「ゴールデンビザ、終わっちゃったの?」
——ここ数年、欧州不動産投資に興味がある方から、こんな質問をよく受けます。
結論から言うと、ポルトガルは2023年10月に、スペインは2025年4月に、不動産投資による居住権取得(ゴールデンビザ)を廃止しました。かつて「物件を買えば欧州に住める」と人気を集めた両国のルートは、もう使えません。
ただし、欧州全体でゴールデンビザがなくなったわけではありません。この記事では、何が変わったのか、なぜ廃止されたのか、そして今後の選択肢について整理していきます。
ポルトガル・スペインで何が変わったのか
ポルトガル:2023年10月、不動産オプションを廃止
ポルトガルは2023年10月6日、「Mais Habitacao法(住宅促進法)」を施行し、ゴールデンビザ制度を大幅に改定しました。
具体的に何がなくなったんですか?
不動産購入による居住権取得ルートがすべて廃止されました。以前は€500,000以上の物件購入、€350,000以上のリノベーション物件、低密度地域での€400,000物件など、複数のオプションがありましたが、全部なくなりました。
- 不動産購入(€500,000以上)
- リノベーション物件投資(€350,000以上)
- 低密度地域の不動産(€400,000 / €280,000)
- 資本移転投資(€1,500,000以上)
現在もゴールデンビザ自体は存続していますが、残っているのは投資ファンド(€500,000以上)、研究開発投資、文化遺産への寄付、雇用創出といったオプションのみです。
興味深いのは、制度改正後の2024年に過去最高の4,987件のゴールデンビザが発給されたこと。既存の申請処理と新たな投資ファンドルートへのシフトが進んでいるようです。
スペイン:2025年4月、完全廃止
スペインはさらに踏み込んだ決定をしました。2025年1月3日に「Organic Law 1/2025」が公布され、3カ月の経過措置を経て2025年4月3日にゴールデンビザ制度が完全廃止されました。
スペインは不動産以外のオプションも全部なくなったんですか?
はい、投資家ビザの制度自体が廃止されました。ポルトガルのように投資ファンド等のオプションを残す選択もあったはずですが、スペインは制度そのものを終了させる判断をしました。
なお、廃止前に申請を完了していた人や、既にゴールデンビザを保有している人の権利は保護されています。更新も可能です。
なぜ廃止されたのか——住宅価格高騰問題
両国が不動産投資オプションを廃止した最大の理由は、住宅価格の高騰と地元住民の住宅確保難です。
リスボンでは2015年以降、住宅価格が3倍に上昇。スペインでも10年間で平方メートル単価が33%以上上昇しました。
でも、ゴールデンビザの投資家ってそんなに多いんですか?
実は数字だけ見ると、ポルトガルでゴールデンビザ関連の取引は全体の0.1%未満、スペインでも9.7%未満でした。ただ、都市部の高級物件に集中していたことと、Airbnb等の短期賃貸への転用が問題視されました。政治的な「スケープゴート」という側面もあるかもしれません。
ゴールデンビザだけが住宅危機の原因ではありません。
- 慢性的な住宅供給不足
- 短期賃貸プラットフォーム(Airbnb等)の普及
- 低金利時代の不動産投資ブーム
- 観光需要の増加
これらの複合要因が絡み合っています。ただ、政府としては「富裕な外国人投資家」が分かりやすいターゲットになったという面はあるでしょう。
ペドロ・サンチェス首相(スペイン)は、「住宅を基本的権利ではなく投機ビジネスに変えてしまった」と制度廃止の理由を説明しています。
代替となる投資先・ビザオプション
では、欧州での居住権を目指す投資家にはどんな選択肢が残っているのでしょうか。
ギリシャ:不動産投資オプション健在、ただし条件厳格化
ギリシャは現在も不動産投資によるゴールデンビザを提供しています。ただし、2024年の制度改正で投資額が大幅に引き上げられました。
| エリア | 最低投資額 |
|---|---|
| アテネ、テッサロニキ、ミコノス、サントリーニ等 | €800,000 |
| その他の地域 | €400,000 |
| 商業→住宅転換、歴史的建造物修復 | €250,000 |
€800,000って、かなり高くないですか?
以前は€250,000で取得できたので、3倍以上になりました。アテネやサントリーニといった人気エリアで不動産投資を考えるなら、相当な予算が必要です。ただ、地方都市なら€400,000から可能です。
ゴールデンビザで取得した物件は、Airbnb等の短期賃貸が禁止されています。違反した場合は高額の罰金が科されます。投資利回りを短期賃貸で確保しようと考えていた方は要注意です。
マルタ:永住権プログラムは健在
マルタは2025年4月のEU司法裁判所判決により市民権投資プログラム(CBI)を終了しましたが、永住権プログラム(MPRP)は継続しています。
| 項目 | 要件 |
|---|---|
| 不動産購入 | €375,000以上 |
| または賃貸 | 年€14,000以上(5年間) |
| 政府貢献金 | €60,000(本人)、€7,500(18歳以上の家族) |
英語が公用語という点は、日本人にとって大きなメリットです。
ポルトガルD7ビザ:不動産投資なしで居住権
ポルトガルで不動産投資ルートがなくなっても、D7ビザ(パッシブインカムビザ)という選択肢は残っています。
D7ビザって、どんなビザですか?
