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損切りできない心理学|行動経済学から学ぶ投資の罠
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損切りできない心理学|行動経済学から学ぶ投資の罠

2025-12-17
2025-12-17 更新

なぜ損切りできないのか?行動経済学で解明された「損失回避」の心理と、投資で陥りやすい心理的な罠、その対策を解説します。

「損切りしなきゃと分かっているのに、できない...」

投資で多くの人が経験するこの心理、実は行動経済学で解明されている「心理的な罠」です。この記事では、投資で陥りやすい心理バイアスと、その対策を解説します。

なぜ損切りできないのか

損失回避バイアス

プロスペクト理論

ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンの研究によると、損失の痛みは、同額の利益の喜びの約2倍感じます。これが「損失回避バイアス」です。

状況 心理的インパクト
10万円の利益 喜び:1
10万円の損失 痛み:約2
西山(資産運用アドバイザー)
西山(資産運用アドバイザー)

だから私たちは、損失を確定させることを避けようとします。「持ち続ければいつか戻るかも」と考え、損切りを先延ばしにしてしまうのです。

サンクコスト効果

読者
読者

「もう50万円も投資したから、今さら売れない」って思ってしまいます...

西山
西山

それはサンクコスト効果(埋没費用効果)です。過去に投じたお金や時間に囚われて、合理的な判断ができなくなる心理です。過去のコストは戻ってきません。大切なのは「今から」どうするかです。

投資で陥りやすい心理バイアス

バイアス1:確証バイアス

確証バイアスとは
自分の信じたいことを裏付ける情報ばかり集める 「この株は上がる」と思うと、上がる理由ばかり探す

バイアス2:アンカリング効果

アンカリング効果とは
最初に見た数字に引きずられる 買値の1,000円が「基準」になり、800円は「安い」と感じる
危険な思考

「買値まで戻ったら売ろう」という考えは危険です。買値は市場にとって何の意味もありません。今の株価が適正かどうかで判断すべきです。

バイアス3:後知恵バイアス

後知恵バイアスとは
結果を知った後に「やっぱりそうだと思った」と考える 暴落後に「あの時売っておけばよかった」

バイアス4:過信バイアス

過信バイアスとは
自分の能力や判断を過大評価する 「自分は市場より賢い」「この株は絶対上がる」

バイアス5:ハーディング(群集心理)

ハーディングとは
他人と同じ行動をとりたがる 「みんな買っているから自分も買う」

心理バイアスへの対策

対策1:事前にルールを決める

手順 投資ルールの作り方
1
損切りラインを決める

「購入価格から-20%で売却」など、事前に数字で決めておきます。

2
利確ラインを決める

「目標利回り達成で一部売却」など、利益確定のルールも決めます。

3
紙に書いて貼っておく

感情的になった時に見返せるよう、ルールを目に見える場所に貼ります。

対策2:「今から投資するなら?」と考える

西山
西山

保有株を見る時、「もし今、現金を持っていたら、この株を買うか?」と自問してください。答えがNoなら、売却を検討すべきです。過去の買値は関係ありません。

対策3:機械的に運用する

方法 内容
インデックス投資 銘柄選びの判断を排除
積立投資 タイミングの判断を排除
リバランス 感情を排除した配分調整

対策4:投資日記をつける

記録する内容 目的
購入理由 後で振り返るため
その時の感情 感情パターンを把握
結果と反省 学びを蓄積

対策5:情報を遮断する

情報遮断のメリット
  • 短期的なノイズに惑わされない
  • 感情的な売買を防げる
  • 長期投資に集中できる
西山
西山

毎日株価をチェックする必要はありません。月1回程度の確認で十分です。見すぎると感情的になり、余計な売買をしてしまいます。

典型的な失敗パターン

パターン1:天井で買い、底で売る

時期 行動 心理
株価上昇中 買う 「まだ上がる!乗り遅れたくない」
株価下落中 持ち続ける 「いつか戻る」
大暴落 売る 「もう耐えられない」

パターン2:利小損大

状況 行動 結果
少し利益が出た すぐ利確 小さな利益
損失が出た 塩漬け 大きな損失
利小損大の罠

損失回避バイアスにより、利益は早く確定させたい(失いたくない)、損失は確定させたくない(認めたくない)と思ってしまいます。結果、「利益は小さく、損失は大きく」なりがちです。

投資に向いている心理状態

長期投資で心理負担を減らす

投資スタイル 心理的負担
デイトレード 非常に高い
スイングトレード 高い
長期投資(インデックス) 低い
西山
西山

長期のインデックス投資は、心理的負担が最も少ない投資方法です。短期の値動きを気にせず、「持ち続ける」だけで良いからです。

よくある質問

Q
Q1. 損切りは本当に必要ですか?
A

個別株投資では必要な場合が多いです。ただし、インデックス投資の場合は「損切り」という概念自体が不要です。市場全体に投資しているので、「持ち続ける」が基本戦略になります。

Q
Q2. どうしても感情的になってしまいます
A

それが人間です。完全に感情を排除することは不可能なので、「感情的になりにくい仕組み」を作ることが大切です。積立投資、インデックス投資、情報遮断などが有効です。

Q
Q3. プロのトレーダーは感情的にならないのですか?
A

プロも感情はあります。ただし、厳格なルールと、感情を制御するトレーニングを積んでいます。個人投資家がプロと同じことをする必要はなく、そもそも感情的な判断が必要ない投資方法を選ぶのが賢明です。

まとめ

投資の心理学についてまとめます。

  • 損失回避バイアス:損失の痛みは利益の喜びの2倍
  • サンクコスト効果:過去の投資額に囚われる
  • 確証バイアス:信じたい情報ばかり集める
  • 対策は事前にルールを決めること
  • 「今から投資するなら?」と自問する
  • 長期インデックス投資で心理負担を減らす

自分の心理を理解し、バイアスを味方につけましょう。

※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。

Tags

心理学 行動経済学 損失回避 損切り メンタル
西山 この記事の筆者

西山

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銀行の資産運用部門を経て独立。投資信託・積立投資が専門。

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