ドル円相場が再び160円に迫っています。
2024年7月に161円台をつけた後、日銀の利上げで一時的に円高方向へ振れましたが、日米金利差の構造的な大きさや貿易赤字の定着により、円安圧力は根強く続いています。
「外貨建て資産を持つべきか」「今の円安で買うと高値掴みにならないか」──多くの投資家が抱えるこの悩みに対して、外貨建て資産の選択肢と実践的な戦略を整理します。
なぜ円安が続くのか
日米金利差が依然として巨大
| 中央銀行 | 政策金利(2026年2月時点) | 方向性 |
|---|---|---|
| 日銀(BOJ) | 0.75% | 緩やかな利上げ |
| 米連邦準備制度(Fed) | 4.25〜4.50% | 利下げ方向だが慎重 |
| 日米金利差 | 約3.5% | 依然として大きい |
日銀も利上げしているのに、なぜ円安が続くのですか?
日銀は利上げを進めていますが、まだ0.75%です。米国の政策金利は4.25〜4.50%ですから、金利差は約3.5%もあります。この差がある限り、ドルで運用した方が有利なため、円を売ってドルを買う動き(キャリートレード)が続きやすいのです。
構造的な円安要因
金利差だけでなく、日本の構造的な問題も円安を支えています。
JPモルガン、BNPパリバなどの大手金融機関は、2026年末にかけてドル円が160円以上に到達する可能性を指摘しています。一方、日銀の追加利上げと米国の利下げが進めば、144〜148円程度まで戻るという見方もあります。
外貨建て資産の選択肢
1. 外貨MMF(外貨建てマネー・マーケット・ファンド)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| リスク | 低い(短期債券中心) |
| 利回り(USD) | 約4〜5%(2026年2月時点) |
| NISA対象 | 対象外 |
| 最低投資額 | 数千円〜(証券会社による) |
| 為替リスク | あり |
外貨MMFは、米ドルで4〜5%の利回りが得られる短期運用商品です。米国の政策金利が高い今だからこそ魅力的で、「外貨預金より手数料が安く、いつでも解約できる」点がメリットです。
2. 国際ETF(VT・VTI・VXUS)
| ETF | 内容 | NISA対象 |
|---|---|---|
| VT | 全世界株式(約9,000銘柄) | 成長投資枠 |
| VTI | 米国株式全体(約4,000銘柄) | 成長投資枠 |
| VXUS | 米国を除く先進国・新興国株式 | 成長投資枠 |
SBI証券や楽天証券では、米国上場ETFをNISA成長投資枠で購入可能です。売買手数料が無料のETFも多く、長期保有のコストを抑えられます。
3. eMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー)
外貨建て資産を持つ最も簡単な方法は、オルカンを買うことです。投資信託1本で60%以上が外貨建て資産になります。為替ヘッジなしのため、円安になれば円換算の評価額が上がります。
4. 米国債(直接購入)
SBI証券や楽天証券では、米国債を直接購入できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 利回り | 約4.0〜4.5%(残存期間による) |
| リスク | 信用リスクは極めて低い(米国政府保証) |
| NISA対象 | 対象外 |
| 最低投資額 | 約100ドル〜 |
| 為替リスク | あり(円高で円換算価値が下がる) |
米国債は米ドル建てでの元本保証はありますが、為替リスクがあります。例えば、1ドル=160円の時に購入し、満期時に1ドル=130円になっていれば、円換算では損失が出ます。「ドル建てで利回りが高い」だけで判断しないようにしましょう。
5. 金ETF
金は「通貨の価値が下がる」局面で強さを発揮する資産です。
- インフレヘッジ:物価上昇で金の価値も上昇しやすい
- 円安ヘッジ:金価格はドル建てのため、円安で円換算価値が上昇
- 有事の資産:地政学リスクや金融危機時に買われやすい
- NISA成長投資枠で金ETFの購入が可能
為替ヘッジありvsなし──判断の枠組み
外貨建て資産を持つ際に迷うのが、為替ヘッジの有無です。
| 項目 | 為替ヘッジなし | 為替ヘッジあり |
|---|---|---|
| 円安時 | プラス(円換算で上昇) | 影響なし |
| 円高時 | マイナス(円換算で下落) | 影響なし |
| コスト | なし | ヘッジコスト(年2〜4%程度) |
| 長期投資向き | はい | コストが重い |
為替ヘッジありとなし、どちらを選ぶべきですか?
