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海外不動産の相続・承継ガイド|プロベート・相続税・二重課税対策
投資戦略 実務ガイド

海外不動産の相続・承継ガイド|プロベート・相続税・二重課税対策

2026-01-02
2026-01-02 更新

海外不動産の相続を完全解説。英米法のプロベート手続きは1〜3年、費用は遺産の3〜10%。日本の相続税は全世界財産が対象。二重課税対策、プロベート回避策、遺言書の準備方法を解説します。

「海外不動産を持っているんですが、相続のことが心配です」

——海外不動産の相続は、国内不動産とは比較にならないほど複雑です。

英米法系の国(アメリカ、イギリス、オーストラリアなど)では「プロベート」という裁判所手続きが必要で、完了まで1〜3年、費用は遺産の3〜10%。さらに日本の相続税は全世界の財産が対象となり、二重課税のリスクもあります。事前の準備がなければ、相続人に大きな負担がかかります。

この記事では、海外不動産の相続・承継について完全解説します。

海外不動産相続の基本

2つの法制度を理解する

海外不動産の相続では、日本の法律と現地の法律、両方を考慮する必要があります。

項目 日本 現地国
相続税 日本で課税(全世界財産) 現地でも課税の可能性
相続手続き 遺産分割協議・登記 プロベート等(国による)
準拠法 被相続人の本国法 不動産所在地法(一般的)
読者
読者

日本と現地の両方で手続きが必要ということですか?

鈴木(専門家)
鈴木(専門家)

はい、基本的にはそうです。日本では相続税の申告(10ヶ月以内)が必要で、現地では不動産の名義変更手続きが必要です。特に英米法系の国では「プロベート」という裁判所を通じた手続きが必要で、これが非常に時間とコストがかかります。日本の相続手続きとは全く異なるので、事前の対策が重要です。

プロベート(検認裁判)とは

英米法系の相続手続き

プロベートとは、裁判所の監督下で遺産を管理・分配する手続きです。

プロベートが必要な国

  • アメリカ
  • イギリス
  • カナダ
  • オーストラリア
  • 香港
  • シンガポール
  • マレーシア
プロベートが不要な国

大陸法系の国(フランス、ドイツ、スペイン、イタリアなど)ではプロベートは不要です。タイ、フィリピンなども日本に近い相続手続きです。ただし、各国で手続きや必要書類は異なります。

プロベートの流れ

  1. 裁判所への申立て:遺言書の提出、遺言執行人の任命
  2. 遺産管理人の承認:裁判所が遺言執行人または遺産管理人を承認
  3. 財産目録の作成:すべての資産・負債を調査・記録
  4. 債務・税金の支払い:現地の遺産税、債務を清算
  5. 財産の分配:相続人への分配
  6. 裁判所への報告:手続き完了の報告

プロベートの問題点

問題 内容
期間 1〜3年(複雑なケースはそれ以上)
費用 遺産の3〜10%(弁護士費用、裁判所費用)
公開性 裁判記録は公開される
凍結 手続き中は資産が凍結される
読者
読者

日本の相続税の申告期限は10ヶ月ですよね?プロベートが終わっていなくても申告が必要なんですか?

鈴木
鈴木

はい、プロベートの完了を待たずに、日本では10ヶ月以内に相続税の申告・納税が必要です。これが大きな問題点で、現地の資産が凍結されて使えない状態なのに、日本では相続税を納めなければなりません。事前に納税資金を確保しておくか、延納・物納の制度を検討する必要があります。

日本の相続税

全世界財産が課税対象

日本居住者が被相続人または相続人の場合、原則として全世界の財産が日本の相続税の対象となります。

ケース 課税範囲
被相続人・相続人とも日本居住 全世界財産
被相続人が日本居住、相続人が海外 基本的に全世界財産
被相続人が海外、相続人が日本居住 基本的に全世界財産
一時居住者の例外