年金や配当、家賃収入など「パッシブインカム(受動的所得)」がある人向けのビザです。ゴールデンビザのような高額投資は不要ですが、毎月€920以上の安定収入を証明する必要があります。
- 月収€920以上(最低賃金ベース)の証明
- ポルトガルの銀行口座に約€10,440の残高
- ポルトガル国内での住居確保(賃貸可)
- 最初の2年間で16カ月以上のポルトガル滞在
- 5年後に永住権・市民権申請可能(A2レベルのポルトガル語必要)
リモートワーカーや早期リタイア組には現実的な選択肢です。ただし、ゴールデンビザと違って実際にポルトガルに住む必要があります。
その他の選択肢
| 国 | プログラム | 最低投資額 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ラトビア | ゴールデンビザ | €50,000(企業投資) | EU最安クラス |
| ハンガリー | 居住権プログラム | €250,000〜 | 比較的新しい制度 |
| イタリア | 投資家ビザ | €250,000〜 | 不動産オプションあり |
日本人投資家への影響と対策
「とりあえず買っておく」は通用しない時代に
かつては「欧州の物件を買えば居住権がついてくる」という発想で投資を検討する人もいました。しかし、この前提はもう成り立ちません。
純粋に投資として欧州不動産を買うのはどうですか?
居住権と切り離して考えるなら、もちろんアリです。ただ、非居住者として物件を管理するコストや、現地の税制、為替リスクを考えると、ハードルは高くなります。「ビザがもらえるから」という付加価値がない分、純粋な投資リターンで判断する必要があります。
検討すべきアクション
1. 目的の明確化
「欧州に住みたい」のか「欧州不動産で資産運用したい」のかで、取るべき戦略は大きく異なります。
2. ギリシャの動向をウォッチ
現時点で不動産投資による居住権取得が可能な主要EU国はギリシャです。ただし、さらなる制度変更の可能性は常にあります。
3. 投資ファンドルートの検討
ポルトガルでは€500,000以上の投資ファンドでゴールデンビザが取得可能です。不動産の直接保有にこだわらなければ、選択肢になります。
4. D7ビザの可能性を探る
安定したパッシブインカムがあり、実際にポルトガルに住む意思があるなら、D7ビザは検討価値があります。
まとめ
欧州ゴールデンビザの状況をまとめると:
- ポルトガル:2023年10月に不動産投資オプション廃止。投資ファンド等は継続。
- スペイン:2025年4月にゴールデンビザ制度自体を完全廃止。
- ギリシャ:不動産投資オプション健在だが、投資額は€400,000〜€800,000に引き上げ。短期賃貸禁止。
- マルタ:永住権プログラム継続。市民権投資プログラムは終了。
- ポルトガルD7ビザ:パッシブインカムがあれば利用可能。実際の居住が必要。
「不動産を買えば欧州に住める」という時代は終わりつつあります。目的を明確にし、最新の制度を確認しながら、戦略を立てることが重要です。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の不動産物件の購入を推奨するものではありません。
海外不動産投資にはリスクが伴います。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。
各国の法規制・税制は変更される可能性があるため、最新情報は現地の専門家にご確認ください。
よくある質問
ポルトガルは不動産投資オプションが2023年10月に廃止されましたが、投資ファンド(€500,000以上)等のオプションは残っています。スペインは2025年4月にゴールデンビザ制度自体が完全廃止され、新規申請はできません。
ギリシャが現実的な選択肢です。アテネ等の人気エリアは€800,000以上、その他地域は€400,000以上の不動産投資でゴールデンビザを取得できます。ただし、短期賃貸は禁止されている点に注意が必要です。
ゴールデンビザは高額投資が必要で居住義務が緩い(年7日程度)のに対し、D7ビザは月€920以上のパッシブインカム証明で取得可能ですが、実際にポルトガルに住む必要があります(最初の2年で16カ月以上)。
ポルトガル・スペインともに、制度廃止前に取得したビザ保有者の権利は保護されています。更新も可能で、永住権や市民権への道も引き続き開かれています。
主な理由は住宅価格の高騰です。リスボンでは2015年以降住宅価格が3倍に上昇し、地元住民の住宅確保が困難になりました。外国人投資家を「スケープゴート」とする政治的側面もありますが、各国政府は住宅政策として制度見直しを進めています。