2026年は確定拠出年金の制度が2段階で大きく変わる年です。
まず2026年4月にマッチング拠出の上限制限が撤廃され、続いて2026年12月に掛金上限額の引き上げと加入年齢70歳への延長が施行されます(実際の引落しは2027年1月分から)。
企業年金のない会社員は月額23,000円→62,000円と約2.7倍に拡大。全額が所得控除の対象であることは変わらず、老後の資産形成力が大幅に強化されます。
この記事では、混同されがちな2つの改正の違いと実務対応を整理します。
改正スケジュールの全体像 — 4月と12月で何が変わるか
2026年の確定拠出年金改正スケジュール
| 施行時期 | 改正内容 | 主な対象者 |
|---|---|---|
| 2026年4月 | マッチング拠出の「事業主掛金を超えない」制限を撤廃 | 企業型DC加入者 |
| 2026年12月 | iDeCo・企業型DCの掛金上限引き上げ | 全加入者 |
| 2026年12月 | iDeCo加入年齢を70歳未満に拡大 | 60代後半の就労者 |
ネットでは「4月から掛金が上がる」という記事も見かけるのですが…
それは誤解です。掛金上限の引き上げは2026年12月施行(2027年1月引落分から)であり、4月ではありません。4月に変わるのはマッチング拠出のルールです。時期を間違えると手続きが空振りになるので注意してください。
「2026年4月から掛金上限が上がる」という情報は不正確です。厚生労働省の公表資料では、拠出限度額の引き上げは「令和9(2027)年の控除分からの実現を目指す」とされており、施行は2026年12月1日(初回引落は2027年1月26日)の予定です。
2026年4月改正 — マッチング拠出の制限撤廃
マッチング拠出の制度変更
何が変わるのか
企業型DCのマッチング拠出とは、事業主掛金に加えて従業員が自分で追加拠出できる仕組みです。
従来は「加入者の掛金は事業主掛金を超えてはならない」というルールがありました。たとえば事業主掛金が月10,000円なら、従業員も10,000円までしか上乗せできなかったのです。
4月からはこの制限が撤廃され、事業主掛金と加入者掛金の合計が月55,000円(改正後は62,000円)以内であれば、加入者が自由に拠出額を設定できるようになります。
うちの会社は事業主掛金が月5,000円なのですが、今まではマッチングも5,000円が上限でした。4月からは変わりますか?
はい。4月以降は事業主掛金5,000円に加えて、上限枠までの差額を自分で拠出できるようになります。12月の上限引き上げ前は合計55,000円が上限なので、最大50,000円の加入者拠出が可能です。12月以降は合計62,000円枠になるため、最大57,000円まで拡大します。
マッチング拠出 vs iDeCo
マッチング拡充により、「iDeCoが不要になる」会社員も出てきます。
| 比較項目 | マッチング拠出 | iDeCo |
|---|---|---|
| 口座管理手数料 | 無料(会社負担) | 月171〜600円程度 |
| 運用商品 | 会社が選定した商品のみ | 自分で金融機関・商品を選択 |
| 手続き | 会社経由 | 個人で金融機関に申込 |
| 所得控除 | あり | あり |
| 商品の自由度 | 低い | 高い |
会社のDC商品ラインナップに低コストのインデックスファンドが充実しているなら、手数料ゼロのマッチング拠出の方が有利です。一方、運用商品に不満がある場合はiDeCoの方が選択肢は広がります。
2026年12月改正 — 掛金上限の大幅引き上げ
掛金上限の変更
12月施行の掛金上限引き上げは、今回の改正の核心です。
| 対象者 | 現行(月額) | 改正後(月額) | 増加額 | 増加率 |
|---|---|---|---|---|
| 企業年金ありの会社員 | 55,000円 | 62,000円 | +7,000円 | +13% |
| 企業年金なしの会社員 | 23,000円 | 62,000円 | +39,000円 | +170% |
| 自営業・フリーランス(第1号) | 68,000円 | 75,000円 | +7,000円 | +10% |
最大の恩恵を受けるのは「企業年金のない会社員」です。月額23,000円(年間27.6万円)から62,000円(年間74.4万円)へ、約2.7倍の拠出が可能になります。
加入年齢70歳への延長
同じく12月から、iDeCoの加入可能年齢が65歳未満→70歳未満に拡大されます。新たに「第5号加入者」の区分が設けられ、掛金上限は月額62,000円です。
ただし条件があります。
- iDeCoの加入者・運用指図者であった者、または私的年金資産を移換できる者
- 老齢基礎年金およびiDeCoの老齢給付金をまだ受給していないこと
60代後半でも働いていれば入れるんですか?
