「AIに投資したい」「半導体関連ファンドが気になる」——こんな風に、話題のテーマに投資できるファンドに魅力を感じていませんか?
しかし、テーマ型投資信託には大きな落とし穴があります。この記事では、テーマ型ファンドの問題点と、本当におすすめの投資方法を解説します。
テーマ型投資信託とは
テーマ型投資信託とは、特定のテーマや業界に集中投資する投資信託です。
よくあるテーマの例
| 時期 | 話題になったテーマ |
|---|---|
| 2015〜2016年 | ロボット、フィンテック |
| 2017〜2018年 | AI(人工知能) |
| 2020〜2021年 | コロナ関連、DX、脱炭素 |
| 2022年 | メタバース、Web3 |
| 2023〜2024年 | 生成AI、半導体 |
話題のテーマに投資できるなら、成長が期待できそうですね?
そう思いがちですが、話題になった時点ですでに株価は上がっていることが多いです。「話題の後追い」になりやすく、高値掴みのリスクがあります。
テーマ型投資信託の5つの問題点
問題点1:信託報酬が高い
テーマ型ファンドはアクティブファンドが多く、コストが高いです。
| ファンドの種類 | 信託報酬の目安 |
|---|---|
| テーマ型ファンド | 年1.0〜2.0% |
| インデックスファンド | 年0.05〜0.2% |
例えば信託報酬が1.5%違うと、100万円を20年運用した場合、約30万円以上の差になります。
問題点2:話題になった時はすでに高値
テーマ型ファンドが設定・販売されるタイミングは、そのテーマがすでに話題になった後です。
| 段階 | 状況 |
|---|---|
| ① 先駆者が投資 | まだ話題になっていない。株価は安い |
| ② メディアで話題に | 株価が上昇し始める |
| ③ ファンド設定 | 金融機関が商品化。すでに株価は高値 |
| ④ 個人投資家が購入 | 高値で買わされる |
| ⑤ ブーム終了 | 株価下落。個人投資家が損失 |
金融機関は「売れる時に売る」のが商売です。話題になったテーマでファンドを作り、個人投資家に高値で買わせるビジネスモデルになりがちです。
問題点3:テーマが廃れると急落
テーマには「旬」があります。ブームが去ると株価は急落します。
| テーマ | ブーム期 | その後 |
|---|---|---|
| バイオ関連 | 2015年ピーク | 2016年以降低迷 |
| ロボット | 2016年ピーク | その後パフォーマンス低迷 |
| VR/AR | 2016〜2017年 | 期待外れで下落 |
| メタバース | 2021〜2022年 | 2023年以降急落 |
問題点4:分散効果がない
テーマ型ファンドは特定の業界に集中するため、分散投資の効果がありません。
| ファンドの種類 | 投資対象 | リスク分散 |
|---|---|---|
| 半導体ファンド | 半導体関連30〜50社 | ✕ なし |
| 全世界株式インデックス | 世界中の約3,000社 | ◎ 十分 |
問題点5:売り時が難しい
テーマ型ファンドは「いつ売るか」の判断が非常に難しいです。
- 上がっているうちは「まだ上がる」と思って持ち続ける
- 下がり始めると「そのうち戻る」と思って売れない
- 結局、高値で買って安値で売ることになりがち
過去のテーマ型ファンドの実績
AIファンドの例
2017〜2018年に話題になったAIファンド。当時は「AIが世界を変える」と大人気でしたが、その後のパフォーマンスは...
2024年になって再びAIブームが来ましたが、2018年に高値で買った人は長期間含み損を抱えていました。テーマ型投資の難しさを物語っています。
「グローバル・フィンテック株式ファンド」の例
フィンテックブームで人気を集めたファンド。信託報酬は年1.8%以上と高コスト。設定当初から買っていれば利益が出ていますが、ブームのピーク(2021年)で買った人は大幅な含み損を抱えています。
なぜ金融機関はテーマ型ファンドを売りたがるのか
なぜ証券会社や銀行はテーマ型ファンドを勧めてくるんですか?
理由は明確です。信託報酬が高いから儲かるのです。販売手数料もかかる商品が多く、金融機関にとって「おいしい商品」なんです。
| 商品 | 金融機関の収益 |
|---|---|
| eMAXIS Slim 全世界株式 | 信託報酬0.05775%(ほぼ儲からない) |
| テーマ型ファンド | 信託報酬1〜2%(20〜40倍の収益) |
テーマ型ファンドを見分けるチェックリスト
以下に当てはまったら「買わない」方が無難です。
じゃあ何を買えばいいのか
結論:全世界株式インデックスファンドがおすすめです。
| 項目 | テーマ型ファンド | 全世界株式インデックス |
|---|---|---|
| 信託報酬 | 1〜2% | 0.05775% |
| 分散 | 限定的(30〜50社) | 約3,000社 |
| テーマ選び | 自分で判断(難しい) | 不要 |
| 売り時 | 判断が必要 | 持ち続ければOK |
なぜ全世界株式がいいのか
全世界株式インデックスには、AIも半導体もEVも、すべての成長テーマが含まれています。テーマを選ぶ必要がなく、次の成長分野が何であっても自動的にカバーされます。
世界経済全体が成長すれば、全世界株式も成長します。テーマの「当たり外れ」を気にする必要がありません。新NISAで積立すれば、低コストで世界中の企業に投資できます。
テーマ型投資をしたい人へのアドバイス
それでもテーマ型投資をしたい場合は、以下を守りましょう。
1. 資産の10%以下に抑える
全資産をテーマ型に投じるのはハイリスクです。コア(中心)は全世界株式、サテライト(周辺)としてテーマ型を少しだけ持つスタイルがおすすめです。
2. 話題になる「前」に買う
話題になった後は高値です。本当に有望だと思うテーマは、話題になる前に自分で発見する必要があります。これはプロでも難しいです。
3. 売り時を決めておく
「◯%上がったら売る」「◯%下がったら損切りする」など、ルールを決めておくことが重要です。
まとめ
テーマ型投資信託の問題点を整理します。
- 信託報酬が高い(年1〜2%、インデックスの20〜40倍)
- 話題になった時はすでに高値(後追いになりやすい)
- テーマが廃れると急落(旬がある)
- 分散効果がない(特定業界に集中)
- 金融機関は儲かるから売りたい商品
- 正解は全世界株式インデックス(全テーマを網羅)
話題のテーマに惑わされず、シンプルな全世界株式インデックスでコツコツ積み立てるのが、長期資産形成の王道です。
よくある質問
全世界株式インデックスにはMicrosoft、NVIDIA、Googleなど主要なAI関連企業がすでに含まれています。追加でAIファンドを買う必要はありません。どうしても追加したいなら、資産の10%以下に抑え、コストが低いETFを選びましょう。
もちろんあります。ただし「設定当初から持ち続けた人」が利益を得られたケースが多く、話題になってから買った人は損失を抱えていることが多いです。成功したファンドを「後から」見つけても、同じリターンは得られません。
セクターETF(例:半導体ETF、ヘルスケアETF)は特定の業界に投資する点は同じですが、一般的にコストが低く、運用会社の裁量が少ないです。テーマ型ファンドよりは透明性が高いですが、それでも分散投資の観点からはおすすめしません。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。