「iDeCoはどうやって受け取ればいいの?」
「一時金と年金、どっちがお得?」
iDeCoは、受け取り方によって税金が大きく変わります。
この記事では、iDeCoの3つの受け取り方と、最もお得な選び方を解説します。
iDeCoの3つの受け取り方
iDeCoは、60歳以降に以下の3つの方法で受け取れます。
| 受け取り方 | 税金の扱い | 控除 |
|---|---|---|
| 一時金 | 退職所得 | 退職所得控除 |
| 年金 | 雑所得 | 公的年金等控除 |
| 一時金+年金 | 上記の組み合わせ | 両方適用 |
一時金として受け取る場合
退職所得控除が適用される
一時金で受け取ると「退職所得」として扱われ、退職所得控除という大きな控除が受けられます。
- 加入期間20年以下:40万円 × 加入年数(最低80万円)
- 加入期間20年超:800万円 + 70万円 ×(加入年数 − 20年)
計算例
加入期間30年の場合:
800万円 + 70万円 ×(30年 − 20年)= 1,500万円
つまり、iDeCoの受取額が1,500万円以下なら、税金はゼロです。
さらに2分の1課税
退職所得控除を超えた部分も、2分の1だけが課税対象になります。
一時金だとかなり税金が優遇されるんですね!
はい。ただし、退職金がある方は注意が必要です。退職金とiDeCoの控除枠は共有されるため、両方受け取ると控除枠を超えやすくなります。
年金として受け取る場合
公的年金等控除が適用される
年金で受け取ると「雑所得」として扱われ、公的年金等控除が適用されます。
| 年齢 | 公的年金等の収入 | 控除額 |
|---|---|---|
| 65歳以上 | 110万円以下 | 全額非課税 |
| 65歳以上 | 110万円超〜330万円 | 110万円 |
| 65歳未満 | 60万円以下 | 全額非課税 |
メリット・デメリット
- 毎月安定した収入が得られる
- 公的年金と合わせて110万円以下なら非課税(65歳以上)
- 運用を続けながら受け取れる
- 受取期間中も運用リスクがある
- 公的年金と合算されるため、控除枠を超えやすい
- 手数料がかかる(月440円程度)
一時金+年金の併用
控除枠を最大限活用するため、一時金と年金を組み合わせる方法もあります。
どう組み合わせればいいんですか?
退職所得控除の枠内で一時金を受け取り、残りを年金として受け取る方法が一般的です。退職金の有無によって最適な配分が変わるので、シミュレーションが必要です。
2025年税制改正の重要な変更
5年ルール → 10年ルールに延長
iDeCoを一時金で受け取った後、退職金を受け取る場合の「間隔ルール」が変更されます。
- 現行(2025年まで):5年以上空ければ、退職金にも退職所得控除をフル適用
- 改正後(2026年以降):10年以上空けなければ、フル適用されない
影響を受ける人
60歳でiDeCoを一時金受取 → 65歳で退職金を受け取る予定の人は要注意です。
現行では5年空けばOKですが、2026年以降は10年ルールが適用され、退職金の控除が減る可能性があります。
対策
- 退職金を先に受け取る(退職金→iDeCo一時金の順は20年ルールで変更なし)
- iDeCoを年金形式で受け取る
- iDeCoを75歳まで繰り下げる
どの受け取り方がお得?
ケース別の目安
| ケース | おすすめの受け取り方 |
|---|---|
| 退職金がない or 少ない | 一時金 |
| 退職金が多い | 年金 or 併用 |
| 公的年金が少ない | 年金 |
| 公的年金が多い | 一時金 or 併用 |
一般的な目安
- iDeCo + 退職金が退職所得控除内 → 一時金
- iDeCo + 退職金が控除を超える → 併用を検討
- 公的年金が少なく年金控除に余裕がある → 年金も選択肢
受け取り開始年齢
60歳から75歳まで選べる
iDeCoは60歳から75歳の間で、受け取り開始年齢を自由に選べます。
ただし、加入期間が10年未満の場合は、受取開始年齢が段階的に引き上げられます。75歳までに受取手続きをしないと、自動的に一時金として支払われます。
繰り下げのメリット
- 運用期間が長くなり、資産が増える可能性
- 退職金との間隔を空けやすくなる
よくある質問
2026年以降は退職金を先に受け取る方が有利なケースが増えます。退職金→iDeCoの順は20年ルール(変更なし)ですが、iDeCo→退職金の順は10年ルールに延長されるためです。
金融機関によりますが、5年から20年の間で選べることが多いです。受取期間が長いほど毎月の金額は少なくなりますが、運用期間も長くなります。
一度決めた受け取り方を途中で変更することは原則できません。併用の場合、一時金部分を受け取った後に年金部分を変更することも難しいため、慎重に決めましょう。
まとめ
iDeCoの受け取り方は、退職金の有無と金額によって最適解が変わります。
- 一時金:退職所得控除 + 2分の1課税で有利
- 年金:公的年金等控除が適用
- 併用:両方の控除を活用できる
- 2026年以降:iDeCo→退職金の間隔が5年→10年ルールに
- 退職金との兼ね合いでシミュレーションが必要
受け取り方を決める際は、退職金の見込み額を確認し、税理士やFPに相談することをおすすめします。
※本記事は情報提供を目的としており、個別の税務アドバイスを提供するものではありません。詳細は税理士等の専門家にご相談ください。