「親が持っていた株や投資信託、相続したらどうすればいいの?」——投資が普及するにつれ、こうした相談が増えています。
株式や投資信託の相続には、特有の手続きと注意点があります。特にNISA口座は相続人のNISAに移管できないなど、知らないと損するルールも。
この記事では、投資商品の相続手続きと相続税の扱いを解説します。
株式・投資信託も相続税の対象
まず押さえておきたいのは、株式や投資信託も相続財産として相続税の課税対象になることです。
| 資産の種類 | 相続税 |
|---|---|
| 現金・預貯金 | 課税対象 |
| 不動産 | 課税対象 |
| 株式・投資信託 | 課税対象 |
| 生命保険金 | 一定額まで非課税 |
NISAで運用していた株は非課税じゃないんですか?
NISAの非課税は「運用益」に対してであり、相続税は別です。NISA口座の株式も、相続税の計算では他の財産と同様に課税対象になります。ただし、相続発生日までの含み益には所得税・住民税はかかりません。
NISA口座の相続で知っておくべきこと
1. 相続人のNISA口座には移管できない
NISA口座の株式・投資信託は、相続人のNISA口座に移管できません。相続後は「一般口座」または「特定口座」に移管されます。
被相続人(亡くなった方)のNISA口座で得られていた非課税メリットは、相続時点で終了します。その後の運用益は課税対象になります。
2. 取得価額は相続時の価格に
相続した株式・投資信託の取得価額は「相続時の時価」になります。これは「取得価額の引き継ぎ」と呼ばれ、将来売却した時の税金計算に影響します。
| 例 | 内容 |
|---|---|
| 被相続人の購入価格 | 100万円 |
| 相続時の時価 | 150万円 |
| 相続人の取得価額 | 150万円 |
| 将来200万円で売却した場合の利益 | 200万円 - 150万円 = 50万円 |
つまり、相続時点までの含み益(50万円)には課税されず、相続後に増えた分(50万円)だけが課税対象になります。これは相続人にとって有利なルールです。
3. NISAの非課税枠は消費されない
相続した株式を自分の口座に移管しても、相続人自身のNISA枠は消費されません。自分のNISA投資は別途行えます。
相続税評価額の計算方法
上場株式の評価
上場株式の相続税評価額は、以下4つの金額のうち最も低い金額で評価します。
| 評価方法 | 内容 |
|---|---|
| ① 相続開始日の終値 | 亡くなった日の終値 |
| ② 当月の月平均 | 相続開始月の終値の平均 |
| ③ 前月の月平均 | 相続開始月の前月の終値の平均 |
| ④ 前々月の月平均 | 相続開始月の前々月の終値の平均 |
- 相続日:2025年3月15日
- 3月15日の終値:2,000円
- 3月の月平均:2,100円
- 2月の月平均:1,900円 ← 最も低い
- 1月の月平均:2,050円
この場合、1,900円で評価できます。
投資信託の評価
投資信託の相続税評価額は以下の計算式で求めます。
評価額 = 1口あたりの基準価額 × 口数 − 源泉徴収税額 − 信託財産留保額・解約手数料
株式と同様に、相続開始日・当月・前月・前々月の中から最も低い基準価額を選べます。
相続手続きの流れ
株式・投資信託の相続手続きは、以下の流れで進めます。
被相続人が口座を持っていた証券会社に、死亡の事実を連絡します。口座は一時凍結され、売買ができなくなります。
相続税申告のため、相続開始日時点の残高証明書を請求します。発行まで約2週間かかります。
相続人全員で、株式・投資信託を誰が相続するか話し合います。遺言書があれば、それに従います。
証券会社に以下の書類を提出します。
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
- 相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書
- 遺産分割協議書(または遺言書)
- 相続届出書(証券会社所定)
書類提出から約1ヶ月で名義変更が完了し、相続人の口座に株式・投資信託が移管されます。
相続後の選択肢
名義変更が完了したら、以下の選択肢があります。
1. そのまま保有する
相続した株式・投資信託をそのまま持ち続ける選択です。配当金や分配金を受け取りながら、長期保有できます。
2. 売却して現金化する
相続税の納税資金が必要な場合や、投資方針に合わない場合は売却します。
相続税を納税した人が、相続開始から3年10ヶ月以内に相続財産を売却すると、「取得費加算の特例」が使えます。相続税の一部を取得費に加算でき、売却時の税金を減らせます。
3. 自分のポートフォリオに組み込む
相続した銘柄が自分の投資方針に合っていれば、そのまま資産運用に活用できます。
相続対策としての投資
生前に行える相続対策も押さえておきましょう。
1. 生前贈与
毎年110万円までの贈与は非課税です。株式や投資信託を少しずつ贈与することで、相続財産を減らせます。
2. 終身保険の活用
死亡保険金には「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠があります。現金を残すより、終身保険で残す方が相続税対策になる場合があります。
3. NISA口座の活用
NISAで運用すれば、相続発生時までの運用益は非課税です。相続人にとっても、含み益が大きいほど取得価額が高くなり、将来の税負担が軽くなります。
知っておきたい注意点
1. 証券口座は口座ごとに手続きが必要
複数の証券会社に口座がある場合、それぞれの証券会社で手続きが必要です。
2. 外国株式は手続きが複雑
米国株などの外国株式は、現地の法律も関わるため、手続きがより複雑になることがあります。
3. 相続税申告の期限は10ヶ月
相続税の申告・納付期限は、相続開始から10ヶ月以内です。株式評価や手続きに時間がかかるため、早めに動きましょう。
まとめ
株式・投資信託の相続について、ポイントを整理します。
- 株式・投資信託も相続税の課税対象
- NISA口座は相続人のNISAに移管できない
- 取得価額は相続時の時価に引き継がれる
- 評価額は4つの時点から最も低い金額を選べる
- 手続きは約1〜2ヶ月かかる
- 取得費加算の特例で売却時の税金を減らせる場合も
万が一に備えて、投資資産の一覧を家族と共有しておくと安心です。
よくある質問
いいえ。NISA口座の非課税メリットは、口座名義人が亡くなった時点で終了します。相続後は特定口座または一般口座に移管され、その後の運用益は課税対象になります。
相続税評価額は低くなりますが、将来売却した時の利益が大きくなる可能性があります。一概に損とは言えません。むしろ相続税の負担は軽くなります。
「証券保管振替機構(ほふり)」に問い合わせると、被相続人名義の株式・投資信託の口座を調べられます。手数料はかかりますが、財産の把握に役立ちます。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。