日立製作所が、AI(人工知能)を活用したテスト・検査業務の効率化を進めている。
生成AIによるシステムモデリングの自動化で従来の10分の1以下の時間短縮を実現したほか、AIエージェントによるメンテナンス検査の自動化も実証段階に入っている。
システムモデリングを生成AIで自動化
日立は、MBSE(モデルベースシステムズエンジニアリング)を含むシステムモデリングの効率化に生成AIを活用している。
システムモデリングって何ですか?
複雑なシステムの設計を図やモデルで表現することです。従来は設計書を読み込んで手作業でモデルを作成していましたが、これを生成AIが自動で行えるようになりました。
公開されている設計書を使ったテストでは、システムモデルの生成時間が従来の10分の1以下に短縮された。モデルの抽出精度は60〜90%で、実用に十分なレベルを達成している。
AIエージェントでメンテナンス検査を自動化
2025年10月、日立はGoogleクラウドとの戦略的提携を発表し、現場作業者向けのAIエージェント開発を進めている。
- メンテナンス前後の画像をAIエージェントが比較
- 正しく復旧されているかを自動検証
- 異常を検知した場合はアラートを発信
- 年間数千件の検査を効率化予定
現在の検査プロセスでは、複数の技術者が確認し、経験豊富な検査員が最終チェックを行っている。AIエージェントの導入により、ダブルチェックの精度向上、見落としの削減、品質と効率の両立を目指す。
HR業務でも70%の効率向上
日立はHR(人事)業務でもAIを積極活用している。
テストだけでなく、人事でもAIを使っているんですか?
はい、日立はEma社のエージェントAIを導入し、5つのHRシステムを統合。オンボーディング、チケット対応、問い合わせ対応などを自動化し、HR業務の効率を70%向上させました。導入期間はわずか8週間でした。
日立は世界で約40万人の従業員を抱えるグローバル企業であり、AIによる業務効率化のインパクトは大きい。
投資家にとっての意味
日立(6501)は、ITサービス、エネルギー、鉄道など幅広い事業を展開する総合電機メーカーだ。
- AI活用による業務効率化でコスト削減
- エンタープライズAI分野でのソリューション提供機会
- DX先進企業としてのブランド価値向上
- AI関連投資による一時的なコスト増
- 競合他社もAI活用を進めており差別化は一時的
- 効果が業績に反映されるまでに時間
日立は、GoogleクラウドやMicrosoftとの戦略的提携を通じて、AI活用を加速している。特に産業分野(製造、エネルギー、鉄道など)でのAIソリューション提供は、今後の成長ドライバーとして期待されている。
まとめ
- 日立がAIでテスト・検査業務を効率化
- 生成AIによるシステムモデリングは10分の1以下の時間で完了
- AIエージェントでメンテナンス検査の自動化を実証中
- HR業務でもAI活用で70%の効率向上を達成
- 40万人規模の従業員を抱える企業のDX先進事例
よくある質問
生成AIによるシステムモデリングの自動化(従来の10分の1以下の時間)、AIエージェントによるメンテナンス検査の自動化、HR業務の効率化(70%向上)などが実現・実証されています。
短期的な影響は限定的ですが、中長期的にはコスト削減効果と、産業向けAIソリューション事業の成長が企業価値に反映される可能性があります。日立は事業構造改革で収益性が向上しており、AI活用はその延長線上にあります。
全般的には米国企業に比べて遅れていますが、日立やスズキのような先進企業は積極的にAI活用を進めています。製造業・インフラ分野では日本企業の強みを活かしたAI活用事例が増えています。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。
投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。