が不安定な時、株式が下落しても金価格は上昇する傾向があります。コロナショックやロシア・ウクライナ情勢でも、金は安全資産として買われました。
金投資のメリット
1. 株式・債券との分散効果
金は株式や債券と逆の値動きをすることが多く、ポートフォリオ全体のリスクを下げる効果があります。
一般的に、株式市場が下落すると金価格は上昇する傾向があります。これは投資家がリスク資産から安全資産へ資金を移動させるためです。
2. インフレに強い
金は実物資産なので、通貨の価値が下がるインフレ局面でも価値を維持しやすいです。現金や預金はインフレで実質価値が目減りしますが、金はインフレに強いと言われています。
3. 信用リスクがない
株式は企業が倒産すれば価値がゼロになりますが、金は世界共通で価値が認められている実物資産です。国や企業の信用に依存しないため、信用リスクがありません。
4. 世界中で換金できる
金は世界中で取引されており、どの国でも換金可能です。国際的に価値が認められた普遍的な資産と言えます。
金投資のデメリット
1. 配当・利息がない
金は持っているだけでは何も生み出しません。株式の配当や債券の利息のような定期収入はありません。
これが金投資最大のデメリットです。長期投資では、配当再投資の複利効果が得られません。そのため、ポートフォリオの一部(5〜15%程度)に留めるのが一般的です。
2. 保管・保有コストがかかる
現物の金を持つ場合は保管コストが、ETFや投資信託の場合は信託報酬がかかります。
| 投資方法 | 主なコスト |
|---|---|
| 現物購入 | 保管料(銀行貸金庫など) |
| 純金積立 | 購入手数料(1.65〜3%) |
| 金ETF | 信託報酬(年0.1〜0.4%) |
| 投資信託 | 信託報酬(年0.2〜0.5%) |
3. 為替リスクがある
金の国際価格はドル建てで決まるため、円高になると円建ての金価格は下落します。逆に円安は金価格の上昇要因になります。
4. 短期的な価格変動がある
金は安全資産と言われますが、短期的には大きく変動することもあります。「有事の金」として急騰した後、急落することもあります。
金投資の4つの方法
金に投資する方法は主に4つあります。それぞれの特徴を比較しましょう。
| 方法 | 最低投資額 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 現物購入 | 数万円〜 | 実物を手元に持てる | 保管が必要、売買スプレッドが大きい |
| 純金積立 | 月1,000円〜 | 少額から始められる | 購入手数料が高い |
| 金ETF | 数千円〜 | 低コスト、いつでも売買可能 | 現物は持てない |
| 投資信託 | 100円〜 | NISAで非課税、積立しやすい | 現物は持てない |
1. 現物購入(金地金・金貨)
金地金(インゴット)や金貨を購入して、実物を保有する方法です。
- 実物を手元に持てる安心感
- 業者の倒産リスクがない
- 相続・贈与しやすい
- 保管場所の確保が必要
- 盗難リスクがある
- 売買スプレッドが大きい(買値と売値の差)
- 500g未満はバーチャージ(手数料)がかかる
500g以上というと、いくらくらいですか?
