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アジア太平洋の不動産投資が2021年以来最高──日本が98億ドルで地域を牽引
市場分析 アジア

アジア太平洋の不動産投資が2021年以来最高──日本が98億ドルで地域を牽引

2026-02-10
2026-02-10 更新

JLLレポート(2月5日)によるとAPAC不動産投資はQ4 2025に403億ドルで2021年Q4以来最高を記録。日本が98億ドルで地域トップ、インドは+407%の爆発的成長。2026年の注目セクターを分析。

「海外不動産投資って、結局どこに資金が集まっているの?」

——答えは明確です。アジア太平洋(APAC)、そして特に日本

2026年2月5日にJLLが発表したレポートによると、2025年Q4のAPAC商業不動産投資額は$403億(約6兆円)で、2021年Q4以来の四半期最高額を記録しました。通年では$1,476億(+12%)、2021年以来最も強い年となっています。

しかもこの「アジア太平洋投資ブーム」の牽引役は、意外にも日本です。Q4に$98億を記録し、地域で最大の投資先になりました。そしてもう一つの注目は、前年比+407%という異次元の成長を見せたインド。

何が起きているのか、データから読み解きましょう。

Q4 2025の全体像——2021年以来の最高水準

JLLの数字

まず全体像を確認します。

指標 Q4 2025 前年同期比
APAC CRE投資額 $403億 +15%
2025年通年 $1,476億 +12%
Knight Frank(全セクター) $2,010億 +13.7%

JLLの数字は商業不動産(CRE)に限定したもので、Knight Frankの集計は全セクター(住宅含む)を含みます。いずれにしても2021年以来の最高水準であり、APAC不動産市場が明確な回復局面にあることを示しています。

読者
読者

「2021年以来最高」って、コロナ前の水準に戻ったということですか?

山本(海外不動産アナリスト)
山本(海外不動産アナリスト)

正確にはコロナ前(2019年)の水準を超えて、コロナ中の超低金利バブルに近づいているイメージです。ただし今回は、低金利による「何でも買い」ではなく、セクターと地域を選別した投資が中心。だから「回復」というより「進化」と表現したほうが適切かもしれません。

金利安定化が後押し

Knight Frankは今回の回復を「安定化する金利と、高品質なインカム資産への投資家の信頼回復」によるものだと分析しています。

各国の中央銀行が利上げサイクルを終え、金利が「高いが安定している」状態になったことで、不動産のバリュエーションが見えやすくなった。これが機関投資家の背中を押しています。

日本が$98億で地域トップ——なぜ日本なのか

数字の詳細

JLLによると、日本はQ4 2025に$98億(約1.5兆円)を記録し、APAC地域で最大の投資先となりました。通年でも前年比+14%の成長です。

読者
読者

日本って国内の不動産価格が上がっているから海外マネーが入ってきている、ということですか?

山本
山本

逆です。海外マネーが入ってきているから価格が上がっている、という側面が大きい。特に東京のマルチファミリー(集合住宅)は、APACで唯一の成熟した機関投資家向け賃貸住宅市場として、グローバル資本の受け皿になっています。日本国内から見ると「マンション価格が高すぎる」と感じるかもしれませんが、海外投資家から見ると「この品質でこの利回り、しかも安定した法制度」は非常に魅力的なんです。

Q4の投資を牽引したもの

Q4の日本市場では、産業用(物流倉庫)開発プロジェクトからの売却が活発でした。外国人売り手が関わる大型案件が複数あり、これが投資額を押し上げています。

Knight Frankの集計では、日本は2025年通年で$162億の海外投資を受け入れ、APAC全体で最大。オーストラリア($124億)、韓国($63億)を上回っています。

日本のマルチファミリーが世界から注目される理由

日本のマルチファミリー(賃貸マンション)市場は、APACで唯一の「成熟した機関投資家向け住宅資産クラス」です。東京・大阪への人口流入が続き、若年層の持ち家率低下が賃貸需要を下支えしています。ULI/PwCの「Emerging Trends in Real Estate Asia Pacific 2026」では、東京が3年連続で投資先として1位にランクされました。

インド——前年比+407%の衝撃

爆発的成長の実態

2025年で最も目を引いたのはインドの数字です。

  • Q4投資額:$24億(前年比+407%)
  • 通年投資額:$71億(前年比+183%)
読者
読者

+407%って本当ですか?何か特殊要因があるんじゃないですか?

