2026年も確定申告の時期がやってきました。申告期間は2026年2月16日(月)〜3月16日(月)です。
「特定口座の源泉徴収ありだから申告は不要」と思っている方も多いでしょう。確かに原則としてはそのとおりですが、確定申告をしたほうが税金が還付されるケースが少なくありません。
この記事では、個人投資家が知っておくべき確定申告のテクニックを、配当控除・損益通算・外国税額控除の3つの柱で解説します。
2025年分(2026年提出)確定申告の主な変更点
まず押さえておきたいのが、2025年分から適用される税制改正のポイントです。
今年の確定申告、何か変わったんですか?
大きな変更がいくつかあります。特に基礎控除の引き上げは影響が大きいですよ。
基礎控除の大幅見直し
2025年分から基礎控除額が所得に応じて引き上げられました。
| 合計所得金額 | 改正前の基礎控除 | 改正後の基礎控除 |
|---|---|---|
| 132万円以下 | 48万円 | 95万円 |
| 132万円超〜336万円以下 | 48万円 | 88万円 |
| 336万円超〜489万円以下 | 48万円 | 68万円 |
| 489万円超〜655万円以下 | 48万円 | 63万円 |
| 655万円超〜2,350万円以下 | 48万円 | 58万円 |
| 2,350万円超〜2,400万円以下 | 32万円 | 32万円 |
| 2,400万円超〜2,450万円以下 | 16万円 | 16万円 |
| 2,450万円超 | 0円 | 0円 |
合計所得金額が655万円以下の方は、基礎控除が10万円〜47万円も増えています。投資所得を含めた合計所得金額を確認し、申告するかどうかの判断に活かしましょう。
給与所得控除の見直し
給与収入190万円以下の方は、一律65万円の控除が適用されるようになりました。パート・アルバイト収入がある方にとっては実質的な非課税枠の拡大といえます。
特定親族特別控除の創設
19歳以上23歳未満の親族で合計所得金額が58万円超123万円以下の場合、新たに「特定親族特別控除」が適用されます。大学生のお子さんがいる投資家の方は要チェックです。
個人投資家が確定申告すべき5つのケース
「特定口座(源泉徴収あり)」を使っている場合、確定申告は原則不要です。しかし、以下のケースでは申告したほうが得になることがあります。
ケース1:複数の証券口座で損益を通算したい
SBI証券では利益が出て、楽天証券では損失が出た場合、それぞれの口座で別々に税金が計算されます。確定申告で損益通算すれば、利益口座で源泉徴収された税金の一部が還付されます。
SBI証券:+50万円の利益(源泉徴収 約10万円)
楽天証券:-30万円の損失
→ 確定申告で損益通算すると、課税対象は20万円に。約6万円が還付されます。
ケース2:損失を翌年以降に繰り越したい
株式や投資信託の譲渡損失は、確定申告することで最大3年間繰り越すことができます。翌年以降に利益が出た場合、繰り越した損失と相殺できるため、節税効果が大きいです。
繰越控除を利用するには、損失が出た年だけでなく、翌年以降も継続して確定申告する必要があります。利益が出なかった年でも申告を忘れないようにしましょう。
ケース3:配当控除を活用したい
日本株の配当金を受け取っている場合、「総合課税」を選択して確定申告すると配当控除が適用されます。
| 課税総所得金額 | 配当控除率 | 実質税率 | 源泉徴収(20.315%)との差 |
|---|---|---|---|
| 330万円以下 | 10% | 約7.2% | 約13%お得 |
| 330万円超〜695万円以下 | 10% | 約17.4% | 約3%お得 |
| 695万円超〜900万円以下 | 10% | 約20.5% | ほぼ同じ |
| 900万円超 | 5%〜10% | 源泉徴収より高い | 損する |
課税所得695万円以下の方は、配当を総合課税で申告するとお得になるケースが多いです。ただし、申告すると合計所得金額が増えるため、扶養控除や社会保険料に影響が出る場合があるので注意してください。
ケース4:外国税額控除で二重課税を解消したい
米国株の配当金には、まず米国で10%の源泉徴収、その後日本で20.315%の源泉徴収がかかります。これが「二重課税」の問題です。
確定申告で外国税額控除を申請すれば、米国で課税された10%分の一部または全部を日本の所得税から差し引くことができます。
控除限度額 = その年の所得税額 × (その年の国外所得金額 ÷ その年の所得総額)
たとえば米国株の配当が年間20万円(米国源泉徴収前)の場合、米国で約2万円が源泉徴収されています。確定申告すれば、この2万円の一部〜全額が還付される可能性があります。
新NISA口座で保有する米国株の配当金にかかる米国の10%源泉徴収は、外国税額控除の対象になりません。NISAは日本側の税金が非課税ですが、外国の税金は課税されたままになる点に注意が必要です。
