IN
INVESTORS NEWS 投資や資産運用に関わる最新ニュースを毎日お届けするメディア
貯蓄型保険と投資、どっちがいい?終身保険より新NISAが有利な理由
投資信託

貯蓄型保険と投資、どっちがいい?終身保険より新NISAが有利な理由

2025-12-16
2025-12-16 更新

「保険で貯蓄」は本当にお得?終身保険・養老保険と新NISA・投資信託を比較。返戻率、利回り、手数料から正しい選び方を解説します。

「保険で貯蓄もできますよ」——保険の営業でこんな説明を受けたことはありませんか?

終身保険や養老保険などの貯蓄型保険は、「保障と貯蓄の両方ができる」と言われますが、資産形成の手段としては非効率です。

この記事では、貯蓄型保険と投資を比較し、なぜ「保険と投資は分ける」のが正解なのかを解説します。

貯蓄型保険とは

貯蓄型保険とは、保障機能と貯蓄機能を兼ね備えた保険商品です。主な種類は以下の通りです。

種類 特徴
終身保険 一生涯の死亡保障。解約時に返戻金あり
養老保険 満期時に満期保険金。死亡時も同額の保険金
個人年金保険 一定年齢から年金形式で受け取り
学資保険 子どもの教育資金を準備
読者
読者

「掛け捨てじゃないから、払った保険料が無駄にならない」って聞きました。

青山(独立系FP)
青山(独立系FP)

それは正しいですが、「無駄にならない=お得」ではありません。払った保険料以上に増えるかどうかが重要です。実際には、インフレを考慮すると「実質的に損」になるケースが多いです。

貯蓄型保険の「返戻率」の落とし穴

貯蓄型保険の営業では「返戻率105%」「返戻率110%」といった数字が強調されます。しかし、この数字には落とし穴があります。

返戻率と実質利回りの違い

項目 返戻率105%の例
保険料払込期間 30年間
払込保険料総額 500万円
解約返戻金 525万円
返戻率 105%(25万円のプラス)
年平均利回り 約0.16%
読者
読者

え、30年かけて5%しか増えないんですか?

青山
青山

その通りです。「返戻率105%」は30年で5%増えるという意味であり、年利ではありません。年平均に直すと0.16%程度。普通預金とほぼ変わりません。

返戻率110%でも年利は低い

仮に返戻率110%(30年で10%増)でも、年平均利回りは約0.32%です。新NISAインデックス投資すれば年5〜7%の期待リターンがありますから、効率の差は歴然です。

貯蓄型保険のメリット・デメリット

メリット

メリット
  • 強制的に貯蓄できる(意志が弱くても続く)
  • 死亡保障が付いている
  • 死亡保険金の非課税枠を活用できる(相続対策)
  • 元本割れしにくい(満期まで持てば)
デメリット
  • 実質利回りが非常に低い
  • 途中解約で元本割れ
  • 手数料が不透明(コストが見えにくい)
  • インフレに弱い(将来の価値が目減り)
  • 流動性が低い(すぐに引き出せない)

見えにくい手数料構造

貯蓄型保険の最大の問題は、手数料が不透明なことです。保険料の中には以下のコストが含まれています。

  • 付加保険料(保険会社の運営費・人件費)
  • 販売手数料(代理店への報酬)
  • 利益マージン

これらは開示されないため、「実際にいくら運用に回っているか」がわかりません。一説では、保険料の20〜40%が手数料として引かれているとも言われています。

新NISA vs 貯蓄型保険

同じ金額を「貯蓄型保険」と「新NISAで投資信託」に回した場合を比較してみましょう。

シミュレーション条件

  • 毎月の積立額:3万円
  • 期間:30年間
  • 総投資額:1,080万円
項目 貯蓄型保険 新NISA(投資信託)
想定利回り 年0.3%(返戻率110%相当) 年5%(控えめ想定)
30年後の金額 約1,130万円 約2,500万円
増加額 +50万円 +1,420万円
課税 一時所得(50万円控除後1/2課税) 非課税
差額

30年間で約1,370万円の差が生まれます。これが「保険で貯蓄」の機会損失です。

それぞれの特徴比較

項目 貯蓄型保険 新NISA
期待リターン 年0.1〜1%程度 年5〜7%程度
手数料 不透明(高い) 年0.1%程度(明確)
流動性 低い(途中解約で元本割れ) 高い(いつでも売却可)
元本保証 なし(実質なし) なし
税制優遇 一時所得控除 運用益非課税
死亡保障 あり なし

