「新NISAで年間360万円投資できるって聞いたけど、そんなに投資できない…使い切れなかった分はどうなるの?」
この疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。結論から言うと、年間投資枠は翌年に繰り越せません。ただし、焦る必要はありません。この記事で、新NISAの枠の仕組みを正しく理解しましょう。
新NISAの2つの「枠」
新NISAには2種類の枠があります。混同しやすいので、まず整理しましょう。
| 枠の種類 | 上限 | 特徴 |
|---|---|---|
| 年間投資枠 | 360万円/年 | 毎年リセット、繰り越し不可 |
| 生涯非課税保有限度額 | 1,800万円 | 累計の上限、翌年以降も使える |
年間投資枠とは
1年間(1月1日〜12月31日)に投資できる上限額です。
- つみたて投資枠:年間120万円
- 成長投資枠:年間240万円
- 合計:年間360万円
生涯非課税保有限度額とは
一生涯を通じて、非課税で保有できる資産の上限額です。
- 上限:1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)
年間投資枠は繰り越せない
今年60万円しか投資できなかったら、来年は300万円繰り越して420万円投資できますか?
残念ながらできません。年間投資枠は毎年1月1日にリセットされ、使い切れなかった分は消滅します。来年も上限は360万円のままです。
具体例
2024年:つみたて投資枠120万円のうち、60万円しか投資できなかった
- 残り60万円は繰り越せない
2025年:年間投資枠がリセット
- 投資できるのは360万円(前年の残り60万円は加算されない)
年間投資枠は「その年だけの権利」です。使い切れなくても焦る必要はありませんが、毎年リセットされることは覚えておきましょう。
生涯枠は翌年以降も使える
一方、生涯非課税保有限度額(1,800万円)は、使わなかった分が翌年以降に引き継がれます。
具体例
- 2024年:60万円投資 → 生涯枠の残り1,740万円
- 2025年:120万円投資 → 生涯枠の残り1,620万円
- …
- 生涯枠1,800万円に達するまで、何年かけてもOK
生涯枠は「一生涯の上限」なので、毎年フルに360万円投資できなくても問題ありません。自分のペースで1,800万円を目指せばOKです。
売却したら枠は復活する?
新NISAでは、保有商品を売却すると、翌年以降に非課税枠が復活します。これは旧NISAにはなかった大きなメリットです。
注意点:復活するのは「取得価額」
復活する枠は、売却時の時価ではなく取得時の価額(買った時の金額)です。
例:100万円で買った投資信託が150万円に値上がりして売却
- 売却時の時価:150万円
- 復活する非課税枠:100万円(取得価額)
枠が復活するのは売却した翌年です。同じ年には復活しません。
年間360万円を使い切る必要はない
毎年360万円投資しないともったいないですか?
そんなことはありません。大切なのは無理のない範囲で継続することです。年間360万円は「上限」であって「義務」ではありません。
現実的な投資ペースの例
| 毎月の積立額 | 年間投資額 | 生涯枠1,800万円に達する期間 |
|---|---|---|
| 1万円 | 12万円 | 150年(実質達しない) |
| 3万円 | 36万円 | 50年 |
| 5万円 | 60万円 | 30年 |
| 10万円 | 120万円 | 15年 |
| 20万円 | 240万円 | 7.5年 |
| 30万円 | 360万円 | 5年 |
多くの人は毎月3〜10万円程度の積立が現実的です。15年以上かけて1,800万円を埋めるペースでも、十分な資産形成が可能です。
年末ギリギリの投資に注意
「今年の枠を使い切ろう」と年末ギリギリに投資する場合、以下の点に注意が必要です。
約定日と受渡日の違い
投資信託の場合、注文してから実際に買付が完了するまで数日かかります。
- 注文日:注文を出した日
- 約定日:取引が成立した日
- 受渡日:実際に購入が完了する日
新NISAの「その年の投資」としてカウントされるのは「受渡日」ベースです。年末ギリギリに注文しても、受渡日が翌年になると、翌年の枠を使うことになります。
年内に枠を使い切りたい場合は、12月中旬までに注文を完了させましょう。年末年始は休業日も多いため、余裕を持った計画が必要です。
枠を使い切れない人へのアドバイス
1. 無理に使い切ろうとしない
年間360万円を使い切れなくても、生涯枠は残っています。焦って投資を増やす必要はありません。
2. 積立額を少しずつ増やす
余裕ができたら、積立額を月1万円ずつ増やすなど、無理のないペースで投資額を増やしましょう。
3. ボーナス時にスポット投資
毎月の積立に加えて、ボーナス時にまとまった金額を投資する方法もあります。楽天証券やSBI証券では「ボーナス月設定」も可能です。
4. 生活防衛資金を優先
投資枠を埋めることより、生活防衛資金(生活費の3〜6ヶ月分)を確保することの方が優先です。投資は余剰資金で行いましょう。
まとめ
新NISAの非課税枠について、ポイントを整理します。
- 年間投資枠(360万円)は翌年に繰り越せない
- 生涯非課税枠(1,800万円)は翌年以降も使える
- 売却すると翌年以降に枠が復活(取得価額ベース)
- 毎年360万円を使い切る「義務」はない
- 無理のないペースで継続することが大切
- 年末ギリギリの投資は受渡日に注意
焦らず、自分のペースで資産形成を続けましょう。
よくある質問
いいえ、繰り越せません。年間投資枠は毎年1月1日にリセットされ、使い切れなかった分は消滅します。ただし、生涯枠(1,800万円)は翌年以降も使えるので、焦る必要はありません。
はい、翌年以降に復活します。ただし、復活するのは売却時の時価ではなく「取得価額」(買った時の金額)です。同じ年には復活しない点も注意してください。
そんなことはありません。360万円は「上限」であって「義務」ではありません。毎月5万円(年60万円)のペースでも30年で1,800万円に達します。無理のない範囲で継続することが大切です。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。