「年金は株で溶けている」
「私たちの年金は大丈夫なの?」
SNSでこうした声を見かけることがありますが、実態は大きく異なります。日本の年金積立金を運用するGPIFの累積収益は+180兆円超。世界最大級の機関投資家が実践する投資戦略には、個人投資家にとっても参考になるエッセンスが詰まっています。
GPIFとは?世界最大級の年金運用機関
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、厚生年金と国民年金の積立金を管理・運用する組織です。
GPIFって聞いたことはあるけど、どれくらいの規模なんですか?
2025年9月末時点で運用資産は約277兆円。世界最大級の機関投資家で、「市場のクジラ」とも呼ばれています。
GPIFの運用目標は「長期的に年金積立金の実質的な運用利回り1.9%を最低限のリスクで確保すること」。派手なリターンを追うのではなく、安定的に国民の年金を増やすことを使命としています。
基本ポートフォリオ:4資産×25%のシンプル設計
GPIFのアセットアロケーションは非常にシンプルです。
| 資産クラス | 配分比率 | 乖離許容幅 |
|---|---|---|
| 国内債券 | 25% | 各資産±7〜11% |
| 国内株式 | 25% | |
| 外国債券 | 25% | |
| 外国株式 | 25% |
2025年度からの第5期中期計画でも、この4資産均等配分を継続することが決定されました。株式50%・債券50%という比率は、リスクとリターンのバランスを重視した結果です。
GPIFはオルタナティブ資産(インフラ、不動産、プライベートエクイティ等)にも投資していますが、上限は全体の5%以内。あくまで4資産のコア運用が中心です。
「年金は株で溶けている」は本当か?
結論から言えば、長期では大幅なプラスです。
2001年の市場運用開始以来、2025年9月末までの累積収益額は+180兆1,843億円。収益率は年率+4.51%を記録しています。
でも、リーマンショックの時はすごく損したんじゃないですか?
確かに2008年度は約9.3兆円のマイナスでした。しかしその後の回復で損失を取り戻し、累積では大幅なプラスになっています。短期の損失だけを切り取って報道されがちなのが誤解の原因です。
四半期ベースで見ると赤字の期もありますが、長期では右肩上がりのグラフを描いています。2025年7〜9月期だけでも+14.4兆円の運用益を記録しました。
GPIFから個人投資家が学べる4つのこと
1. 分散投資の重要性
GPIFは国内外の株式と債券に均等に投資することで、特定の市場や資産に依存しないポートフォリオを構築しています。ひとつの資産が下落しても、他の資産がカバーする仕組みです。
2. 長期運用のリターン
年率+4.51%は、20年以上かけて積み上げた数字です。複利の力もあり、運用期間が長くなるほど累積収益は加速的に増えていきます。
3. リバランスの考え方
GPIFは基本ポートフォリオから一定以上乖離した場合、資産を売買して元の配分に戻す「リバランス」を行います。値上がりした資産を売り、値下がりした資産を買うことで、高値掴みを防ぎつつリスクを管理しています。
4. 短期の下落に動じない
GPIFが何兆円もマイナスになっても慌てて売らないのは、すごいですね。
まさにそこが重要です。長期目標が明確だからこそ、短期の変動に振り回されない。個人投資家も同じ姿勢が大切です。
GPIFは四半期ごとに運用実績を公表するため、マイナスの期にはメディアで大きく報じられます。しかし長期の累積で判断することが正しい見方です。
個人投資家がGPIF風ポートフォリオを再現する方法
方法1:バランスファンド1本で再現
最もシンプルなのは、eMAXISバランス(4資産均等型)を1本購入する方法です。国内株式・外国株式・国内債券・外国債券に25%ずつ自動配分され、リバランスも自動で行われます。
- 1本で4資産均等配分が完了
- リバランスが自動
- 手間がかからない
- 信託報酬がやや高め(年率0.55%程度)
- 配分比率のカスタマイズができない
方法2:4本の投信を自分で組み合わせ
コストを抑えたいなら、インデックス投資の低コストファンドを4本組み合わせる方法もあります。
| 資産クラス | 投信の例 | 信託報酬(税込) |
|---|---|---|
| 国内株式 | eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX) | 0.143% |
| 外国株式 | eMAXIS Slim 先進国株式 | 0.09372% |
| 国内債券 | eMAXIS Slim 国内債券 | 0.132% |
| 外国債券 | eMAXIS Slim 先進国債券 | 0.154% |
4本を25%ずつ購入し、年1回程度リバランスすれば、GPIFとほぼ同じ運用を低コストで再現できます。
リバランスは年1〜2回で十分です。頻繁に行うと売買コストや税金が発生するため、年末や誕生日など決めた時期にチェックするのがおすすめです。
まとめ
- GPIFは約277兆円を運用する世界最大級の年金基金で、累積収益は+180兆円超
- 基本ポートフォリオは4資産×25%のシンプルな分散投資
- 「年金は溶けている」は誤解。長期では年率+4.51%の実績
- 個人投資家も分散・長期・リバランス・冷静さの4つを学べる
- eMAXISバランス(4資産均等型)1本、または低コスト投信4本で再現可能
よくある質問
四半期単位では赤字になることがあります。しかし2001年の運用開始以来、累積では+180兆円超のプラスです。短期の結果ではなく、長期の累積で評価することが重要です。
5年ごとに見直しが行われます。2025年度からの第5期中期計画でも4資産25%ずつの配分は維持されました。大きな変更はなく、安定した運用方針が続いています。
eMAXISバランス(4資産均等型)なら100円から購入可能です。4本の投信を組み合わせる場合も、各100円から積立できるため、少額から始められます。
GPIFの公式サイト(gpif.go.jp)で四半期ごとに運用状況が公表されています。累積収益額や資産構成比率などを誰でも閲覧できます。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。