ケース5:年間の給与所得以外の所得が20万円以下
給与所得者で、投資を含む給与以外の所得が年間20万円以下の場合は所得税の確定申告は不要です。ただし、住民税の申告は必要ですのでご注意ください。
確定申告が不要なケース
逆に、確定申告しないほうがよいケースも確認しておきましょう。
- 特定口座(源泉徴収あり)のみで運用し、損益通算の必要がない
- [iDeCo](/news/posts/ideco-complete-guide-2025/)の掛金は年末調整で所得控除済み
- NISAの運用益は非課税で申告不要
- 課税所得が900万円超の方が配当を総合課税にすると逆に税負担が増える
- 確定申告で合計所得金額が増えると扶養から外れるリスク
- 国民健康保険料の算定基準に影響が出る場合がある
確定申告の手順(投資家向け)
各証券会社から送付される「年間取引報告書」(特定口座年間取引報告書)を準備します。1月中旬〜2月上旬に電子交付または郵送されるのが一般的です。複数の証券口座を持っている方はすべて集めましょう。
各口座の譲渡損益と配当金を集計します。損益通算する場合は、口座ごとの利益と損失を一覧にしておくと申告がスムーズです。
配当金の課税方法を「総合課税」「申告分離課税」「申告不要」のいずれにするか決めます。課税所得695万円以下なら総合課税(配当控除あり)、損益通算したい場合は申告分離課税を選びましょう。
国税庁のWebサイト「確定申告書等作成コーナー」を使えば、画面の案内に従って入力するだけで申告書を作成できます。年間取引報告書の数字をそのまま入力すればOKです。
マイナンバーカードとスマートフォンがあれば、e-Taxでオンライン提出が可能です。還付金は通常1〜2か月程度で指定口座に振り込まれます。
2026年の確定申告で特に注意すべきポイント
基礎控除引き上げの影響
前述のとおり、基礎控除が大幅に引き上げられました。これにより、確定申告をしたときの税額が下がる可能性があります。特に配当を総合課税で申告するかどうかの損益分岐点にも影響しますので、シミュレーションしてから判断することをおすすめします。
NISA口座と特定口座の関係
NISA口座で発生した損失は、特定口座や一般口座の利益と損益通算できません。NISAは「なかったこと」として扱われるため、NISA内の損失を確定申告で活用することは不可能です。
NISAで含み損がある場合、売却しても損失として使えないんですか?
残念ながらそのとおりです。NISAは利益が非課税になる代わりに、損失もなかったことになります。損益通算に使いたい場合は、NISA以外の課税口座で取引するのが原則です。
配当金の受取方法の確認
NISA口座で配当金を非課税にするには、「株式数比例配分方式」を選択している必要があります。それ以外の方式(登録配当金受領口座方式や配当金受領証方式)を選んでいる場合、NISA口座の配当金にも課税されてしまいます。
まとめ
2026年の確定申告で個人投資家が押さえるべきポイントは以下のとおりです。
- 基礎控除が最大95万円に引き上げ。申告する・しないの損益分岐点が変わった
- 複数口座の損益通算は確定申告でしかできない
- 課税所得695万円以下なら配当控除の総合課税が有利
- 米国株の配当には外国税額控除で二重課税を解消
- NISA口座の損失は損益通算の対象外
- 損失の繰越控除は3年間有効だが、毎年申告が必要
申告期限は3月16日(月)です。特に損益通算や外国税額控除の対象になる方は、早めに年間取引報告書を確認して、還付を受けられるか検討してみてください。
よくある質問
原則不要ですが、複数口座間の損益通算や配当控除・外国税額控除を活用する場合は確定申告が必要です。申告することで還付を受けられるケースがあります。
NISA口座の利益は非課税なので申告不要です。損失については他の口座との損益通算ができないため、確定申告では「ないもの」として扱われます。
日本株の配当に対する配当控除と、米国株の配当に対する外国税額控除は、それぞれ別の制度です。同時に申告して活用することが可能ですが、配当の課税方式(総合課税・申告分離課税)の選択に注意が必要です。
はい、損失が発生した年から利益と相殺する年まで、継続して毎年確定申告を行う必要があります。途中の年に申告を忘れると、繰越控除が途切れてしまうため注意してください。
基礎控除の引き上げにより課税所得が減るため、配当を総合課税で申告した場合の税額が下がる可能性があります。合計所得金額655万円以下の方は特にメリットが大きいでしょう。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。
投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。