「イギリスの税金って、外国人に厳しいって聞いたんですが…」
本当です。イギリスは外国人投資家への課税が重い国です。購入時のSDLT(印紙税)に加えて、外国人サーチャージ+2%、追加物件サーチャージ+5%。£500,000の物件を購入すると、税金だけで約£50,000(物件価格の10%)がかかります。
さらに保有時の賃貸所得税、売却時のキャピタルゲイン税も。事前に税金を理解しておかないと、予想外の出費に驚くことになります。
この記事では、イギリス不動産の税金を体系的に解説します。
税金の全体像:購入・保有・売却
| タイミング | 税金 | 外国人追加 |
|---|---|---|
| 購入時 | SDLT 0〜12% | +7%(2%+5%) |
| 保有時 | 賃貸所得税 20%〜 | 源泉徴収あり |
| 売却時 | CGT 18〜24% | 60日以内申告 |
イギリスで不動産を所有すると、3つのタイミングで税金がかかります。
購入時はSDLT/LBTT/LTT(取得税)、外国人サーチャージ、追加物件サーチャージ。保有時はインカム税(賃貸収入)、カウンシルタックス。売却時はキャピタルゲイン税(CGT)。
取得税は地域によって名称が異なります。イングランド・北アイルランドはSDLT(Stamp Duty Land Tax)、スコットランドはLBTT(Land and Buildings Transaction Tax)、ウェールズはLTT(Land Transaction Tax)。それぞれ税率が異なり、特にスコットランドは外国人サーチャージがないというメリットがあります。
外国人投資家は合計でいくら追加で払うことになりますか?
既に不動産を所有する外国人投資家は、基本税率に加えて合計**+7%**の追加税がかかります。内訳は外国人サーチャージ+2%、追加物件サーチャージ+5%。例えば£500,000の物件では、基本SDLTが約£12,500、追加分が£35,000で、合計約£50,000(物件価格の10%)がSDLTになります。これはアメリカより重い税負担です。
SDLT(イングランド・北アイルランド)
2025年4月からの新しい税率が適用されています。
基本税率として、£125,000までが0%、£125,001〜£250,000が2%、£250,001〜£925,000が5%、£925,001〜£1,500,000が10%、£1,500,000超が12%です。
これに追加されるサーチャージが2つあります。追加物件サーチャージは、既に不動産を所有している場合に+5%(2024年10月から3%→5%に引き上げ)。セカンドハウス、Buy-to-Let物件、法人購入が対象です。外国人サーチャージは、非居住者(英国に183日未満滞在)に+2%。個人・法人とも対象で、居住者との共同購入でも1人でも非居住者がいれば+2%がかかります。
£0〜£125,000は0%+7%=7%で£8,750。£125,001〜£250,000は2%+7%=9%で£11,250。£250,001〜£500,000は5%+7%=12%で£30,000。合計SDLT £50,000(物件価格の10%)。追加物件・外国人の場合、購入コストは物件価格の10%以上を見込む必要がある。
スコットランドの税制優位性
スコットランドはSDLTではなくLBTTが適用され、外国人サーチャージがありません。
LBTTの基本税率は、£145,000までが0%、£145,001〜£250,000が2%、£250,001〜£325,000が5%、£325,001〜£750,000が10%、£750,000超が12%です。追加物件サーチャージは+6%(イングランドの5%より高い)ですが、外国人サーチャージがない分、外国人投資家にとっては有利です。
£300,000の物件を外国人が追加購入する場合で比較すると、イングランドは合計£23,500、スコットランドは合計£21,350。スコットランドの方が約£2,000安くなります。物件価格が高いほど差は広がります。
外国人サーチャージの還付はできますか?