2025年12月現在の価格で約1,150万円です。手数料なしで買えるのは富裕層向けですね。少額から始めたい方には向きません。
2. 純金積立
毎月一定額を積み立てて、少しずつ金を購入する方法です。田中貴金属、三菱マテリアル、SBI証券などで取り扱っています。
- 月1,000円から始められる
- ドルコスト平均法で購入単価を平準化
- 積み立てた金は現物で引き出せる(会社による)
- 購入手数料が高い(1.65〜3%程度)
- 年会費がかかる場合がある
| 会社 | 購入手数料 | 最低積立額 |
|---|---|---|
| SBI証券 | 1.65% | 月1,000円 |
| 楽天証券 | 1.65% | 月1,000円 |
| 田中貴金属 | 2.5% | 月3,000円 |
| 三菱マテリアル | 1.1〜3.0% | 月3,000円 |
3. 金ETF
証券取引所に上場している金価格に連動するETF(上場投資信託)を購入する方法です。株式と同じように売買できます。
- 信託報酬が低い(年0.1〜0.4%)
- 株と同じようにリアルタイムで売買可能
- 少額(数千円)から投資できる
- NISAの成長投資枠で購入可能
- 現物の金は持てない
- 為替リスク(米国ETFの場合)
おすすめの金ETF
| 銘柄 | 種類 | 信託報酬 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| GLDM | 米国ETF | 年0.10% | 最安コスト、SBI・楽天で買付無料 |
| グローバルX ゴールドETF(425A) | 国内ETF | 年0.1775% | 国内最安 |
| iシェアーズ ゴールドETF(314A) | 国内ETF | 年0.22% | 実績あり、約2,500円から |
| GLD | 米国ETF | 年0.25% | 世界最大、流動性高い |
4. 投資信託
金に連動する投資信託を購入する方法です。100円から積立設定ができ、NISAのつみたて投資枠でも一部購入可能です。
- 100円から積立可能
- NISAで非課税投資できる
- 自動積立が設定しやすい
- ETFより信託報酬がやや高い傾向
- 現物の金は持てない
おすすめの金投資信託
| ファンド名 | 信託報酬 | 販売会社 |
|---|---|---|
| SBI・iシェアーズ・ゴールドファンド(サクっと純金) | 年0.184% | SBI証券、松井証券 |
| 三菱UFJ 純金ファンド | 年0.55% | 主要証券会社 |
| ピクテ・ゴールド | 年0.879% | 主要証券会社 |
コスト重視なら「サクっと純金」が最安です。SBI証券か松井証券の口座があれば、こちらを選びましょう。
金投資と新NISA
金投資も新NISAの成長投資枠で購入可能です。ただし、つみたて投資枠では購入できません(一部例外あり)。
| 投資方法 | つみたて投資枠 | 成長投資枠 |
|---|---|---|
| 金ETF(国内) | × | ○ |
| 金ETF(米国) | × | ○ |
| 金投資信託 | △(一部対象) | ○ |
| 現物・純金積立 | × | × |
NISAで購入できるのはETFと投資信託のみです。現物購入や純金積立はNISAの対象外です。
金投資の始め方
初心者が金投資を始めるなら、以下の流れがおすすめです。
少額から始めたいなら投資信託かETF、実物が欲しいなら純金積立を選びましょう。コスト重視ならETFがおすすめです。
SBI証券や楽天証券でNISA口座を開設します。金ETF・投資信託はどちらでも購入できます。
ETFなら「GLDM」や「314A」、投資信託なら「サクっと純金」がコスト面で有利です。
金は配当がないため、全資産を金にするのは非効率です。分散投資の一環として、5〜15%程度を金に配分するのが一般的です。
金投資に向いている人・向いていない人
向いている人
- 株式だけでなく分散投資したい
- 長期的な資産保全を重視する
- インフレや有事に備えたい
- ポートフォリオの安定性を高めたい
向いていない人
- 配当や利息収入が欲しい
- 短期で大きなリターンを狙いたい
- 投資先を絞って集中投資したい
- コストを極限まで抑えたい
金は「攻め」ではなく「守り」の資産です。メインの資産形成はインデックス投資で行い、金は補助的に持つのがバランスの良い考え方です。
まとめ
金(ゴールド)投資のポイントを整理します。
- 金は株式と異なる値動きで分散効果あり
- 投資方法は現物・純金積立・ETF・投資信託の4つ
- 配当がないのが最大のデメリット
- 初心者には金ETFか投資信託がおすすめ
- ポートフォリオの5〜15%を目安に
- 新NISAの成長投資枠で非課税投資も可能
「有事の金」として、ポートフォリオの一部に金を組み入れることを検討してみてください。
よくある質問
金価格は2025年12月現在、過去最高水準ですが、「高値だから買えない」とは限りません。長期的な資産保全が目的なら、時間分散(積立投資)で購入するのが有効です。一括投資よりリスクを抑えられます。
一般的には5〜15%程度が目安とされています。金は配当がないため、比率が高すぎると資産形成の効率が落ちます。あくまで分散投資の一環として、補助的に保有するのがおすすめです。
コストはETFの方が低い傾向がありますが、投資信託は100円から積立設定でき手軽です。リアルタイムで売買したいならETF、毎月コツコツ積み立てたいなら投資信託を選びましょう。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。