働いて厚生年金に加入していることは条件ではありません。ポイントは「老齢基礎年金を受給していない」ことです。繰上げ受給をしていなければ、65歳時点でiDeCoを継続し、70歳未満まで拠出できます。ただし繰上げ受給を選択済みの方は対象外です。
節税シミュレーション — 改正後の効果
節税シミュレーション
iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象です。上限拡大により節税額も大きく変わります。
企業年金なしの会社員(月23,000円→62,000円)
| 年収 | 現行の年間節税額 | 改正後の年間節税額 | 増加額 |
|---|---|---|---|
| 400万円 | 約4.1万円 | 約11.2万円 | +7.1万円 |
| 500万円 | 約5.5万円 | 約14.9万円 | +9.4万円 |
| 700万円 | 約8.3万円 | 約22.3万円 | +14.0万円 |
| 1,000万円 | 約9.4万円 | 約25.2万円 | +15.8万円 |
所得税+住民税の概算。扶養控除・社会保険料控除等により実際の金額は変動します。住民税は一律10%、所得税は各年収帯の適用税率で計算。
年収500万円で月62,000円をフル拠出した場合、年間約14.9万円の節税。20年間の累計では約298万円の税金が戻ってくる計算です。運用益がゼロだったとしても、所得控除だけで確実に得をする「確定リターン」がiDeCoの強みです。
NISAとの使い分け — 改正後のバランス
NISAとiDeCoの資金配分
掛金上限の拡大に伴い、NISAとの資金配分を再考する場面が増えます。
- iDeCoを優先すべきケース
- 年収500万円以上で節税効果が大きい
- 60歳まで確実に引き出さない覚悟がある
- 退職金が少なく退職所得控除を使い切れる
- 会社のDC商品ラインナップが充実している
- NISAを優先すべきケース
- 近い将来に住宅購入・教育費など大きな支出がある
- 手元の流動性を確保したい
- 退職金が多く退職所得控除を超える可能性がある
- 40代後半以降でiDeCoの受取時課税が不利になる場合
理想は両方を最大限活用することです。まずiDeCoで所得控除のメリットを確保し、残りをNISAに回す順番が税制上は最も効率的です。ただし、iDeCoは60歳まで引き出せない点を忘れずに。生活費6ヶ月分の緊急資金を確保したうえで拠出額を決めましょう。
今やるべき準備 — 改正のタイミング別
改正に向けた準備
4月まで(マッチング拡充への対応)
- 自社のDC制度を確認:マッチング拠出制度があるか、人事部に確認
- 商品ラインナップの確認:低コストのインデックスファンドがあるか
- 拠出額の試算:事業主掛金との合算で、上限までいくら拠出できるか計算
- iDeCoとの比較:手数料・商品を比較し、どちらが有利か判断
12月まで(掛金上限引き上げへの対応)
- 家計の余裕資金を把握:月62,000円のフル拠出が可能かシミュレーション
- NISAとの配分見直し:iDeCo増額分をどこから捻出するか
- 受取時の税金を試算:退職所得控除の枠と退職金の見込み額を確認
- 未加入者は口座開設:開設に1〜2ヶ月かかるため、早めに手続き
まとめ
- 2026年4月:マッチング拠出の「事業主掛金を超えない」制限が撤廃
- 2026年12月:iDeCo掛金上限が月62,000円に引き上げ(2027年1月引落分から)
- 2026年12月:iDeCo加入年齢が70歳未満に拡大(第5号加入者の新設)
- 最大の恩恵:企業年金なし会社員は月23,000円→62,000円(約2.7倍)
- 自営業者:月68,000円→75,000円(国民年金基金との合算枠)
- 節税効果:年収500万円・月6.2万円拠出で年間約14.9万円
- 注意:4月に掛金上限が上がるわけではない。時期の混同に注意
改正の恩恵を最大化するには、まず4月のマッチング拡充で自社DCを見直し、12月の上限引き上げに向けてiDeCoとの配分を計画しておくのが得策です。
よくある質問
いいえ。掛金上限の引き上げは2026年12月施行(実際の引落しは2027年1月分から)です。4月に施行されるのはマッチング拠出の上限制限の撤廃であり、掛金上限額の変更ではありません。
マッチング拠出は口座管理手数料がゼロ(会社負担)、iDeCoは月171〜600円程度の手数料がかかります。会社のDC商品に低コストファンドが揃っているならマッチング有利。運用商品を自分で選びたいならiDeCoが適しています。
加入年齢が70歳に延長されるため、50歳から始めても最大20年間の積立が可能です。月62,000円を15年間・年利5%で運用すれば約1,660万円になります。節税効果は初年度から確実に得られます。
一時金受取は退職所得控除、年金受取は公的年金等控除が適用されます。どちらも非課税枠があり、計画的に受け取れば税負担を軽減できます。受取戦略の設計は合同会社四次元でもご相談を承っています。
マッチング拠出制度がある企業の従業員は、拠出額の変更手続きが必要です。会社の人事部またはDC運営管理機関に申請してください。マッチング制度がない企業の場合、4月時点で必要な手続きはありません。