年末が近づくと投資家の間で話題になる「損出し」。含み損を抱えている株がある人は、税金を取り戻せるチャンスかもしれません。
この記事では、損出しの仕組み、やり方、注意点を解説します。
損出しとは
損出しとは、含み損(評価損)を確定させて、その年の利益と相殺することです。
株式投資では、売却して利益が出ると約20%の税金がかかります。しかし、同じ年に損失を確定させれば、利益と相殺(損益通算)して税金を減らすことができます。
含み損を確定させるってことは、損切りするってことですよね?
そうです。ただし、損出しでは売却した翌日に同じ株を買い戻すのがポイントです。ポジションを維持したまま、税務上の損失だけを確定させる手法です。
損出しの仕組み
損益通算で税金を取り戻す
| 例 | 損出しなし | 損出しあり |
|---|---|---|
| 確定利益 | 50万円 | 50万円 |
| 確定損失 | 0円 | 30万円 |
| 課税対象 | 50万円 | 20万円 |
| 税金(20.315%) | 約10.2万円 | 約4.1万円 |
| 節税額 | — | 約6.1万円 |
特定口座(源泉徴収あり)なら、利益が出た時点で税金が自動的に引かれています。同じ口座内で損失を確定させると、引かれた税金が戻ってきます。
損失の繰越控除
損益通算しても損失が残る場合、翌年以降3年間、損失を繰り越せます。これを「繰越控除」といいます。
- 2025年:100万円の損失確定 → 確定申告で繰り越し
- 2026年:50万円の利益 → 損失と相殺して税金ゼロ
- 2027年:60万円の利益 → 残り50万円の損失と相殺、10万円分のみ課税
損出しのやり方
損出しは以下の手順で行います。
保有株の中で含み損を抱えている銘柄をチェックします。今後も保有し続けたい銘柄が対象です。
年内の最終売買日までに、含み損の株を売却して損失を確定させます。成行注文で全株売却します。
売却した翌営業日以降に、同じ銘柄を買い戻します。同日に買い戻すと「仮装売買」とみなされるリスクがあるため、必ず翌日以降にしましょう。
特定口座(源泉徴収あり)なら自動で損益通算されます。複数の証券会社で取引している場合は、確定申告が必要です。
2025年の損出し期限
2025年分として損益通算するには、2025年12月26日(金)までに売却する必要があります。
| 日付 | 取引 | 受渡日 | 2025年分? |
|---|---|---|---|
| 12月26日(金) | 売却 | 12月30日 | ○ |
| 12月29日(月) | 売却 | 1月6日 | × |
| 12月30日(火) | 売却 | 1月7日 | × |
株の受渡日は取引日から3営業日目です。12月29日以降に売却すると、受渡日が2026年になるため、2025年分の損益通算には使えません。
損出しの注意点
1. 同日の買い戻しは避ける
同じ日に売却と買い戻しを行うと、「仮装売買」とみなされるリスクがあります。税務上、損失として認められない可能性があるため、必ず翌営業日以降に買い戻しましょう。
2. 買い戻し時の株価変動リスク
売却から買い戻しまでの間に株価が上昇すると、高い価格で買い戻すことになります。逆に下落すれば安く買えますが、株価変動リスクがある点は理解しておきましょう。
3. 取得単価がリセットされる
買い戻した株の取得単価は、買い戻し時の価格になります。将来売却した時の利益計算に影響します。
取得単価がリセットされると、何か問題がありますか?
例えば、1,000円で買った株が500円に下落。損出しで売却→500円で買い戻すと、取得単価は500円になります。将来株価が1,000円に戻って売却すると、500円分の利益に課税されます。損出しで節税した分、将来の税負担が増える可能性があります。
4. 信用取引の制限
同日に現物売り→信用買いは避けるべきです。いわゆる「クロス取引」は、仮装売買とみなされるリスクがあります。
5. 複数の証券会社は確定申告が必要
複数の証券会社で取引している場合、証券会社間では自動で損益通算されません。確定申告をして損益通算する必要があります。
損出しすべきかの判断基準
損出しが有効なケース
- その年に確定利益がある(配当金を含む)
- 含み損の株を持っている
- 含み損の株を今後も保有したい
- 特定口座(源泉徴収あり)で税金が引かれている
損出しが不要なケース
- その年に確定利益がない
- 含み損の株をもう持ちたくない(普通に損切りすればOK)
- 新NISA口座での取引(そもそも非課税)
損益通算できる範囲
損益通算は、同じ種類の所得間でのみ可能です。
| 相殺できる | 相殺できない |
|---|---|
| 株式の売却益と売却損 | 給与所得 |
| 株式の配当金と売却損 | 不動産所得 |
| 投資信託の売却益と株式の売却損 | 事業所得 |
| 異なる証券会社間の損益(確定申告必要) | 仮想通貨の損益 |
仮想通貨(暗号資産)の損益は「雑所得」に分類されるため、株式の損益とは相殺できません。
確定申告のポイント
同一証券会社内なら確定申告不要
特定口座(源泉徴収あり)の同一口座内で損益が発生した場合、証券会社が自動で損益通算してくれます。確定申告は不要です。
複数の証券会社なら確定申告が必要
異なる証券会社間で損益通算する場合は、確定申告が必要です。各証券会社から「年間取引報告書」を取得し、申告します。
繰越控除は確定申告が必須
損失を翌年以降に繰り越す「繰越控除」を使う場合は、損失が出た年から3年間、毎年確定申告が必要です。取引がない年でも申告を続ける必要があります。
まとめ
損出しのポイントを整理します。
- 損出しは含み損を確定させて利益と相殺する節税テクニック
- 2025年の期限は12月26日(金)が最終売買日
- 売却した翌営業日以降に買い戻し(同日はNG)
- 複数の証券会社なら確定申告が必要
- 損失は3年間繰り越せる(繰越控除)
- 取得単価がリセットされるデメリットも理解しておく
年末の含み損を有効活用して、賢く節税しましょう。
よくある質問
損出し自体は合法的な節税手法です。ただし、同日に売買を繰り返す「仮装売買」は違法とみなされる可能性があります。売却した翌営業日以降に買い戻すようにしましょう。
NISA口座はそもそも非課税なので、損出しの意味がありません。また、NISA口座の損失は特定口座の利益と損益通算できません。損出しは特定口座や一般口座で行います。
はい、株式の配当金と売却損は損益通算できます。特定口座(源泉徴収あり)で「配当金受入あり」に設定していれば、自動で損益通算されます。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。