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積立投資の出口戦略|取り崩し方は定額・定率どっちがいい?4%ルールも解説
ポートフォリオ

積立投資の出口戦略|取り崩し方は定額・定率どっちがいい?4%ルールも解説

2025-12-16
2025-12-16 更新

積立投資で貯めた資産、どう取り崩す?定額・定率の違い、4%ルールの根拠と注意点、日本では何%が安全か解説します。

インデックス投資新NISAでコツコツ資産を積み上げてきた方、次に考えるべきは「どう取り崩すか」という出口戦略です。

「いつから」「いくら」「どのように」取り崩すかで、資産の持続期間が大きく変わります。この記事では、取り崩し方の選択肢と、話題の「4%ルール」について解説します。

出口戦略とは

出口戦略とは、積み立てた資産をどのように取り崩して使っていくかの計画です。「資産形成」が入口なら、「資産取り崩し」は出口。どちらも同じくらい重要です。

読者
読者

積み立てることばかり考えていて、取り崩しのことは全然考えていませんでした。

青山(独立系FP)
青山(独立系FP)

多くの方がそうです。しかし、せっかく積み上げた資産も、取り崩し方を間違えると予想より早く底をついてしまいます。「増やす」と「使う」はセットで考えましょう。

取り崩し方は2種類

取り崩し方には大きく分けて定額定率の2種類があります。

定額取り崩し

毎月(または毎年)、決まった金額を取り崩す方法です。

例:3,000万円の資産から毎月10万円ずつ取り崩す

メリット
  • 生活費の計画が立てやすい
  • 毎月の収入が一定で安心感がある
  • 計算がシンプル
デメリット
  • 相場下落時も同額を売却するため、資産の減りが早くなりやすい
  • 長生きリスク(資産が尽きる)に弱い

定率取り崩し

毎年、資産残高の一定割合を取り崩す方法です。

例:3,000万円の4% = 120万円を1年目に取り崩し、2年目は残高の4%を取り崩す

メリット
  • 資産が長持ちしやすい
  • 相場下落時は取り崩し額も減るため、安値売りを避けられる
デメリット
  • 毎年の収入が変動する
  • 生活費の計画が立てにくい
  • 相場好調時は必要以上に取り崩してしまうことも
青山
青山

資産を長持ちさせたいなら定率生活の安定を優先するなら定額が向いています。両者を組み合わせる方法もあります。

4%ルールとは

4%ルールとは、毎年資産の4%を取り崩しても、30年以上は資産が枯渇しないという理論です。1998年にアメリカのトリニティ大学の研究チームが発表しました。

4%ルールの根拠

研究では、1926年〜1995年の70年間のデータを使い、株式50%・債券50%のポートフォリオで年4%ずつ取り崩した場合、30年後に資産が残っている確率は96%という結果が出ています。

4%の計算方法

4%という数字は、以下の計算から導き出されています。

S&P500の平均リターン(約7%)− 米国のインフレ率(約3%)= 4%
読者
読者

日本でも4%で大丈夫なんですか?

青山
青山

日本のインフレ率は米国より低いため、理論上は5〜6%でも成り立つという見方もあります。ただし、保守的に見て3〜3.5%が安全という専門家もいます。

4%ルールの2つのパターン

4%ルールには、実は2つの解釈があります。

パターン 計算方法 特徴
定額型 引退時の資産 × 4% を毎年取り崩し 取り崩し額が固定、資産変動の影響を受けない
定率型 毎年の資産残高 × 4% を取り崩し 取り崩し額が変動、資産が長持ちしやすい

具体例:5,000万円の場合

定額型(引退時資産ベース)

  • 毎年の取り崩し額:5,000万円 × 4% = 200万円(固定)
  • 相場が下落しても200万円を取り崩す

定率型(毎年の資産残高ベース)

  • 1年目:5,000万円 × 4% = 200万円
  • 2年目:仮に4,800万円に減っていたら → 192万円
  • 資産が減ると取り崩し額も減る
ポイント

FIREを目指す人には定率型、年金のような安定収入が欲しい人には定額型が向いています。

日本でFIREするには資産いくら必要?

「4%ルールで計算するとFIREに必要な資産は年間支出の25倍」とよく言われますが、これは米国基準です。日本では公的年金や税金を考慮した計算が必要です。

年間支出から必要資産額を計算

年間生活費 4%ルール(25倍) 日本版3.5%ルール(約29倍)
240万円(月20万円) 6,000万円 6,860万円
300万円(月25万円) 7,500万円 8,570万円
360万円(月30万円) 9,000万円 1億290万円
420万円(月35万円) 1億500万円 1億2,000万円

公的年金を考慮した計算

実は、65歳から公的年金がもらえることを考えると、必要資産額は大きく変わります。

読者
読者

年金があるなら、そこまで貯めなくてもいいってことですか?