山本
山本

これは私見ですが、「ベース効果」(前年が低かったから倍率が大きく見える)と「構造的な成長」の両方です。2024年のQ4が特に低調だったため+407%という数字になりましたが、通年で+183%、別の集計(CBRE)では2025年の資本流入が$143億で前年比+25%というデータもあります。いずれにしても、インドの不動産市場が国際投資家のレーダーに急浮上しているのは間違いありません。

インド成長の3つのドライバー

インドの成長を支えているのは以下の3要因です。

1. オフィス需要の堅調さ
バンガロール、ムンバイ、ハイデラバードなどのIT都市でオフィス吸収面積が拡大しています。欧米企業のGCC(グローバル・ケイパビリティ・センター)設置ラッシュが背景にあります。

2. 物流・産業用不動産の急拡大
Eコマースの成長とサプライチェーン再編(チャイナ+1戦略)が、物流倉庫への海外投資を加速させています。

3. 制度環境の改善
RERA(不動産規制法)の浸透、REIT市場の拡大(Embassy Office Parks、Mindspace、Brookfield India)が市場の透明性を高めています。

日本人投資家にとってのインド

インドの不動産に直接投資するのはハードルが高い(外国人の土地所有制限、複雑な規制)ですが、インドREITへの間接投資は検討に値します。Embassy Office Parks REIT(NSE: EMBASSY)やMindspace Business Parks REIT(NSE: MINDSPACE)は、バンガロールやムンバイの優良オフィスポートフォリオを保有しています。

シンガポール、韓国、オーストラリアの動向

各市場のQ4パフォーマンス

APAC主要市場のQ4を俯瞰します。

市場 Q4 2025投資額 前年比 牽引セクター
日本 $98億 +14%(通年) 物流、マルチファミリー
シンガポール $42億 +28% リビング、オフィス、リテール
インド $24億 +407% オフィス、物流
オーストラリア +3.2%(通年$124億) リテール、BTR
韓国 +23.7%(通年$63億) 物流

注目すべきは、セクターの多様化が進んでいることです。

Knight Frankによると、2025年Q4のリテール(商業施設)投資額は前四半期比+109.5%と倍増。通年でも+31.2%で、オフィス偏重だったAPAC投資が広がりを見せています。

2026年の注目セクター

5つの重点テーマ

JLL、Knight Frank、ULI/PwCの分析を総合すると、2026年のAPAC不動産投資は以下の5テーマに集約されます。

1. データセンター
AI需要に牽引されるデータセンター投資は引き続き最も注目度が高いセクターです。ULI/PwCの調査でも「最もパフォーマンスが期待されるニッチ資産」として1位にランクされました。

2. 物流(ロジスティクス)
韓国とインドの物流資産が特に注目されています。Eコマース拡大とサプライチェーン再編が長期的な需要を支えます。

3. マルチファミリー(賃貸住宅)
日本のマルチファミリーがAPAC最大のターゲット。オーストラリアのBTR(Build-to-Rent)も制度整備が進み、投資対象として拡大中。

4. プライムオフィス
シンガポールとシドニーのプライムオフィスに選別的な資金が流入。供給制約のある市場で賃料上昇が期待されています。

5. 学生寮(PBSA)
オーストラリアと香港の学生寮(Purpose-Built Student Accommodation)が「ディフェンシブ資産」として機関投資家の関心を集めています。

読者
読者

日本の投資家にとって、この流れはプラスですか?

