「銀行にお金を預けておけば安心」——そう思っていませんか?
インフレ(物価上昇)が続く時代、預金だけでは資産の実質価値が目減りしてしまいます。この記事では、インフレが資産に与える影響と、インフレに負けないための投資戦略を解説します。
インフレとは
インフレ(インフレーション)とは、モノやサービスの価格が継続的に上昇する現象です。同じ金額で買えるものが少なくなる、つまり「お金の価値が下がる」ことを意味します。
| 年 | インフレ率(消費者物価指数) |
|---|---|
| 2021年 | -0.2% |
| 2022年 | 2.5% |
| 2023年 | 3.2% |
| 2024年 | 2.7%(見込み) |
日本は長らくデフレ(物価下落)が続いていましたが、2022年以降は年2〜3%のインフレが定着しつつあります。
預金だけでは資産が目減りする理由
預金金利とインフレ率の差
2025年現在、大手銀行の普通預金金利は年0.1%程度。一方、インフレ率は年2〜3%です。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 預金金利 | 約0.1% |
| インフレ率 | 約2〜3% |
| 実質リターン | -2〜3% |
つまり、預金しているだけで毎年2〜3%ずつ、お金の実質価値が減っていることになります。
具体的なシミュレーション
100万円を20年間、預金とインフレ率2%の環境で比較してみましょう。
| 項目 | 20年後の金額 | 20年後の実質価値 |
|---|---|---|
| 預金(金利0.1%) | 約102万円 | 約69万円 |
| 投資(年利5%) | 約265万円 | 約179万円 |
預金しているのに実質価値が減るってことですか?
その通りです。名目上は100万円のまま(または少し増える)ですが、同じ100万円で買えるものが減っているのです。20年後に同じ商品が120万円になっていれば、今の100万円では買えなくなります。
インフレに強い資産
インフレに負けないためには、物価上昇に連動して価値が上がる資産を持つことが重要です。
1. 株式
株式はインフレに最も強い資産の一つです。
- 企業が値上げすれば売上・利益が増加
- 株価も物価上昇に連動して上昇傾向
- 配当金も増配される可能性
- 短期的には価格変動リスクがある
- 価格転嫁できない企業は業績悪化も
全世界株式や米国株式のインデックスファンドに長期投資すれば、インフレ率を上回るリターンが期待できます。インデックス投資は初心者にもおすすめです。
2. 不動産
不動産もインフレに強い資産です。
- 家賃収入がインフレに連動して上昇
- 物件価格自体も上昇傾向
- 実物資産としての安心感
- まとまった資金が必要
- 流動性が低い(すぐに売れない)
- 管理の手間がかかる
少額から始めたいなら、J-REIT(不動産投資信託)がおすすめです。
3. 金(ゴールド)
金は「有事の資産」として知られ、インフレ時にも価値を維持しやすいです。
- 実物資産として価値が認められている
- 株式と異なる値動きで分散効果
- 世界共通で換金可能
- 配当・利息がない
- 保管コストがかかる場合も
4. 外貨資産
円安が進む局面では、外貨建て資産がインフレヘッジになります。
| 資産 | 特徴 |
|---|---|
| 米国株・ETF | ドル建てで円安メリット |
| 外貨預金 | シンプルだが金利は低め |
| 外貨建て債券 | 利息収入+為替差益の可能性 |
インフレに弱い資産
逆に、インフレ時に価値が目減りしやすい資産もあります。
| 資産 | インフレに弱い理由 |
|---|---|
| 現金・預金 | 金利が物価上昇率を下回る |
| 国内債券 | 利回りが低い |
| 貯蓄型保険 | 実質利回りがマイナスになりやすい |
| タンス預金 | まったく増えない |
「安全」と思われがちな資産ほど、インフレ時には価値が目減りするリスクがあります。
インフレ対策の具体的な方法
1. 新NISAでインデックス投資を始める
最も手軽で効果的なインフレ対策は、新NISAでインデックスファンドに積立投資することです。
| おすすめファンド | 投資対象 | 期待リターン |
|---|---|---|
| eMAXIS Slim 全世界株式 | 全世界の株式 | 年5〜7%程度 |
| eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) | 米国株式 | 年6〜8%程度 |
新NISAなら運用益が非課税なので、インフレ対策と節税が同時にできます。
2. 資産を分散する
株式だけでなく、複数の資産クラスに分散することで、リスクを抑えながらインフレに備えられます。
| 資産クラス | 配分例 |
|---|---|
| 株式(国内・海外) | 60〜70% |
| 債券 | 10〜20% |
| 不動産(REIT) | 10% |
| 金(ゴールド) | 5〜10% |
3. 生活防衛資金は預金で持つ
すべてを投資に回すのは危険です。生活費の6ヶ月〜1年分は預金で確保し、それ以外を投資に回しましょう。
インフレ対策は重要ですが、緊急時の備えも必要です。「生活防衛資金」と「投資資金」を分けて管理しましょう。
インフレ時代の心構え
「貯金だけで安心」は過去の話
日本は30年近くデフレが続いたため、「預金しておけば安心」という意識が根強いです。しかし、インフレ時代にはこの常識が通用しません。
長期投資でインフレに勝つ
株式投資は短期的には値動きがありますが、長期的にはインフレ率を上回るリターンを期待できます。15年以上の長期投資なら、過去のデータでは元本割れの確率は非常に低いです。
無理のない範囲で始める
いきなり大金を投資する必要はありません。毎月1万円の積立から始めて、慣れてきたら金額を増やしていきましょう。
まとめ
インフレと投資について、ポイントを整理します。
- 預金金利(約0.1%)<インフレ率(約2〜3%)で実質価値が目減り
- インフレに強い資産:株式、不動産、金、外貨
- インフレに弱い資産:現金、預金、国内債券、貯蓄型保険
- 最も手軽な対策は新NISAでインデックス投資
- 資産を分散してリスクを抑える
- 生活防衛資金は預金で確保しつつ、余裕資金で投資
「貯金だけで安心」の時代は終わりました。インフレに負けない資産形成を始めましょう。
よくある質問
短期的には投資の方が価格変動リスクがあります。しかし、インフレ下では預金も「実質価値が目減りする」というリスクがあります。長期投資でリスクを分散し、インフレに負けない資産形成を目指しましょう。
まずは新NISAで全世界株式や米国株式のインデックスファンドに積立投資を始めるのがおすすめです。月1万円からでも始められ、インフレ率を上回るリターンが期待できます。
金利がインフレ率を上回れば勝てますが、日本では当面その見込みは薄いです。仮に金利が1%に上がっても、インフレ率2〜3%なら実質マイナスです。預金だけでインフレに勝つのは難しいのが現実です。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。