外国籍の一時居住者(日本滞在10年未満・表1ビザ)が被相続人または相続人の場合、国外財産は日本の相続税の対象外となる特例があります。ただし、日本国籍を持つ場合や10年以上滞在している場合は、全世界財産が課税対象です。

相続税の税率

法定相続分に応じた取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

基礎控除

基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)

例:配偶者+子2人の場合、3,000万円+1,800万円=4,800万円

二重課税と外国税額控除

二重課税の問題

海外不動産は、現地でも日本でも課税される可能性があります。

例:アメリカの不動産を相続

  • アメリカ:連邦遺産税(最高40%)+州の遺産税
  • 日本:相続税(最高55%)
読者
読者

両方で55%も取られたら、ほとんど残らないんじゃないですか?

鈴木
鈴木

そうならないように、二重課税を調整する仕組みがあります。一つは「外国税額控除」で、現地で支払った相続税・遺産税を日本の相続税から差し引けます。もう一つは「租税条約」で、日本とアメリカの間には相続税に関する条約があり、二重課税を回避する規定があります。ただし、控除には限度があり、完全に二重課税がなくなるわけではありません。

外国税額控除

現地で支払った相続税・遺産税は、一定の限度額まで日本の相続税から控除できます。

控除限度額 = 日本の相続税額 ×(国外財産の価額 ÷ 相続財産総額)

日米相続税条約

日本が相続税・贈与税に関する租税条約を締結しているのはアメリカのみです。

条約のポイント

  • 二重課税の調整
  • 日本人がアメリカ不動産を所有する場合、アメリカ市民と同等の控除(約$12.92百万)を適用
  • ドル対ドルでの税額控除
アメリカ以外の国

アメリカ以外の国には相続税条約がないため、外国税額控除のみで二重課税を調整します。控除限度額を超える部分は二重課税となる可能性があります。イギリスやオーストラリアなど、現地でも相続税・遺産税がかかる国の不動産は、税負担が重くなりやすいです。

プロベート回避策

1. ジョイント・テナンシー(共同所有)

配偶者や子供と共同名義で不動産を所有する方法です。

メリット

  • 一方が死亡すると、自動的に生存者に所有権が移転
  • プロベート手続き不要

デメリット

  • 生前に共同所有者の同意なく売却できない
  • 共同所有者の債権者からの差し押さえリスク
  • 日本での贈与税の問題(持分を譲渡した場合)

2. 生前信託(Living Trust)

不動産を信託に移し、受益者を指定する方法です。

メリット

  • プロベート回避
  • プライバシー保護(裁判記録が公開されない)
  • 柔軟な承継プランが可能

デメリット

  • 設定費用($1,000〜5,000程度)
  • 信託への名義変更手続きが必要
  • 日本の税務上の取り扱いに注意
読者
読者

信託を使えば相続税も節税できるんですか?

鈴木
鈴木

いいえ、信託はあくまで「プロベート回避」のための手段であり、相続税の節税効果は基本的にありません。日本の税法では、信託の受益者が実質的に財産を所有しているとみなされるため、相続税は通常通りかかります。節税目的ではなく、手続きの簡素化・迅速化のために検討する制度です。

3. 現地の遺言書作成

現地の法律に準拠した遺言書を別途作成する方法です。

重要なポイント

  • 日本の遺言書とは別に、現地の形式要件を満たした遺言書を作成
  • 例:アメリカでは2名以上の証人の前での署名が必要
  • 現地の弁護士に作成を依頼するのが安全

4. 法人所有

現地法人または日本法人で不動産を所有する方法です。

メリット

  • 個人の相続問題を回避(株式の承継で済む)
  • 法人の存続期間は無制限

デメリット

  • 法人設立・維持コスト
  • 法人税・会計・申告の負担
  • 国によっては外国人の法人所有に制限

相続対策チェックリスト

海外不動産を所有している場合の相続対策:

  • 現地の法制度(プロベートの有無)を確認
  • 現地の弁護士・税理士に相談
  • 現地の形式に準拠した遺言書を作成
  • プロベート回避策(信託、共同所有など)を検討
  • 日本での相続税を試算
  • 外国税額控除の適用を確認
  • 納税資金の確保(プロベート中は資産凍結の可能性)
  • 相続人への情報共有(不動産の所在、連絡先など)

投資判断:相続を考慮した海外不動産投資

メリット
  • 外国税額控除で二重課税を調整可能
  • 日米間は租税条約で手厚い保護
  • 信託やジョイント・テナンシーでプロベート回避可能
  • 法人所有で相続問題を簡素化
  • 事前準備で相続人の負担を軽減
デメリット
  • プロベート手続きは1〜3年、費用は遺産の3〜10%
  • プロベート中は資産が凍結される
  • 日本の相続税申告期限(10ヶ月)との時間的ギャップ
  • アメリカ以外は相続税条約なし
  • 現地と日本の両方で専門家費用が発生
  • 二重課税を完全に回避できない場合あり

まとめ

海外不動産の相続・承継のポイント:

  • プロベート:英米法系の国で必要、1〜3年、費用3〜10%
  • 日本の相続税:全世界財産が対象、最高税率55%
  • 二重課税対策:外国税額控除、日米租税条約
  • プロベート回避:信託、共同所有、現地遺言書
  • 申告期限:日本は10ヶ月、プロベート完了を待てない
  • 事前の対策が必須。現地の遺言書、プロベート回避策を検討

海外不動産の相続は、国内不動産とは比較にならないほど複雑で、時間とコストがかかります。事前の対策がなければ、相続人に大きな負担がかかります。海外不動産を購入する際は、出口戦略だけでなく相続まで見据えた計画を立ててください。国際相続に詳しい弁護士・税理士への相談を強くおすすめします。


よくある質問

Q
Q1. プロベートとは何ですか?
A

プロベートは、英米法系の国(アメリカ、イギリスなど)で採用されている相続手続きです。裁判所の監督下で、遺産の目録作成、債務の支払い、相続人への分配を行います。完了まで1〜3年かかり、費用は遺産の3〜10%。手続き中は資産が凍結されます。

Q
Q2. 日本の相続税と現地の遺産税、両方払う必要がありますか?
A

両方で課税される可能性がありますが、「外国税額控除」で二重課税を調整できます。現地で支払った税金を、一定の限度額まで日本の相続税から差し引けます。日米間には相続税条約があり、より手厚い保護があります。ただし、完全に二重課税がなくなるわけではありません。

Q
Q3. プロベートを回避する方法はありますか?
A

主な方法は3つ:①ジョイント・テナンシー(共同所有)で、生存者に自動移転、②生前信託を設定し、受益者を指定、③現地の形式に準拠した遺言書を作成。いずれも現地の弁護士に相談して進めることをおすすめします。

Q
Q4. 日本の相続税申告はいつまでですか?
A

被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。プロベートの完了(1〜3年)を待てないため、プロベート中でも日本では申告・納税が必要です。納税資金の確保が重要な課題となります。

Q
Q5. 相続対策で一番重要なことは?
A

事前の準備です。具体的には:①現地の法制度を理解する、②現地の形式に準拠した遺言書を作成する、③プロベート回避策を検討する、④相続人に情報を共有しておく。海外不動産を購入する際から相続まで見据えた計画を立ててください。


※本記事は情報提供を目的としており、法務・税務アドバイスを提供するものではありません。
相続に関する法律・税制は国により異なり、改正される可能性があります。具体的な対策については、国際相続に詳しい弁護士・税理士にご相談ください。
海外不動産投資にはリスクが伴います。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。

Tags

相続 プロベート 相続税 国際相続 遺言書
鈴木 この記事の筆者

鈴木

WORLD PROPERTY

Big4税理士法人で国際税務を担当後、独立。海外不動産に関する税務相談を専門に手がける。

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