「レバナス」「レバレッジETF」——SNSで話題のこれらの商品、仕組みを理解せずに手を出すと大損することがあります。
2022年のハイテク株下落では、レバナス投資家が大きな損失を被りました。この記事では、レバレッジ投資信託の仕組みとリスクを解説します。
レバレッジ投資信託とは
レバレッジ投資信託とは、指数の日々の値動きを2倍や3倍に増幅させる投資信託です。
| 種類 | 例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 2倍レバレッジ | レバナス、楽天レバレッジNASDAQ-100 | 日々の値動きを2倍に |
| 3倍レバレッジ | TQQQ(米国ETF) | 日々の値動きを3倍に |
| インバース | 日経ダブルインバース | 日々の値動きを逆方向に2倍 |
「レバナス」とは
「レバナス」とは、NASDAQ-100指数の2倍の値動きを目指す投資信託の愛称です。正式名称は「iFreeレバレッジ NASDAQ100」などがあります。
レバレッジの基本的な仕組み
上昇相場の場合
指数が10%上昇すると、2倍レバレッジは約20%上昇します。
| 日 | 指数 | 2倍レバレッジ |
|---|---|---|
| 初日 | 10,000 | 10,000 |
| 10%上昇 | 11,000 | 12,000 |
| さらに10%上昇 | 12,100 | 14,400 |
下落相場の場合
指数が10%下落すると、2倍レバレッジは約20%下落します。
| 日 | 指数 | 2倍レバレッジ |
|---|---|---|
| 初日 | 10,000 | 10,000 |
| 10%下落 | 9,000 | 8,000 |
| さらに10%下落 | 8,100 | 6,400 |
上昇相場では大きく儲かりますが、下落相場では損失も2倍になります。指数が20%下落すると、2倍レバレッジは約40%の損失です。
レバレッジ投信の最大の罠:減価
「減価」とは
レバレッジ投資信託には「減価」という現象があります。これは、上下を繰り返す相場では、長期的に元本が減っていく現象です。
具体例:横ばい相場での減価
指数が「+10%」「-10%」を繰り返す場合を考えます。
| 日 | 指数 | 通常ファンド | 2倍レバレッジ |
|---|---|---|---|
| 初日 | 100 | 100 | 100 |
| +10% | 110 | 110 | 120 |
| -10%(110の10%=11) | 99 | 99 | 96 |
| +10% | 108.9 | 108.9 | 115.2 |
| -10% | 98.01 | 98.01 | 92.16 |
指数はほぼ横ばい(98.01)なのに、2倍レバレッジは92.16まで減少しています。これが「減価」です。上下を繰り返すだけで、レバレッジ商品は価値が目減りしていきます。
なぜ減価が起こるのか
レバレッジ投資信託は「日々の」値動きを2倍にする商品であり、長期間の値動きを2倍にするわけではありません。
例えば、指数が100→110→99と動くと、日々の変動は+10%、-9.09%です。2倍レバレッジは+20%、-18.18%となり、100→120→98.18となります。毎日の計算がリセットされるため、長期では減価が発生します。
2022年の「レバナス悲劇」
何が起きたか
2021年末から2022年にかけて、NASDAQ-100指数は大きく下落しました。
| 時期 | NASDAQ-100 | レバナス |
|---|---|---|
| 2021年11月(高値) | 約16,000 | 約40,000円 |
| 2022年10月(安値) | 約10,500 | 約15,000円 |
| 下落率 | −34% | −62% |
指数は34%しか下がってないのに、レバナスは62%も下がったんですか?
はい。レバレッジの減価効果で、指数の下落率の約2倍以上下落しました。2021年末に「レバナス積立」を始めた人の多くが、大きな含み損を抱えました。
レバレッジ投信のメリット・デメリット
- 上昇相場では大きく儲かる
- 短期トレードには使える可能性
- 少額で大きなリターンを狙える
- 下落相場では大損
- 減価で長期保有に向かない
- 信託報酬が高い(年0.5〜1%程度)
- 精神的負担が大きい
- 新NISAでは対象外
初心者におすすめしない理由
理由1:長期投資に向かない
レバレッジ投信は減価の影響で、長期保有するほど不利になります。「積立投資でコツコツ」という戦略とは相性が悪いです。
理由2:精神的に持たない
2倍レバレッジで20%の含み損は、通常ファンドの40%下落に相当する精神的ダメージがあります。暴落時に狼狽売りしてしまう人が多いです。
理由3:新NISAで使えない
レバレッジ投資信託は新NISAの対象外です。利益に課税されるため、税制面でも不利になります。
理由4:通常インデックスで十分
長期投資なら、通常のインデックスファンド(全世界株式、S&P500)で年5〜7%のリターンが期待できます。レバレッジをかける必要はありません。
レバレッジ投信が向いている人
ほとんどの人にはおすすめしませんが、以下のような人なら検討の余地があります。
| 条件 | 理由 |
|---|---|
| 短期トレードが得意 | 減価の影響を受けにくい |
| 相場観に自信がある | 上昇トレンドを見極められる |
| 失っても困らない余裕資金 | 最悪ゼロになっても良い覚悟 |
| リスクを完全に理解している | 仕組みを説明できる |
代わりにおすすめのファンド
長期の資産形成には、通常のインデックスファンドがおすすめです。
| ファンド名 | 信託報酬 | リスク |
|---|---|---|
| eMAXIS Slim 全世界株式 | 0.05775% | 中 |
| eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) | 0.09372% | 中 |
| eMAXIS Slim NASDAQ-100 | 0.2035% | やや高 |
NASDAQに投資したいなら、レバレッジなしのNASDAQ-100インデックスがおすすめです。レバナスと違い、長期保有でも減価の心配がありません。
まとめ
レバレッジ投資信託のリスクをまとめます。
- レバレッジ投信は日々の値動きを2倍や3倍にする商品
- 下落相場では損失も2倍以上
- 「減価」により横ばい相場でも価値が減る
- 長期投資に向かない
- 新NISAでは対象外
- 初心者には通常のインデックスファンドがおすすめ
「大きく儲けたい」という欲に負けず、シンプルな長期投資を心がけましょう。
よくある質問
上昇相場が続けば利益が出ますが、減価のリスクは常にあります。2022年のように大きく下落すると、回復に非常に長い時間がかかります。長期積立には通常のインデックスファンドをおすすめします。
はい、仕組みは同じです。日々の値動きを3倍にするため、減価のリスクは2倍レバレッジ以上に大きくなります。短期トレード向けの商品であり、長期保有には向きません。
インバースETFも減価のリスクがあります。「相場が下がると儲かる」と思いがちですが、長期で持つと価値が減っていきます。相場の下落を予測してもタイミングが難しく、初心者にはおすすめしません。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。