「ボーナスが入ったけど、住宅ローンの繰り上げ返済に回すべき?それとも新NISAで投資すべき?」
この悩みを抱える方は多いのではないでしょうか。2025年は住宅ローン金利が上昇傾向にある一方、投資環境も魅力的。この記事では、両者を比較する判断基準を解説します。
繰り上げ返済と投資、基本の考え方
結論から言うと、判断基準はシンプルです。
住宅ローン金利 < 投資の期待リターン → 投資を優先
住宅ローン金利 > 投資の期待リターン → 繰り上げ返済を優先
でも、投資のリターンは確定じゃないですよね?
その通りです。繰り上げ返済は「確実に」利息を減らせますが、投資は「期待」リターンでしかありません。リスク許容度によって判断は変わります。
2025年の金利環境
住宅ローン金利
2025年現在、住宅ローンの変動金利は上昇傾向にあります。
| タイプ | 金利水準(目安) |
|---|---|
| 変動金利 | 0.3〜0.8%程度 |
| 固定金利(10年) | 1.0〜1.5%程度 |
| 固定金利(35年) | 1.5〜2.0%程度 |
住信SBIなどの一部金融機関では、基準金利の引き上げが行われています。
投資の期待リターン
インデックス投資(全世界株式・S&P500など)の年平均リターンは、歴史的に年3〜6%程度が目安とされています。
住宅ローン金利が1%以下なら、理論上は投資の方が有利になる可能性が高いといえます。
繰り上げ返済のメリット・デメリット
- 利息を「確実に」減らせる
- 返済期間を短縮できる
- 金利上昇リスクを回避できる
- 精神的な安心感がある
- 住宅ローン控除の恩恵が減る
- 手元資金が減る(流動性低下)
- インフレ下では繰り上げ返済が不利になることも
- 一度返済したお金は引き出せない
具体的なシミュレーション
3,000万円借入(返済期間35年、金利0.6%)で、10年後に300万円を繰り上げ返済した場合:
- 利息の節約額:約44万円
- 返済期間の短縮:約3年半
金利0.6%でも、繰り上げ返済で数十万円の利息を節約できます。ただし、同じ300万円を年利4%で10年運用すれば、約144万円増える計算(税引前)になります。
投資のメリット・デメリット
- 複利効果で資産を増やせる
- インフレ対策になる
- 流動性を確保できる(いつでも売却可能)
- 新NISAなら非課税で運用可能
- 元本保証がない(損する可能性)
- 精神的なストレス(相場変動)
- 住宅ローンという「負債」が残る
投資を選んだ場合のシミュレーション
300万円を毎月1万円ずつ25年間積立投資した場合(年利2%):
- 元本:300万円
- 運用益:約88万円
- 合計:約388万円(税引前)
上記の例では、繰り上げ返済の利息節約(約44万円)より、投資のリターン(約88万円)の方が大きくなります。ただし、投資には元本割れリスクがある点を忘れずに。
住宅ローン控除との関係
繰り上げ返済を検討する際は、住宅ローン控除(住宅ローン減税)との関係も考慮が必要です。
住宅ローン控除は、年末時点のローン残高に応じて所得税・住民税が控除される制度です。繰り上げ返済でローン残高が減ると、控除額も減ります。
住宅ローン控除を受けている間は、繰り上げ返済しない方がいいですか?
一概には言えませんが、住宅ローン控除の控除率(0.7%)よりローン金利が低い場合は、急いで繰り上げ返済しなくてもよいでしょう。控除期間が終わってから検討するのも一つの方法です。
両立するアプローチ
「繰り上げ返済か投資か」の二択ではなく、両方を組み合わせる方法もあります。
例:ハイブリッド戦略
- 毎月の積立:新NISAで月3万円
- 年1回:ボーナスの一部(50万円)を繰り上げ返済
「今の安心」と「未来の成長」をどちらも取りにいく戦略です。どちらか一方に全振りするより、精神的にもバランスが取れます。
判断フローチャート
以下のフローで自分に合った選択を判断してみましょう。
Step 1: 生活防衛資金はあるか?
- No → まず生活防衛資金を確保
Step 2: 住宅ローン金利は1.5%以上か?
- Yes → 繰り上げ返済を優先検討
- No → Step 3へ
Step 3: 住宅ローン控除期間中か?
- Yes → 投資優先を検討(控除期間終了後に繰り上げ返済)
- No → Step 4へ
Step 4: リスク許容度は高いか?
- Yes → 投資優先
- No → 繰り上げ返済優先 or 両立
数字上の有利・不利だけでなく、「借金があることへの心理的なストレス」も考慮しましょう。ストレスを感じるなら、多少不利でも繰り上げ返済して精神的な安心を得る選択もアリです。
インフレと住宅ローン
長らくデフレが続いた日本では「借金は早く返すべき」が正解でした。しかし、インフレ下では状況が変わります。
インフレが進むと、お金の価値は下がる=借金の実質的な負担も軽くなるという見方ができます。つまり、低金利で借りた住宅ローンは、急いで返済しない方が得になることもあります。
インフレ率2%、住宅ローン金利0.5%なら、実質的にはお金を借りることで得をしている状態です。このような環境では、繰り上げ返済より投資の方が合理的といえます。
まとめ
住宅ローン繰り上げ返済と投資の判断基準を整理します。
- 住宅ローン金利 < 投資の期待リターンなら投資が有利
- 2025年の低金利環境(0.3〜1%)では、数字上は投資優先が合理的
- ただし、投資には元本割れリスクがある
- 住宅ローン控除期間中は繰り上げ返済を急がなくてもよい
- 精神的な安心を求めるなら繰り上げ返済もアリ
- 両立させるハイブリッド戦略もおすすめ
自分のリスク許容度と価値観に合った選択をしましょう。
よくある質問
一般的に1.5%以上なら繰り上げ返済を優先検討、1%以下なら投資を優先検討という目安があります。ただし、リスク許容度によって判断は変わります。
可能ですが、繰り上げ返済でローン残高が減ると控除額も減ります。控除率(0.7%)よりローン金利が低い場合は、控除期間終了後に繰り上げ返済を検討するのも一つの方法です。
もちろん可能です。毎月の積立は投資に、年1回のボーナスは繰り上げ返済に充てるなど、両立させる方法もあります。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。