山本
山本

大きなプラスです。日本国内の不動産が海外投資家に再評価されているということは、資産価値の上昇が期待できます。同時に、「日本国内だけでなくAPAC全体を見渡す視点」が重要になっています。たとえばインドのREITは利回り6〜8%で、日本のJ-REITより高い。韓国の物流REITも同様です。国内不動産の値上がりで得た資金を、APAC内で地理的に分散させる戦略は十分に合理的でしょう。

地理的分散化——トップ5都市の集中度が低下

投資先の「民主化」

もう一つ注目すべきトレンドがあります。従来、不動産投資はロンドン、ニューヨーク、東京、パリ、シドニーなどの「トップ5都市」に集中していましたが、この比率が30%超から18%程度まで低下しています。

これは何を意味するか。投資家がリスク分散のために「二番手・三番手の都市」にも積極的に資金を振り向けているということです。

分散投資の実例

APACでは以下のような「トップ5以外」への分散が進んでいます。

  • 大阪:東京に次ぐマルチファミリー市場として注目
  • バンガロール:インドのテックハブとしてオフィス投資が急増
  • ソウル近郊:物流倉庫の開発が活発
  • ブリスベン:2032年五輪に向けたインフラ投資が進行中

日本人投資家はどう動くべきか

「国内 vs 海外」ではなく「国内 and 海外」

これは私見ですが、今回のJLLレポートが示す最大のメッセージは、「日本不動産は海外から買われている」という事実を踏まえた上で、自分も海外に目を向けるべきということです。

読者
読者

でも、海外不動産ってハードルが高くないですか?語学とか法律とか…

山本
山本

直接投資は確かにハードルがあります。でも、REIT経由なら証券口座で買えます。インドのEmbassy REIT、オーストラリアのGoodman Group、シンガポールのCapitaLandなど、上場しているAPAC不動産REITは多い。まずはREITで「国際不動産投資」の感覚を掴んでから、直接投資を検討するのが現実的でしょう。

関連記事:REIT vs 実物不動産の比較

まとめ

  • Q4 2025のAPAC CRE投資額は$403億で2021年Q4以来最高
  • 2025年通年は$1,476億(+12%)、Knight Frank集計では全セクター$2,010億(+13.7%)
  • 日本がQ4 $98億で地域トップ——マルチファミリーが海外投資家の主要ターゲット
  • インドがQ4 +407%の爆発的成長——オフィスと物流が牽引
  • シンガポール(Q4 +28%)、韓国(通年+23.7%)も好調
  • 2026年の注目セクターはデータセンター、物流、マルチファミリー、プライムオフィス、学生寮
  • 投資先の地理的分散が進行——トップ5都市の集中度は30%超から18%に低下
  • 日本人投資家は「国内資産の値上がり」を活かしてAPAC全体への分散投資を検討すべき

よくある質問

Q
Q1. APAC不動産投資のQ4 2025の実績はどのくらいですか?
A

JLLによるとAPAC商業不動産投資額はQ4 2025に$403億(約6兆円)で、2021年Q4以来の四半期最高額を記録しました。通年では$1,476億(前年比+12%)です。

Q
Q2. なぜ日本がAPAC不動産投資のトップなのですか?
A

東京のマルチファミリー(賃貸住宅)がAPACで唯一の成熟した機関投資家向け住宅市場として評価されているためです。安定した法制度、人口流入、低い空室率が海外投資家を引きつけています。ULI/PwCの調査では東京が3年連続で投資先1位にランクされています。

Q
Q3. インドの+407%成長は持続可能ですか?
A

+407%は2024年Q4の低水準からの反動(ベース効果)を含みます。通年では+183%で、構造的な成長も確認されています。IT都市のオフィス需要、物流拡大、REIT市場の整備が成長を支えていますが、この成長率が毎年続くわけではありません。

Q
Q4. 日本人が間接的にAPAC不動産に投資する方法はありますか?
A

APAC上場REITへの投資が最も手軽です。日本のJ-REITに加え、インドのEmbassy Office Parks REIT、オーストラリアのGoodman Group、シンガポールのCapitaLandなどが代表的な選択肢です。証券口座から購入できます。

Q
Q5. 2026年にAPACで最も注目されている不動産セクターは?
A

データセンター(AI需要)、物流(韓国・インド)、マルチファミリー(日本)、プライムオフィス(シンガポール・シドニー)、学生寮(オーストラリア・香港)の5セクターが注目されています。ULI/PwC調査ではデータセンターが「最もパフォーマンスが期待されるニッチ資産」の1位です。


※本記事は情報提供を目的としており、特定の不動産物件の購入を推奨するものではありません。
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