「保険は保障、投資は運用」が正解

結論として、保険と投資は分けて考えるのが合理的です。

おすすめの考え方

正しい使い分け
  • 保障(万が一への備え)→ 掛け捨ての定期保険
  • 貯蓄・運用(資産を増やす)→ 新NISAで投資信託

掛け捨て + 投資の方が効率的

例えば、毎月3万円を「貯蓄型保険」に払う代わりに、以下のように分けます。

用途 金額 商品
保障(死亡保険) 3,000円/月 掛け捨ての定期保険
運用(資産形成) 27,000円/月 新NISAでインデックス投資

これで十分な死亡保障を確保しながら、効率的に資産形成ができます。

貯蓄型保険を解約すべきか?

すでに貯蓄型保険に加入している方は、以下の観点で判断しましょう。

解約を検討すべきケース

  • 加入からまだ数年以内(早期解約の損失が小さい)
  • 死亡保障が不要になった(子どもが独立したなど)
  • 他に十分な資産がある
  • 保険料の支払いが家計を圧迫している

継続を検討すべきケース

  • 払込期間が残りわずか(あと数年で満期)
  • 相続対策として活用したい
  • 解約返戻金が払込保険料の90%以上になっている
青山
青山

加入から10年以上経っていて、あと数年で払込完了なら、継続した方がいいかもしれません。すでに高い手数料を払い終えているからです。逆に、加入して間もないなら、早めに損切りして新NISAに切り替える方が長期的にはプラスになる可能性が高いです。

貯蓄型保険が向いている人

それでも貯蓄型保険が向いているケースもあります。

こんな人には向いている

  • 強制的に貯蓄したい(意志が弱く、投資を続けられない)
  • 投資の値動きに耐えられない(元本割れが絶対に嫌)
  • 相続対策として死亡保険金の非課税枠を使いたい
  • 会社の団体保険で有利な条件で加入できる
相続対策の非課税枠

死亡保険金には「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠があります。相続財産が多い方は、この枠を活用するために終身保険に加入するケースがあります。

外貨建て保険・変額保険はどうか

「利回りが高い」と勧められることがある外貨建て保険変額保険も注意が必要です。

外貨建て保険

  • 為替リスクがある(円高で元本割れ)
  • 手数料が円建てより高いことが多い
  • 満期時の為替で損益が大きく変わる

変額保険

  • 運用成績によって保険金・返戻金が変動
  • 投資信託と同様のリスクがあるのに、手数料は保険の方が高い
  • 「投資したいなら直接投資信託を買う」方が合理的
青山
青山

外貨建て・変額保険は「投資のリスクを取りながら、保険の高い手数料も払う」という構造です。投資がしたいなら、新NISAで直接投資信託を買う方が効率的です。

まとめ

貯蓄型保険と投資の比較ポイントを整理します。

  • 貯蓄型保険の返戻率は年利ではない(30年で5%増=年0.16%)
  • 新NISAなら年5〜7%の期待リターンで非課税
  • 手数料は保険が不透明、投資信託は年0.1%程度で明確
  • 「保険は保障、投資は運用」で分けるのが合理的
  • 掛け捨て保険 + 新NISAの組み合わせがおすすめ
  • すでに加入中の人は、残りの払込期間で判断

保険と投資を正しく使い分けて、効率的な資産形成を目指しましょう。

よくある質問

Q
Q1. 貯蓄型保険は損ですか?
A

「損」とは言い切れませんが、資産形成の効率としては良くありません。実質利回りは年0.1〜1%程度で、新NISAの投資信託(期待リターン年5〜7%)と比べると大きな差があります。ただし、強制的に貯蓄できる仕組みや相続対策としては価値があります。

Q
Q2. すでに加入している貯蓄型保険は解約すべきですか?
A

ケースバイケースです。払込期間が残り少ない場合は継続した方がいいでしょう。逆に、加入して数年以内なら、早めに解約して新NISAに切り替える方が長期的にはプラスになる可能性が高いです。解約返戻金と残りの保険料を比較して判断してください。

Q
Q3. 保険の営業に「投資はリスクがある」と言われました。
A

確かに投資にはリスクがありますが、貯蓄型保険も「インフレによる実質目減り」「途中解約での元本割れ」というリスクがあります。また、保険会社も集めた保険料を運用(投資)しています。リスクを避けたいなら現金・預金が最も確実ですが、資産を増やしたいなら投資の方が合理的です。

※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。