「アメリカで不動産を買いたいんだけど、何から準備すればいいの?」
大きく3つの準備があります。ITIN(納税者番号)の取得、LLC(法人)の設立、そしてアメリカの銀行口座開設です。どれも日本にいながら進められますが、順序と段取りが大切です。
ITINがないと家賃収入に30%の源泉徴収がかかります。LLCを設立しないと訴訟リスクに無防備。銀行口座がないと入出金が不便です。しかし、正しい手順を知っていれば、日本にいながら準備を完了させることができます。
この記事では、外国人がアメリカ不動産を購入するまでの実務的な手続きを、順を追って解説します。
ITIN:取得しないと30%も取られる
| 準備項目 | 所要期間 | 費用目安 | 必須度 |
|---|---|---|---|
| ITIN取得 | 7〜11週間 | $200〜500 | 必須 |
| LLC設立 | 4〜6週間 | $300〜1,500 | 推奨 |
| 銀行口座 | 渡米時 | 無料 | 推奨 |
ITIN(Individual Taxpayer Identification Number)は、アメリカのSSN(社会保障番号)を持たない外国人向けの納税者番号です。アメリカで不動産を所有すると、家賃収入や売却益に対して確定申告が必要になります。その際に必要なのがITINです。
ITINがないとどうなるか
ITINを取得せずに不動産を所有すると、厄介なことが起きます。
家賃収入に対して30%の源泉徴収が自動的に発生します。本来の税率は10〜37%の累進課税なので、低所得の場合は払い過ぎになります。さらに、売却時にFIRPTA源泉徴収の還付申請ができず、確定申告もできないためペナルティのリスクもあります。
つまり、ITINは「取得した方がいい」ではなく、取得しないと損をする必須のものです。
取得のタイミングと期間
ITINは物件購入の前でも後でも取得できます。ただし、発行までに7〜11週間かかるため、購入と同時に手続きを始めるのが理想的です。繁忙期(1〜4月)は9〜11週間かかることもあります。
パスポートの原本を郵送するって聞いたんだけど、それって怖くない?
その通りです。IRSに直接郵送すると原本の返却まで60日程度かかります。これを避けるには、CAA(Certified Acceptance Agent=認定受付代理人)を利用してください。日本にもCAAがいて、パスポートの認証後すぐに原本を返してもらえます。費用は数百ドル程度ですが、安心感には代えられません。
LLC:訴訟社会アメリカへの備え
LLCを設立する最大の理由は、責任の限定です。
アメリカは訴訟社会です。テナントが物件内で怪我をして訴えられるケースは珍しくありません。個人名義だと、その不動産以外の資産(預金、他の不動産など)まで差し押さえられるリスクがあります。
LLCで物件を所有していれば、訴訟があってもLLCの資産内に責任が限定されます。個人の預金や日本の資産に影響が及びません。これは「万が一」への保険のようなものです。
設立州の選び方
LLCはどの州でも設立できます。人気なのはデラウェア州(法人法が整備)、ワイオミング州(維持費が安い、年間約$50)、ネバダ州(法人税なし)です。
ただし、物件所在州以外でLLCを設立すると、物件所在州でも「外国LLC」として別途登録が必要になります。手間とコストが増えるので、1軒だけなら物件所在州で設立するのがシンプルでおすすめです。
設立にかかる費用と期間
設立費用は州への登録料が$50〜500、Registered Agent(登録代理人)が年間$50〜200程度です。設立代行サービスを使うと$200〜500が追加でかかります。初年度の合計で**$300〜1,500程度**が目安です。
EIN(法人の納税者番号)の取得まで含めると、全体で4〜6週間程度かかります。物件探しと並行して進めておくのが賢明です。
LLCって本当に必要?設立費用もかかるし…
法的には個人名義でも購入可能です。ただ、アメリカは訴訟社会。テナントが物件内で怪我をして訴えられるケースは珍しくありません。1軒だけなら個人名義でも許容範囲ですが、複数物件を持つなら設立をおすすめします。
銀行口座:渡米して開設が確実
アメリカ不動産を所有すると、家賃収入の受け取りだけでなく、固定資産税、管理費、修繕費、保険料など様々な支払いが発生します。これらをスムーズに処理するには、アメリカの銀行口座が必要です。
非居住者の口座開設は難しくなっている