現在の日米金利差では、為替ヘッジコストが年2〜4%と高額です。長期投資ならヘッジなしで為替変動を受け入れる方が、コストを抑えられます。ただし、「5年以内に確実に使うお金」は為替リスクを取るべきではありません。
- 10年以上の長期投資 → 為替ヘッジなしがおすすめ(コスト削減)
- 5年以内に使う予定の資金 → 為替ヘッジありか、そもそも外貨資産にしない
- 円高が怖い方 → 外貨資産の比率を控えめにするか、金ETFで分散
キャリートレード巻き戻しのリスク
2024年8月の前例
円安が続くと思われていた2024年8月、突然のキャリートレード巻き戻しが発生しました。
- ドル円は161円台→141円台まで、わずか数日で約20円の円高
- 日経平均は8月5日に過去最大の下落幅(4,451円安)を記録
- きっかけは日銀の利上げ示唆と米国の景気減速懸念
- 外貨建て資産を大量に保有していた投資家は大きな含み損を抱えた
この教訓から、外貨建て資産に過度に集中することのリスクを理解しておく必要があります。「円安が続くから外貨建て資産を増やそう」という判断が、一瞬で裏目に出る可能性があるのです。
年代別・外貨資産の推奨比率
ポートフォリオ全体における外貨建て資産の推奨比率を、年代別に整理しました。
| 年代 | 外貨資産比率 | 理由 | 具体的な配分例 |
|---|---|---|---|
| 20代 | 70〜80% | 運用期間が長く、為替変動を吸収できる | オルカン80% + 日本株20% |
| 30代 | 60〜70% | まだ長期運用可能、やや安全寄りに | オルカン65% + 日本株20% + 債券15% |
| 40代 | 50〜60% | 教育費など使途が近い資金は円で確保 | オルカン50% + 日本株20% + 債券30% |
| 50代 | 40〜50% | 退職後の生活費を円で準備 | オルカン40% + 日本株20% + 債券40% |
| 60代 | 30〜40% | 為替リスクを抑え、安定収入を重視 | オルカン30% + 日本株20% + 債券50% |
上の表はあくまで目安です。重要なのは「直近5年以内に使うお金」は為替リスクにさらさないこと。生活防衛資金と近い将来使うお金は円建てで確保し、残りの長期資金で外貨資産に投資するのが基本です。
外貨建て資産の比較一覧
| 商品 | リスク | 期待リターン | NISA対象 | 最低投資額 | 為替リスク |
|---|---|---|---|---|---|
| 外貨MMF | 低 | 4〜5% | 対象外 | 数千円 | あり |
| VT / VTI | 中 | 5〜8% | 成長投資枠 | 約2万円 | あり |
| オルカン | 中 | 5〜8% | 両方OK | 100円 | あり |
| 米国債 | 低〜中 | 4〜4.5% | 対象外 | 約1.5万円 | あり |
| 金ETF | 中 | 不定 | 成長投資枠 | 数千円 | あり |
まとめ
円安160円時代の外貨建て資産戦略のポイント:
- 日米金利差約3.5%が円安の主因、構造的要因(貿易赤字、高齢化)も
- 外貨MMFはUSD 4〜5%の利回りで安全性の高い選択肢
- オルカンは1本で60%超が外貨資産、最も手軽
- 為替ヘッジコストが高い現在、長期投資ならヘッジなしが合理的
- 2024年8月のキャリートレード巻き戻しを教訓に、過度な集中は避ける
- 年代に応じて外貨資産比率を調整(20代:70〜80%、60代:30〜40%)
- 直近5年以内に使うお金は為替リスクにさらさない
円安は「脅威」であると同時に「機会」でもあります。為替の短期的な動きに振り回されず、長期的な視点でポートフォリオを構築しましょう。
よくある質問
為替だけ見れば円安局面での購入は割高に感じますが、長期積立投資なら為替の影響は平均化されます。ドルコスト平均法で毎月定額を積み立てれば、円高の時も円安の時も購入するため、為替タイミングを気にする必要はありません。
外貨MMFは投資信託の一種で、外貨預金より為替手数料が安く、いつでも解約可能です。外貨預金は預金保険の対象外(1,000万円保護の対象外)ですが、外貨MMFも元本保証はありません。利回りは外貨MMFの方がやや高い傾向にあります。
157〜160円のレンジは過去に当局の不快感が示された水準です。2022年と2024年に実際にドル売り・円買い介入が実施されました。ただし、介入の効果は一時的で、構造的な円安要因が解消されない限り、円安トレンドは続きやすいといえます。
SBI証券や楽天証券で、国内上場の金ETF(例:SPDRゴールド・シェアーズ)をNISA成長投資枠で購入できます。1口数千円から投資可能で、金の現物を保有するのと同等の経済効果が得られます。
外貨資産への過度な集中を避け、円建て資産(個人向け国債、日本株、現金)も一定割合で保有することが重要です。2024年8月にはドル円が161円→141円まで数日で動きました。「為替が10〜20円動いても耐えられる」ポートフォリオを組むことが備えになります。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。