条件を満たせば還付申請が可能です。購入完了後12ヶ月以内に英国に183日以上居住し、その物件を主たる住居として使用した場合、2%の外国人サーチャージの還付を申請できます。ただし、投資目的で購入し自分で住まない場合は還付対象外。還付申請は購入完了から2年以内に行う必要があります。
キャピタルゲイン税(CGT)
2015年4月から、非居住者も英国不動産の売却益に対してCGT(キャピタルゲイン税)を支払う義務があります。
税率は個人の場合、基本税率帯で18%、高税率帯で24%。法人は25%(法人税)です。重要なのは、売却完了から60日以内にHMRC(英国歳入庁)に申告し、CGTを支払う必要があること。期限を過ぎるとペナルティがかかります。
控除可能な項目として、年間控除額(AEA)£3,000(2024/25年度)、取得費用(SDLT、弁護士費用など)、改良費用(リノベーション費用)、売却費用(エージェント手数料など)があります。
例えば£400,000で購入し£500,000で売却する場合、取得・売却費用が£25,000なら純利益は£75,000。年間控除額£3,000を引いて課税対象は£72,000。CGT(24%)は約**£17,280**になります。
英国で賃貸収入を得る非居住者は、NRLS(Non-Resident Landlord Scheme)の対象になる。デフォルトでは管理会社やテナントが賃料の20%を源泉徴収してHMRCに納付する。これは経費控除前のグロスに対してかかるため、税負担が重い。NRL承認を申請すれば源泉徴収なしで賃料を受け取り、年度末に確定申告できる。
賃貸所得税と二重課税
賃貸収入にかかる税金について説明します。非居住者は基本税率20%から課税されますが、控除可能な経費として管理費、修繕費、保険料、サービスチャージ、グラウンドレント、専門家費用があります。
ただし2020年以降、ローン金利は経費として直接控除できず、税額控除(基本税率20%)のみ適用されます。高税率納税者には不利な変更です。
日英租税条約により、二重課税は調整されます。不動産所得(賃貸)は英国で課税され、日本で外国税額控除。キャピタルゲインも英国で課税され、日本で外国税額控除。日本での確定申告時に、英国で支払った税金を外国税額控除として申告できます。
相続税はかかりますか?
はい、非居住者でも英国にある不動産は英国の相続税(IHT)の対象になります。税率は40%(控除後)。控除額は£325,000(Nil Rate Band)。英国居住配偶者への相続は非課税です。海外不動産投資を相続させる場合は、事前に相続計画を立てることが重要です。
税務申告の流れ
3つの申告期限を守る必要があります。
SDLT申告は購入完了から14日以内。CGT申告は売却完了から60日以内。所得税申告は毎年1月31日(前年度分)。期限を守らないとペナルティがかかります。
英国の税制は複雑なため、英国の税理士(Chartered Accountant)、国際税務に詳しい日本の税理士、不動産専門のソリシターへの相談を強くおすすめします。
まとめ
イギリスの外国人投資家への税金をまとめます。
購入時
- SDLT:価格により0〜12%
- 追加物件サーチャージ:+5%
- 外国人サーチャージ:+2%
- 合計で最大19%(最高税率帯)
保有時
- 賃貸所得税:20%〜
- ローン金利は税額控除(20%)のみ
売却時
- CGT:18〜24%(個人)
- 申告期限:60日以内
スコットランドの優位性
- 外国人サーチャージ:なし
- 追加物件サーチャージ:6%
税務処理は複雑なため、必ず専門家に相談してください。
よくある質問
条件を満たせば還付申請が可能です。購入完了後12ヶ月以内に英国に183日以上居住し、その物件を主たる住居として使用した場合、2%の外国人サーチャージの還付を申請できます。ただし、投資目的で購入し自分で住まない場合は還付対象外です。還付申請は購入完了から2年以内に行う必要があります。
はい、可能です。日本在住の外国人投資家でも英国不動産を購入・所有できます。ただし、税務上の義務として、SDLT(購入時)、賃貸所得税(保有時)、CGT(売却時)を英国で申告・納付する必要があります。NRLSに登録し、英国の会計士を雇って税務処理を行うのが一般的です。
スコットランドは独自の税制を持ち、LBTTを運用しています。イングランドが2021年に外国人サーチャージを導入した際、スコットランド政府は同様の措置を導入しませんでした。外国人投資を歓迎する政策的判断ですが、将来的に導入される可能性はあるため、最新情報を確認してください。
ペナルティが課されます。60日を過ぎると、未払い税額に対して利息が発生し、遅延の程度によって追加のペナルティがかかります。3ヶ月以上の遅延では、未払い税額の5%または£300(いずれか大きい方)のペナルティが課される可能性があります。売却が決まったら、早めに税理士に相談してください。
※本記事は情報提供を目的としており、税務アドバイスを提供するものではありません。
税務申告は必ず専門家(英国の会計士、日本の税理士)に相談してください。
税法は変更される可能性があるため、最新情報を確認してください。