青山
青山

その通りです。50歳でFIREして65歳まで自力で生活し、65歳以降は年金でカバーという戦略なら、必要資産額は大幅に減ります。

具体的なシミュレーション(50歳FIRE、月25万円生活費)

項目 金額 備考
50〜64歳の生活費 4,500万円 月25万円×15年
65歳以降の不足分(年金との差額) 1,500万円 月5万円×25年(90歳まで)
必要資産額合計 6,000万円 運用益なしの最悪ケース
ポイント

65歳から月20万円の年金を受け取れるなら、50歳FIREに必要な資産は6,000万円程度。4%ルールで単純計算した7,500万円より1,500万円少なくて済む計算です。

年金見込み額の確認方法

日本年金機構の「ねんきんネット」で将来の年金見込み額を確認できます。会社員なら厚生年金も含めて、具体的な金額がわかります。

年金受給前後の取り崩し戦略

FIREや早期退職では、年金受給開始前受給開始後で戦略を分けることが重要です。

年金受給前(〜64歳)

  • 取り崩し額が大きい時期
  • 株式比率をある程度維持して運用益を確保
  • iDeCoは60歳まで引き出せないので注意
  • 医療費・国民健康保険料の負担増に備える

年金受給後(65歳〜)

  • 年金で基礎生活費をカバー
  • 不足分のみ取り崩し
  • 徐々に債券比率を高めてリスクを下げる
  • 介護費用の備えも視野に
青山
青山

年金受給開始を65歳から70歳に繰り下げると、年金額が42%増えます。その分、65〜69歳の生活費を資産から取り崩す必要がありますが、長生きリスクへの備えとしては有効な選択肢です。

4%ルールの注意点

4%ルールは万能ではありません。以下の点に注意が必要です。

1. 過去のデータに基づく理論

4%ルールは1926〜1995年のデータが根拠です。将来も同じリターンが得られる保証はありません。

2. 大暴落への耐性

リーマンショックのような大きな下落が起きた直後から取り崩しを始めると、4%でも資産が持たない可能性があります。

保守的な見方

10年に一度の大暴落を想定し、年利7%のリターンを前提とすると、年3%が安全ラインという計算もあります。

3. 為替リスク(日本の場合)

日本から米国株に投資している場合、円高になると円換算の資産が目減りします。為替変動も考慮に入れる必要があります。

出口戦略を考えるタイミング

出口戦略は、引退直前に考えるのではなく、3つのフェーズで段階的に考えましょう。

フェーズ 時期 やること
資産形成期 就職〜退職10年前 積み立てに集中、出口戦略はぼんやり意識
運用継続期 退職10年前〜退職 ポートフォリオを保守的に調整、具体的な取り崩し計画を立てる
取り崩し期 退職後 計画に沿って取り崩し開始
青山
青山

退職10年前くらいから、株式の比率を下げて債券を増やすなど、リスクを徐々に下げていくのが一般的です。

取り崩しシミュレーション

5,000万円を年4%で取り崩した場合のシミュレーション(年利5%で運用継続):

年数 年初資産 取り崩し額(4%) 運用益(5%) 年末資産
1年目 5,000万円 200万円 240万円 5,040万円
5年目 5,193万円 208万円 249万円 5,234万円
10年目 5,515万円 221万円 265万円 5,559万円
20年目 6,205万円 248万円 298万円 6,255万円
30年目 6,981万円 279万円 335万円 7,037万円

運用しながら取り崩すと、資産が減るどころか増える可能性もあります。ただし、これは運用がうまくいった場合の話です。

まとめ

積立投資の出口戦略について、ポイントを整理します。

  • 取り崩し方は定額定率の2種類
  • 4%ルール:年4%取り崩しなら30年は資産が持つ理論
  • 日本では保守的に年3〜3.5%が安全との見方も
  • 退職10年前くらいから出口戦略を具体的に考え始めよう
  • 運用を続けながら取り崩せば、資産は長持ちする

せっかく積み上げた資産です。取り崩し方も計画的に考えましょう。

よくある質問

Q
Q1. 4%ルールとは何ですか?
A

毎年資産の4%を取り崩しても30年以上は資産が枯渇しないという理論です。米国トリニティ大学の研究が根拠で、株式50%・債券50%のポートフォリオを前提としています。

Q
Q2. 定額取り崩しと定率取り崩し、どちらがおすすめですか?
A

資産を長持ちさせたいなら定率、生活費を安定させたいなら定額が向いています。両者を組み合わせ、最低限の定額+余裕分を定率で取り崩す方法もあります。

Q
Q3. 日本でも4%ルールは使えますか?
A

日本のインフレ率は米国より低いため、理論上は4%以上でも成り立つ可能性があります。ただし、為替リスクや将来の不確実性を考慮し、3〜3.5%が安全という見方もあります。

※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。