残念ながら、2020年代に入って非居住外国人の口座開設は年々厳しくなっています。多くの銀行がアメリカの住所、SSNまたはITIN、対面での本人確認を要求します。
最も確実なのは、渡米して支店で対面開設することです。ハワイやロサンゼルスには日本人スタッフがいる支店もあるので、英語に自信がなくても対応してもらえます。物件視察のついでに口座開設を済ませるのがおすすめです。
Bank of America、Chase、HSBCなどが候補になります。日本のHSBC口座を持っている場合は、グローバル連携でスムーズに開設できることもあります。
代替手段
どうしても渡米できない場合は、SMBC信託銀行のドル口座やWise(国際送金サービス)で米ドルの受け取り・送金を行う方法もあります。ただし、固定資産税などアメリカ国内への支払いは、やはりアメリカの銀行口座があった方が便利です。
購入までの全体フロー
アメリカ不動産購入の流れを整理します。
投資目的(利回り重視、キャピタルゲイン重視、自己利用)を明確にし、エリアを選ぶ。
日本語対応可能なエージェント、国際税務に詳しい弁護士・会計士を見つける。
物件探しと並行して、LLC設立を進める。EIN取得まで4〜6週間程度。
オンラインで候補を絞り、可能であれば現地視察。バーチャルツアーも活用。
購入オファーを提出。交渉成立後、Purchase Agreementに署名。
物件調査(インスペクション)、タイトル調査(権利関係)を実施。
日本からエスクロー口座に購入資金を送金。最終書類に署名し、所有権が移転。
購入完了後、ITINを申請し、銀行口座を開設。
全体で3〜6ヶ月程度の準備期間を見込んでおきましょう。
専門家の活用:日本語対応が鍵
必要な専門家は、不動産エージェント、弁護士、会計士、タイトル会社の4つです。エージェント費用は通常売主負担なので買主に費用はかかりません。弁護士は$1,000〜3,000、会計士は年間$500〜2,000程度が目安です。
特に重要なのは、日本語対応可能な専門家を選ぶことです。
ハワイやロサンゼルスには日本語で対応できるエージェント、弁護士、会計士が多いです。初めてのアメリカ投資では、契約書や税務書類を日本語で説明してもらえる安心感は大きいです。
英語に自信があっても、専門用語が飛び交う不動産取引では誤解が命取りになることがあります。日本語対応にこだわることを強くおすすめします。
まとめ
アメリカ不動産購入の準備は複雑に見えますが、正しい手順で進めれば日本にいながら対応可能です。
ITINは確定申告に必須。取得しないと家賃収入に30%の源泉徴収がかかります。CAA経由で申請すれば、パスポート原本を長期間預ける必要がありません。発行まで7〜11週間かかるので早めに動きましょう。
LLCは訴訟対策・相続対策として推奨。設立費用は初年度$300〜1,500程度です。アメリカは訴訟社会であり、個人資産を守るために設立を検討すべきです。
銀行口座は渡米して開設するのが確実。物件視察のついでに手続きを済ませましょう。
専門家(エージェント、弁護士、会計士)の活用が成功の鍵です。特に日本語対応可能な専門家を選ぶことで、安心して取引を進められます。
全体で3〜6ヶ月程度の準備期間を見込み、計画的に進めていきましょう。
よくある質問
購入前でなくても大丈夫です。購入と同時に申請を進めるのが一般的です。ただし、発行まで7〜11週間かかるため、家賃収入を得る前には取得しておくことをおすすめします。ITINがないと家賃収入に30%の源泉徴収がかかります。
法的には個人名義でも購入可能です。ただし、訴訟リスクからの保護、プライバシー、相続対策の観点からLLC設立を推奨します。アメリカは訴訟社会であり、テナントから訴えられた場合に個人資産を守る効果があります。
一部の銀行では可能ですが、非常に限られています。最も確実な方法は渡米して支店で対面開設することです。ハワイやロサンゼルスなど日本人スタッフのいる支店を選ぶと手続きがスムーズです。物件視察のついでに開設するのがおすすめです。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の不動産物件の購入を推奨するものではありません。
海外不動産投資にはリスクが伴います。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。
各国の法規制・税制は変更される可能性があるため、最新情報は現地の専門家にご確認ください。