ドイツ不動産投資の最大のメリットは、10年以上保有すればキャピタルゲイン税が非課税になることです。
また、経費控除・減価償却も広範囲に認められます。長期保有を前提とした投資に最適な税制設計といえます。
税金の全体像
ドイツで不動産を所有すると、購入時・保有時・売却時にそれぞれ税金がかかります。
購入時:取得税(州別)
最大の変動要因は州別の取得税(Grunderwerbsteuer)です。
| 州 | 取得税 | 主要都市 |
|---|---|---|
| バイエルン州 | 3.5% | ミュンヘン |
| ザクセン州 | 3.5% | ライプツィヒ |
| ハンブルク | 5.5% | ハンブルク |
| ヘッセン州 | 6.0% | フランクフルト |
| ベルリン | 6.0% | ベルリン |
| ブランデンブルク州 | 6.5% | ポツダム |
| ノルトライン=ヴェストファーレン州 | 6.5% | デュッセルドルフ |
€400,000の物件で計算すると、バイエルン州(3.5%)は€14,000、ベルリン(6.0%)は€24,000、ブランデンブルク州(6.5%)は€26,000。最大€12,000の差が出ます。投資先を選ぶ際は取得税も考慮すべきです。
保有時:固定資産税と賃貸所得税
**固定資産税(Grundsteuer)**は2025年から新制度が施行されています。年間€500〜2,000程度(物件による)が目安です。
賃貸所得税は累進課税で、14〜45%の税率が適用されます。
| 課税所得 | 税率 |
|---|---|
| €10,908以下 | 0%(基礎控除) |
| €10,909〜62,809 | 14〜42% |
| €62,810〜277,825 | 42% |
| €277,826以上 | 45% |
ただし、経費控除が広範囲に認められるので、実際の課税所得は大幅に圧縮できます。
減価償却と経費控除
ドイツの税制では経費控除が広範囲に認められます。これが税負担軽減の鍵です。
控除できる経費:
- Hausgeld(管理費):全額控除
- 維持費・修繕費:全額控除
- 保険料:全額控除
- ローン利息:全額控除
- 減価償却:2〜3%/年
- 旅費:物件訪問費用
- 専門家費用:税理士、弁護士費用
減価償却の計算
減価償却(AfA)は建物部分にのみ適用されます。
| 建物の種類 | 減価償却率 | 期間 |
|---|---|---|
| 1925年以降の建物 | 2%/年 | 50年 |
| 1925年以前の建物 | 2.5%/年 | 40年 |
| 新築(2023年以降) | 3%/年 | 特別措置 |
土地は対象外なので、取得価格から土地価格を差し引いて計算します。
税負担シミュレーション
€400,000の物件、年間賃料€18,000の場合:
- 年間賃料:€18,000
- Hausgeld:-€3,000
- 維持費・保険:-€1,000
- 減価償却(€300,000×2%):-€6,000
- ローン利息(仮定):-€4,000
- 課税所得:€4,000
- 税率(累進・概算)20%で税額€800
減価償却により課税所得が大幅に圧縮されます。年間賃料€18,000に対して税額€800なら、実効税率は約4.4%です。
10年ルール:最大のメリット
個人が10年以上保有した不動産を売却した場合、キャピタルゲイン税(最大45%)が完全に非課税になります。
これは「Spekulationsfrist」と呼ばれるルールで、ドイツ不動産投資の最大のメリットです。
10年未満で売却した場合
キャピタルゲインに累進課税(14〜45%)が適用されます。さらに連帯税(Solidaritätszuschlag)として税額の5.5%が加算されます。
例:€300,000で購入し、€400,000で5年後に売却
- キャピタルゲイン:€100,000−取得コスト(10%)−売却コスト(3%)=€58,000
- 税率30%でCGT€17,400
10年以上保有すれば、この税金がゼロになります。
- 保有期間:購入日から売却日まで10年以上
- 所有形態:個人名義
- 取引業でないこと:5年間で3物件以上売買すると「不動産取引業」とみなされ適用外
- 法人所有には適用されない
日本と二重に税金を取られることはありますか?
日本とドイツの間には租税条約があり、二重課税が調整されます。不動産所得とCGTはドイツで課税(源泉地主義)。ドイツで支払った税金は、日本の確定申告で「外国税額控除」として申告可能です。ただし控除額には上限があり、全額控除されるとは限りません。国際税務に詳しい税理士に相談してください。
法人所有 vs 個人所有
法人で所有する場合の税率は異なります。
- 法人税(Körperschaftsteuer):15%
- 連帯税:0.825%(法人税の5.5%)
- 営業税(Gewerbesteuer):7〜17%(自治体による)
- 実効税率:約30%
- 10年ルールを回避して売却可能
- 経費控除が広範囲
- 相続対策になる
- 損失の繰越が可能
- 10年非課税ルールが適用されない
- 実効税率30%
- 設立・維持コスト
- 配当課税が別途発生
長期投資なら個人所有が有利です。10年保有でCGT非課税のメリットを活かせます。
節税のポイント
- 州の選択:取得税3.5%の州(バイエルン、ザクセン)を選ぶ
- 10年保有:CGT非課税のため長期保有を前提に
- 減価償却の活用:新築は3%/年(2023年以降)、建物部分を最大化
- 経費の計上:正確な経費記録、専門家費用も控除可能
- ローンの活用:利息は全額控除、レバレッジで税効率向上
まとめ
- 取得税は州別3.5〜6.5%、バイエルン州が最安
- 賃貸所得税は累進課税14〜45%、経費控除で圧縮可能
- 減価償却2〜3%/年で課税所得を大幅軽減
- 10年保有でCGT非課税が最大のメリット
- 10年未満の売却は最大45%の累進課税
- 長期投資なら個人所有が有利
ドイツの税金は10年ルールが最大のメリットです。長期保有を前提に、税理士と相談しながら計画しましょう。
よくある質問
条件は4つあります。①保有期間が購入日から売却日まで10年以上。②所有形態が個人名義。③取引業とみなされないこと(5年間で3物件以上売買すると「不動産取引業」とみなされ適用外)。④法人所有には適用されません。この「Spekulationsfrist」ルールを活かすなら、長期保有前提の個人投資が最適です。
バイエルン州とザクセン州が3.5%で最安です。ミュンヘン(バイエルン州)、ライプツィヒ(ザクセン州)が該当します。一方、ベルリンは6.0%、ブランデンブルク州やノルトライン=ヴェストファーレン州は6.5%。€400,000の物件で計算すると、3.5%と6.5%で€12,000の差が出ます。
大幅に圧縮できます。例えば€400,000の物件、年間賃料€18,000の場合:減価償却(建物€300,000×2%)で€6,000、Hausgeld€3,000、維持費€1,000、ローン利息€4,000を差し引くと、課税所得は€4,000。年間賃料€18,000に対して税額€800なら、実効税率は約4.4%まで下がります。
日独租税条約により調整されます。不動産所得とCGTはドイツで課税(源泉地主義)。ドイツで支払った税金は、日本の確定申告で「外国税額控除」として申告可能です。ただし控除額には上限があり、全額控除されるとは限りません。国際税務に詳しい税理士への相談をおすすめします。
※本記事は情報提供を目的としており、税務アドバイスではありません。
ドイツの税制は変更される可能性があります。投資前に必ず現地の税理士(Steuerberater)に相談してください。